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2023年 1月17日公開
【連載終了】専門家がアドバイス なるほど!経理・給与
テキスト/梅原光彦 イラスト/今井ヨージ
労働基準法が改正され、2023年4月1日から「時間外労働の割増賃金率」についての新たな適用が始まります。中小企業についても1カ月60時間を超える時間外労働の割増賃金率が25%から50%に引き上げられるのです。改正を前にあらためて注意すべき点をチェックしておきましょう。
目次
今回の改正により、中小企業の月60時間超の時間外労働に対する割増賃金率「25%増し」が「50%増し」になります。この「50%増し」は、大企業では既に2020年4月1日から実施済みで、中小企業はこれまで猶予期間となっていました。この猶予期間が2023年3月末で終了するということです。
参照元:厚生労働省「月60時間を超える時間外労働の割増賃金率が引き上げられます」
ここでいう「時間外労働」とは平日の残業だけでなく、法定外休日の出勤分も加えた時間のことです。そうなると、休日出勤が多い事業所の場合、60時間を超えるハードルはそれほど高いとはいえなくなります。例えば、週休二日制(土日が休日)で、日曜日を「法定休日」(従って土曜日は法定外休日)と定めている場合で考えると、平日2時間の残業で月40時間、土曜日に平日と同様1日10時間労働を月2回行えば、これで1カ月の時間外労働60時間は成立してしまうのです。従って「月60時間超の時間外労働」は十分ありうることとして注意しておくことが必要といえます。
なお、どの休日を法定休日とするのかは就業規則等により定めるべきとされています。法定休日が特定されていない場合は、「暦週(日~土)の日曜日及び土曜日の両方に労働した場合は、当該暦週において後順に位置する土曜日における労働が法定休日労働となる。」とされていて、最も後順に位置する休日を法定休日として扱うという考え方となっています。
月60時間を超える時間外労働を深夜(22:00~5:00)の時間帯に行わせる場合、深夜割増賃金率25%+時間外割増賃金率50%=75%となります。
月60時間の時間外労働時間の算定には、法定休日に行った労働時間(注1)は含まれませんが、それ以外の休日(法定外休日)に行った労働時間は含まれます。
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中小企業にとって今回の改正による賃金コストに対するインパクトはかなり大きなものになるでしょう。会社としては、これまで以上に時間外労働を削減しないと賃金コストが上昇することになります。例えば、月給250,000円の従業員の時間外手当の単価(割増率25%)は、1,898円です。これが改正後は、1カ月60時間を超える時間外労働については、2,278円(割増率50%)となり、1時間当たり380円もの差が生じることになるのです。
(所定労働時間1日8時間、年間所定休日118日で計算)
月給÷(365‐年間所定休日)×1日の所定労働時間÷12カ月=割増賃金
月給250,000円で計算すると――
割増賃金率「25%増し」の場合250,000円÷(247日×8時間÷12)×1.25=1,898円(割増賃金)
割増賃金率「50%増し」の場合250,000円÷(247日×8時間÷12)×1.50=2,278円(割増賃金)
となります。
「土曜日」「日曜日」のいずれの出勤についても「休日出勤」として労働時間数をカウントしている事業所は多いことと思われます。改正後は、法定外休日の労働時間については、「時間外労働」時間数として累計する仕組みを整える必要があります。この時間が60時間を超えた場合には、50%増しの割増賃金を支払わなければならなくなるからです。
時間外労働60時間超とは、1日の時間外労働+週40時間を超える労働(所定休日の労働)です。これをカウントできる仕組みを設けることと、給与計算についても新たな率で支払う項目を作ることが必要です。残念ながら中小企業においては、「労働時間管理」がうまくできていない事業所が少なからず見受けられます。改正を機会に助成金制度を活用するなどしてシステム整備に取り組むとよいでしょう。
勤怠管理システム導入費用と就業規則の改正費用に、「働き方改革推進支援助成金」を活用することができます。助成率は75%(一定の要件を満たした場合は80%)、上限額は最大250万円(注2)となっています。
代替休暇とは、割増賃金率25%分が1日分となった場合に休ませる制度です。月60時間を超える法定時間外労働を行った労働者の健康を確保するため、引き上げ分の割増賃金の支払いの代わりに有給休暇(代替休暇)を付与することができます。会社にとっては、休暇を与える代わりに賃金を支払わなくて済むことになりますが、この代替休暇を個々の労働者が取得するか否かは本人の意思により決定されます。
代替休暇制度導入にあたっては、過半数組合(労働者の過半数で組織する労働組合)、それがない場合は過半数代表者(労働者の過半数を代表する者)との間で労使協定を結ぶことが必要です。詳しくは以下のリンクを参照ください。
厚生労働省「改正労働基準法 Ⅱ法定割増賃金率の引上げ関係」
今回の改正への対応として、就業規則(賃金規定)の割増率の追記が必要です。割増賃金率の引き上げに合わせて就業規則の変更が必要となる場合があります。
追記例
(割増賃金)第○条 時間外労働に対する割増賃金は、次の割増賃金率に基づき、次項の計算方法により支給する。
(1)1カ月の時間外労働の時間数に応じた割増賃金率は、次の通りとする。この場合の1カ月は毎月1日を起算日とする。
ウィズコロナ下で経済活動に(いい意味でも)不確定要素が多いこともあり、景気が上向き傾向となれば、企業労働者の残業時間は増加することが予想されます。この状況で、改正労基法に定められた通り、中小企業に与えられた猶予期間が終了すると賃金コストの上昇はかなりのものとなるでしょう。「労働時間の削減」は一朝一夕にはいきません。時間外労働が多い事業所については、早急に対策を検討する必要があります。
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