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テレワークの基本
テレワークを導入すれば仕事が効率よく進み、社員のライフワークバランスも向上する……。テレワークをあたかも万能薬と捉える考えもありますが、労務管理上、注意しなければならないことは多々あります。まずはテレワークの基本知識から――。
テレワークとは
テレワークの語源は「離れて働く」というもの。政府は「ICT(情報通信技術)を活用し、時間や場所を有効に活用できる柔軟な働き方」と定義しています。従業員が「働く場所」と「働く時間」を自由に選択できることから、テレワークは仕事と生活の両立が実現できる魅力的な制度の一つとして注目されてきました。とりわけ首都圏では東京オリンピックを前に、交通の混雑対策としてテレワークを推進する会社が増えています。また、「働き方改革」の一環としても多くの会社が導入を検討しています。
労働基準法とテレワーク
労働基準法には「働く場所」に関する制限は規定されていません。従って、職場であれ自宅やカフェであれ、どこで仕事をしようが法律上は何の問題もなく、会社が自由に決めればよいということになります。
導入に当たって
テレワークの導入に当たっては、職場外での業務を認めるにしても、
- 自宅のみとするのか?
- サテライトオフィスでの業務のみとするのか?
- モバイルワーク(どこでも社員の望む場所での業務)を可能とするのか?
……など、働く場所一つ取っても、考えるべき点はいろいろとあります。今まで一つ屋根の下で働いていた従業員が、それぞれ別の場所にいるということは、労務管理にもそれなりに手間がかかるもの。システム環境やセキュリティの問題、上司や仲間に相談しづらいという社内コミュニケーションの問題、テレワークで働く社員(以下、テレワーク社員)が孤独感にとらわれるという精神衛生上の問題もあり得ます。このため、テレワークを導入する場合、制度づくりは多面的に考える必要があります。
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テレワークと労働時間管理
厚生労働省が示すガイドライン「情報通信技術を利用した事業場外勤務の適切な導入及び実施のためのガイドライン」(平成30年2月22日)によると、使用者はテレワーク社員に対して適正な労働時間管理を行う責務があるとされています。従って会社として、テレワーク社員についても出社して働く一般社員と同様「始業」「終業の時刻」「休憩時間」を定めなければなりません。
自己申告に基づく時間管理
テレワーク社員の「労働時間」を把握する方法は、メールや電話などにより業務開始・終了の時刻を報告させる方法が一般的です。従業員の申告に基づく管理、いわゆる「自己申告制」による労働時間の把握に頼らざるを得ないのが現実といえるでしょう。
自己申告制により始業・終業時刻の確認、および記録を行う場合は以下の注意が必要です(注)。
1.十分な説明を行うこと
自己申告制を行う従業員や、労働時間を管理する者に対して、労働時間の実態を正しく記録し、適正に自己申告を行うことの重要性について十分な説明を行うこと
2.必要な場合は実態調査を
自己申告により把握した労働時間と、入退場記録やパソコンの使用時間等から把握した在社時間との間に著しいギャップがある場合には実態を調査し、補正すること
3.適正な自己申告を促すこと
使用者は従業員が自己申告できる時間数の上限を設けるなど、適正な自己申告を阻害する措置を設けてはならないこと。さらに36協定によって延長できる時間数を超えて労働しているにもかかわらず、記録上これを守っているかのように見せる行為が慣習的に行われていないか確認すること
- (注)「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」(平成29年1月20日)より
労働時間管理のチェックポイント
テレワークの場合、時間管理を本人任せにしておくと、どうしても長時間労働になりがちです。社内にいないとはいえ、テレワーク社員の労働時間を管理するのはあくまでも会社の責任です。管理者は、以下のポイントに注意してテレワーク社員の申告を定期的にチェックするとよいでしょう。
- 長時間労働になっていないか
- メールの送信が深夜や休日に行われていないか
- 毎日報告がされているか
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テレワークと「事業場外みなし労働時間制」
事業場外みなし労働時間制とは「会社以外で仕事をする場合に、所定の時間を労働したとみなす制度」のことです。テレワーク社員の場合「事業場外」で働くことは間違いないのですが、そのことだけをもって事業場外みなし労働時間制を採用することはできません。制度を悪用し、使用者が不当に残業代を払わないケースも起こり得るためです。事業場外みなし労働時間制を採用するには、次の二つの要件をクリアする必要があります。
- 会社の外で業務に従事していること
- 労働時間の算定が困難であること
テレワークのように会社以外の場所で働く場合、1)の要件はクリアしていても、2)の要件では、会社の外での労働であっても、時間管理ができる環境であれば、この制度は導入できません。2)の要件を満たすのは、使用者の「具体的な指揮監督が及ばず、労働時間を算定することが困難なとき」に限定され、以下の条件のいずれをも満たす場合にのみ該当するとされています。
- 即応する義務がない状態
情報通信機器が、使用者の指示により常時通信可能な状態におくこととされていないこと=情報通信機器を通じた使用者の指示に即応する義務がない状態 - 随時使用者の具体的な指示に基づいて行っていないこと
上司が事細かに業務の指示を与えていない状態(業務の目的、目標、期限等の基本的事項を指示することは「具体的な指示」に当たりません)
なお、事業場外のみなし労働時間制を適用できる場合であっても、労働したと見なされる時間が深夜もしくは休日の労働となった場合には法定の割増賃金を支払わなければならないこと、そして従業員の健康確保を図る必要があることから、使用者には適正な労働時間管理を行う責務があるとされています。
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テレワーク導入の環境づくり
テレワーク社員が安心して社外で働けるよう、会社はその環境を整えなくてはなりません。
セキュリティが守れる環境づくり
スマートフォンやパソコンなど、端末の紛失や盗難に遭わないように注意を払うことはもちろんですが、万一の紛失に備えて、パスワードロックをかけることを徹底するなどセキュリティ対策が重要です。カフェで資料を広げて業務を行うと隣の人に見えてしまうといったことや出先で資料を忘れてきてしまったなどという「うっかり」も起こり得るので「原則的には自宅での勤務とする」と定める会社も珍しくありません。
オフィス勤務者と円滑に仕事ができる環境づくり
テレワーク社員には、オフィスで働く上司や同僚と連携して業務ができる環境が必要です。そのためには、
- 仕事の共有管理ツール、Web会議システムなどのコミュニケーションツールを導入する
- 出社日や出社曜日を指定し、定期的に直接顔を合わせる機会を作る
といった環境づくりが求められます。
適正な労働時間管理を可能とする環境づくり
使用者が適正な労働時間を把握し、管理できるよう、
- パソコンのログで業務時間を管理する(システムのログイン時間を業務時間とする)
- スマートフォンの活用で、外出先でも利用できる最新の勤怠管理システムを導入する(スマートフォンのGPS機能を利用すれば打刻した場所も分かるシステムがあります)
……などの環境づくりが大切です。
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まとめ
働き方改革の柱の一つとして注目を集めているテレワークですが、全ての業務がテレワークに向いているわけではなく、全社員テレワークというわけにもいかないのが実際です。例えば、単純作業にはテレワークは向かないものが多く、一方、集中して業務に取り組みたいときなどはテレワークが向いているといえます。また、テレワークで成果を出すには、社内での仕組みづくりに結構な手間がかかります。導入に当たっては、以下のポイントに注意して検討してみてください。
テレワーク≠労働時間短縮
「テレワークの導入=労働時間短縮」であるかのような議論が少なからずあります。もちろん、通勤時間がない分、従業員は時間をより有効に活用できるはずです。けれども、テレワークを導入するだけで労働時間が短縮するわけではありません。反対に労働時間が増加してしまうことも考えられます。集中して業務が行える半面、労働時間が長くなってしまう恐れがあるのです。使用者はその点にも気をつけてテレワーク社員の管理に気を配る必要があります。
健康管理の観点から
まとまった勤務時間を確保しようとすると、働く時間が深夜や休日に及んでしまうことが懸念されます。これではせっかくの制度が従業員の健康を害することになってしまい、本末転倒と言わざるを得ません。会社は、健康管理の観点からもテレワーク対象者の「働き方」に配慮しなければなりません。
フレックスタイムと合わせてテレワークのメリットを最大化
テレワークに、「働く時間」を自由に選択することができるフレックスタイム制を適用することで、従業員は「働く場所」と「働く時間」を自由に選択することが可能となります。フレックスタイム制の導入により、従業員は子育てや介護など自分の都合に合わせて働く時間を自由に設定でき、テレワークのメリットを最大化できます。
テレワーク社員の自律性も大切
テレワーク社員本人の自律性も求められます。社員自身が、勤務する時間帯や自らの健康に十分注意しつつ、業務効率を考えながら遂行するには、それだけの意識と能力が必要です。会社がいくら仕組みを整えたとしても、最終的には本人の「働き方」に委ねることになるからです。効率よく業務を進めて生産性を上げることが、このテレワーク導入の目的であることを労使双方で理解することが大切です。
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