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2023年 2月14日公開
【連載終了】専門家がアドバイス なるほど!経理・給与
テキスト/梅原光彦 イラスト/今井ヨージ
財団法人、NPO法人など、利益分配を目的としない非営利法人の社会的な意義、役割はますます高まるとともに法人数も増加してきました。社会から期待が寄せられる非営利法人ですが、その中でもいくつかのカテゴリーがあり、税務についての扱いもそれぞれで異なります。そんな非営利法人の設立時や事業運営において注意すべきポイントは何なのか、「税務」の観点から考えてみます。
目次
営利法人(株式会社、合名会社、合資会社、合同会社など)が利益を追求し、事業活動によって得た利益を株主等へ分配することを目的として設立されるのに対して、非営利法人は利益追求を目的とせず、法人の目的を達成するために設立される組織です。
非営利法人には、一般社団法人、一般財団法人、公益社団法人、公益財団法人、NPO法人、宗教法人、学校法人、社会福祉法人などがあります。
営利法人と非営利法人の違いは目的以外にも構成員の数、税務申告の有無、社会的信用などで違いがあります。具体的には次の表「非営利法人・営利法人の形態比較」にまとめましたので参考にしてください。
社団法人は人の集まりに対して法人化されたもの。一方、財団法人は財産に対して法人化されたものです。社団法人は会員から運用資金を集めますが、財団法人は寄付金や基金によって運用されるということで運用資金の出どころも違っています。
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営利法人であれば全ての事業が収益事業となりますが、非営利法人は公益・共益的な活動を行うことから、「課税対象となる事業」と「課税対象とならない事業」が混在することになります。そのため法人税法では、課税対象となる事業を「収益事業」として定義し、それ以外の「非収益事業」と区別しています。
法人税法で定める34業種(「特掲事業」といいます)で、継続して事業場を設けて行われる事業をいいます。それ以外の事業は非収益事業となります。ただし、34の特掲事業に該当しても、法令等の規定により除外される事業があります。除外される事業は業種ごとに規定されています。
1.物品販売業、2.不動産販売業、3.金銭貸付業、4.物品貸付業、5.不動産貸付業、6.製造業、7.通信業、8.運送業、9.倉庫業、10.請負業、11.印刷業、12.出版業、13.写真業、14.席貸業、15.旅館業、16.料理店業その他の飲食業、17.周旋業、18.代理業、19.仲立業、20.問屋業、21.鉱業、22.土石採取業、23.浴場業、24.理容業、25.美容業、26.興行業、27.遊技所業、28.遊覧所業、29.医療保健業、30.技芸教授業、31.駐車場業、32.信用保証業、33.無体財産権の提供等、34.労働者派遣業
非営利法人の中でも、行政庁の公益認定を受けていない一般社団法人・一般財団法人の場合、その法人が「非営利型法人」に該当するかどうかで税務上の取り扱いが大きく異なります。一般社団法人や財団法人は、その運営が法人の自主性に委(ゆだ)ねられており、かつ名称が「公益性」をイメージさせることから、それを隠れ蓑(みの)にした申告漏れが起きやすいといえます。そのため、一般財団・社団法人については「非営利型法人」とそれ以外とに分けて、特別に厳しく縛っているのです。
一般社団法人や一般財団法人を設立する際は、「非営利型法人」に該当するように組織を設計しないと税のメリットを受けることができないので注意が必要です。
非営利型法人には、「非営利型徹底法人」と「共益型法人」の二つの類型があります。
その行う事業により利益を得ること、またはその得た利益を分配することを目的としない法人であって、その事業を運営するための組織が適正であるものと規定されています。具体的には、次の四つ全ての要件に該当するものとされています。
【非営利型徹底法人の要件】
会員から受け入れる会費により当該会員に共通する利益を図るための事業を行う法人で、その事業を運営するための組織が適正であるものと規定されています。具体的には、次の七つ全ての要件に該当する法人とされています。
【共益型法人の要件】
一般社団法人と一般財団法人は法律で剰余金の分配ができないと定められているなど、非営利の要件を満たしています。しかし、一般財団法人と一般社団法人の運営はその自主性に委(ゆだ)ねられ、NPO法人や学校法人など他の非営利法人のように行政が監督する仕組みになっていないため、法人自体が私物化され、剰余金が分配されたとしても法人を解散させるなどのペナルティーを科すことができません。そのため、税法ではさらに非営利型法人の要件を定め、法人を私物化しないことや、親族支配の実態がないことを要件として求めているのです。
当社は一般財団法人で、非営利型法人として設立しました。しかし、非営利型法人であっても、法人税がかかる場合があると聞きました。どのような場合に法人税がかかるのでしょうか?
非営利型の場合は、収益事業から生じた所得についてのみ法人税が課税されます。従って、収益事業と非収益事業との区分が非常に重要になってきます。法人税法では34業種の収益事業を定めていて、これらの業種に該当すれば原則として収益事業とされます。一方で全業種や業種ごとに除外されるものも規定されているので、取引内容ごとに判定するべきでしょう。
当社は一般社団法人で、非営利型法人としての要件を満たさずに設立しました。非営利型法人として設立した場合と具体的にどのような違いがあるのでしょうか?
収益事業はもちろんのこと、非収益事業であっても「会費」「寄付金」「助成金」「補助金」など全ての収入が課税対象となります。ちなみに非営利型法人の場合は、会費や寄付金などの収入は非収益事業での収入になりますので法人税はかかりません。
当社は一般財団法人で、非営利型法人として設立、活動していたのですが、非収益事業の活動がほとんどなく、活動の中心が収益事業となっています。そこで、法人の利益を分配することを検討していますが、そうなると非営利型法人の要件を満たさなくなります。なにか不都合は生じるでしょうか?
非営利型法人の要件を満たさなくなった日(移行日)前の収益事業以外の事業から生じた所得の累積額として計算した金額(累積所得金額)または移行日前の収益事業以外の事業から生じた欠損金額の累積額として計算した金額(累積欠損金額)に相当する金額を移行日の属する事業年度の所得の計算上、益金の額または損金の額に算入することとされています。御社の場合は、非収益事業がほとんどないとのことですので、それほど影響はないと思いますが、非収益事業の金額が大きい場合は注意が必要です。
当社は非営利型の一般財団法人ですが、この度会員に無料で会報を配布し、会員以外には1部500円を「寄付金」として頂戴(ちょうだい)しようと思っています。この場合の課税はされるのでしょうか?
会報を無料で配布した場合は、出版業に該当せず法人税は課されません。一方、有料で配布した場合は出版業に該当します。従って、その対価として500円を受け取った場合は、たとえ寄付金名目で受け取ったとしても出版業による収益とみなされ、法人税がかかります。
当社は非営利型の一般財団法人ですが、子育てに関するワークショップを開催し、参加者から参加費を徴収しています。この場合の課税関係はどうなりますか?
法人税で定める技芸教授業に該当しないため、法人税はかかりません。技芸教授業は22種の技芸に限定されています。具体的には以下のものをいいます。
1.洋裁、2.和装、3.着物着付け、4.編物、5.手芸、6.料理、7.理容、8.美容、9.茶道、10.生花、11.演劇、12.演芸、13.舞踊、14.舞踏、15.音楽、16.絵画、17.書道、18.写真、19.工芸、20.デザイン(レタリングを含む)、21.自動車操縦、22.小型船舶の操縦
ワークショップは22種の技芸に該当しないため、法人税はかかりません。
これまで述べたように、一般社団法人や一般財団法人の場合、設立の際に非営利型の要件を満たさないと、全所得課税となってしまうため注意が必要です。その要件を満たすかどうかを考えた上で、法人が営む事業が法人税法で定める収益事業の34業種に該当するかどうかを判定し、課税関係を確認する必要があります。事業計画の段階からその対価が収益事業に該当するものなのか、非収益事業に該当するものなのか、入念に確認しておくことをお勧めします。
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