2021年 3月

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「オンラインショップ開設&運営の基礎知識(個人事業主編)」の巻

テキスト/梅原光彦 イラスト/今井ヨージ

前回に続けてオンラインショップ開設・運営についての基礎知識です。今回は個人事業主を対象に、オンラインショップを開設・運営するに当たって必要な知識を、主に会計・税務の観点から紹介します。

オンラインショップの基本

今では当たり前の存在となったオンラインショップ。これから新規で開設しようという方は運用の基本を確認しておくとよいでしょう。

オンラインショップとは

オンラインショップとは、インターネット上に開設した店舗で、クレジットカードや電子マネーによる決済方法を使ってモノやサービスを提供するものです。オンラインショップのほか、ECサイト、ネットショップなどの呼び方がありますが、全て同じです。

オンラインショップ開設のメリットとデメリット

オンラインショップにはリアルの店舗とは異なるメリット・デメリットがあります。出店に当たっては、その特質をしっかり踏まえておく必要があります。特にデメリットについては対策(SNSの活用、魅力的な商品作り等)を考えておくことです。

メリット

  • 販売エリアが広がる
  • 開店コストが低い
  • 営業時間を気にしなくてよい

デメリット

  • 集客が難しい
  • 価格競争に巻き込まれやすい(他店との差別化がしにくい)
  • お客様との接点が作りにくい

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開業費の取り扱い

続けてオンラインショップ開業に係るコストの取り扱いについて説明します。

開業費とは

実際にショップをオープンするまでにかかる費用です。「開業費」として計上します。ただし、敷金・礼金、仕入代金などは開業費になりません。あくまで開業のために特別に支出したものが該当します。

【開業費の例】

  • 開業のためのセミナー受講代
  • 開業のための打ち合わせ代
  • 市場調査のための調査費、旅費
  • 開業のために必要なPCや周辺機器類の購入費用
  • 開業に必要なWebサイト構築費用

10万円以上の費用について

原則として固定資産として資産計上が必要です。ただし、青色申告の場合は1個30万円未満の減価償却資産を消耗品費として一括で必要経費とすることができます(少額減価償却資産の特例)。

なお、開業費は繰延資産に該当します。こちらは任意償却なので、初年度に全く償却(費用化)せず、2年目以降に黒字化してから一括で償却することも可能です。

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売り上げの計上方法

オンラインショップの場合、「売上計上日」をいつに設定するかということがポイントとなります。

売上計上のタイミング

売上計上日は、原則として「相手に引き渡した日」となります。

相手に引き渡した日とは

  • 出荷した日(出荷基準)
  • 相手に納品された日(納品基準)
  • 相手が検収した日(検収基準)

などの考え方があります。

主にオンラインショップで物販をすることを想定する場合は、売り上げの計上が早く簡単にできる「出荷基準」が一般的といえます。大事なことは一度出荷基準を選択したら継続して適用しなければならないということです。

発生主義と現金主義

売上計上の方法として発生主義と現金主義があります。発生主義とは、「相手に引き渡した日」で計上する方法、現金主義とは、商品代金が「入金された日」で計上する方法です。

現金主義は入金された分だけ売り上げを計上すればよいので管理が容易です。記帳を簡易にするため、期中は現金主義で帳簿作成し、期末で発生主義に置き換える方法も考えられます。しかし、オンラインショップを開設・運営する場合、ネット上で売上額や入金額を管理することになるので、初めから発生主義で記帳することをおすすめします。

また、EC決済事業者によっては、店側が入金の指示をしない限り決済事業者側に売上金がプールされていくという仕組みもあるようです。このような場合も発生主義で記帳しておけば、売上金が入金されていなくても正しい売り上げを計上することができます。

出荷基準に基づく記帳例

原則的な仕訳の流れは以下のとおりです(後から代金を受け取る場合)。まだ代金を受け取っていなくても、商品やサービスの提供が済んだ時点で売り上げを記帳します。

(例)
商品3万円を令和2年12月3日に出荷し、代金が令和3年1月25日に入金された場合。

出荷時

日付借方貸方摘要
令和2年12月3日売掛金30,000円売上30,000円商品A

入金時

日付借方貸方摘要
令和3年1月25日普通預金30,000円売掛金30,000円商品A

このように、商品を発送した日付で売り上げを計上します。代金を受け取るまでは売掛金として計上し、代金を受け取った日付で売掛金消し込みの仕訳を行います。

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仕入れや経費の計上方法

仕入れや経費の計上タイミング

所得税は、1月から12月までの1年間を基に計算します。必要経費の金額は、「その年において支払うべき債務が確定した金額」をいいます。つまり、その年にお金を支払っていなくても、お金を支払わなければいけないことが確定すれば、その債務が確定した日に必要経費として計上することになります。このことを「権利確定主義」といいます。

商品を仕入れた場合は、商品の引き渡しを受けた日に「仕入れ」として計上します。具体的には、納品基準か検収基準があり、どちらかを選んで継続適用します。

未使用の場合は注意!

消耗品などを購入して「未使用」の場合は注意が必要です。

次のような例では――

令和2年12月31日 オンラインショップで業務に使うパソコンを9万円で購入
令和3年1月10日 パソコンの納品日
令和3年2月10日 カードの引き落とし日

この場合、令和3年分の必要経費となります。一方、令和2年12月31日に家電量販店でパソコンを購入し、その日のうちに仕事で使った場合は、令和2年分の必要経費になります。
12月は決算セールなどで大量に事務用品を発注することもあるかもしれません。こうした場合、未使用のものは経費ではなく「貯蔵品」として資産計上しなければなりません。

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在庫管理の注意点

物販の場合は在庫管理が非常に大切です。商品の入荷・出荷の管理を正確かつ効率よく行うことがオンラインビジネス成功の鍵となります。そこで重要なのが棚卸しです。

棚卸しとは

棚卸しとは、期末に商品等の在庫の数量を確認し、会計上の期末棚卸資産の金額を確定させる作業のことです。棚卸しによって、12月31日の期末時点での在庫を把握し、売れ残った商品等を棚卸商品として資産計上することになります。

棚卸商品の資産計上に当たって

棚卸商品を資産計上するには、まず商品の金額を確定しなければなりません。同じ商品でも仕入れ時期で異なる場合もあるので一定のルールに基づいて金額を決めることになります。棚卸資産の評価方法はさまざまありますが、一般的には簡便で分かりやすい「最終仕入原価法」が原則として採用されます。これは最後に仕入れた時点での価格を単価として採用し、在庫数を乗じて棚卸商品の額を決定するという方法です(そのほかの方法を採用したい場合には事前に税務署に届け出が必要です)。

新規に開業した場合は、開業した日の属する年分の確定申告書の提出期限までに棚卸商品の金額を決定する方法を選定して納税地の所轄税務署長に届け出をする必要があります。

棚卸しのポイント

棚卸しは非常に手間のかかる作業です。従って貯蔵品になるもの、ならないものの仕分けを明確にすることが大切です。最初から棚卸しをする必要がないものを除外できれば作業はその分軽減されるからです。

貯蔵品になるもの

棚卸しは仕入商品だけではありません。前述のとおり未使用の消耗品も対象で、これらは貯蔵品として資産計上しなければいけません。

貯蔵品にならないもの

「毎年一定数量を取得し、かつ、経常的に消費するもの」については、未使用であっても貯蔵品として資産計上しなくてもよいという特例があります。
例えば、

  • 包装材
  • トイレットペーパー
  • ボールペン
  • 広告宣伝用の印刷物

などです。

自家消費に注意!

販売用の商品を知人などに分けてあげたり、自分で使ったりした場合は自家消費として収入に計上しなければなりません。自家消費をした場合は、販売価格の70%と仕入金額のどちらか高い方の額を収入として計上します。税務調査が入った場合、自家消費がないか、収入の計上漏れがないか、必ずチェックされます。

(例)
販売価格100円 仕入値60円の商品を自家消費した場合

100円×70%=70円>仕入値60円

故に70円が自家消費となります。
記帳例は以下のとおりです。

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法人化する場合の注意点

ECサイト事業が軌道に乗って売り上げも増えてきた場合、法人にすることも検討してみてはいかがでしょうか。

法人化のメリット

  • 節税対策になる
  • 信用力が上がる
  • 社会保険に加入できる

法人化のタイミング

法人化のタイミングは幾つかありますが、節税効果が高いタイミングは売り上げが1,000万円を超えた年の2年後です。なぜなら、原則として売り上げが1,000万円を超えた2年後から消費税の課税事業者になるからです。

【法人化のスケジュール例】
(個人)開業1年目 令和1年分の売上:1,200万円(免税事業者)
(個人)開業2年目 令和2年分の売上:1,500万円(免税事業者)

(個人)令和2年12月31日 廃業日
(法人)令和3年1月1日 開業日

  • *令和2年12月中に法人設立登記を完了させておきます。

【法人化後の消費税課税】
(法人)開業1年目 令和3年分の売上:1,800万円(免税事業者)
(法人)開業2年目 令和4年分の売上:2,000万円(免税事業者)
(法人)開業3年目 令和5年分の売上:2,300万円(課税事業者)

まず、令和2年12月中旬ごろに資本金1,000万円未満の法人を設立しておき、令和3年1月1日を開業日として法人成りします。個人事業主は12月31日で廃業します。そうすれば、法人の2期間も消費税が免税されるので、個人事業主の時代と併せて4期分消費税が免税されます。

令和3年に入ってから法人を設立すると、1月1日から法人設立日までの分を個人事業主として申告しなければなりません。しかも課税事業者なので消費税も納付しなければいけません。従って12月中に法人登記を済ませておけば、1月1日を法人の開業日としてスムーズに個人から法人へ切り替えられるということになります。

注意!

設立1期目の1月~6月までの間に「売上」と「従業員へ支払った給与」の両方が1,000万円を超えた場合は、2期目から課税事業者になります(基準期間がない法人の納税義務の免除の特例)。売上または給与のどちらか一方が1,000万円を超えただけの場合、2期目は免税事業者となります。新規設立ではなく、個人事業主から法人成りした場合は、ビジネスがある程度軌道に乗っている場合が多いと考えられるので、注意が必要です。

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まとめ

消費者のインターネット利用が広がる中、リアル店舗に加えオンラインの販売チャネルも持っておくことはビジネスの幅を広げ、店の強みになるでしょう。オンラインショップの設立・運営に当たっては、サポートしてくれるプラットフォーマーがたくさんあります。手数料、システムの使い勝手、セキュリティ対策、管理画面の見やすさなど検討すべき項目はいろいろありますが、オンラインショップの場合、特に重要なのがデータの保管です。使っているPCが壊れてもデータを復旧できるか、多様なデバイスでいつでもどこでもアクセスできるか、といった点を考慮して業者を選定するとよいでしょう。

  • *オンラインショップに関する法的なルールの基本知識については、以下の過去記事を参照ください。

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ライター紹介

梅原光彦

ライター歴30年超。新聞、雑誌、書籍、Web等、媒体を問わず多様なジャンルで書き続ける。その一つが米原万里著『打ちのめされるようなすごい本』に取り上げられたことが勲章。京都在住。

監修/田中章仁(たなかあきひと)

プロフィール

1974年生まれ。神奈川県出身。東京税理士会渋谷支部所属。個人事業主から中小企業まで幅広くサポート。モットーは「共に悩み、共に喜ぶ」。週末は少年野球の監督も務める。4児の父。

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