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2023年 3月14日公開
【連載終了】専門家がアドバイス なるほど!経理・給与
テキスト/梅原光彦 イラスト/今井ヨージ
下請法は、下請け事業者に対する親事業者の優越的地位の濫用を取り締まるために制定された法律です。協力会社・取引先との関係で法令違反・義務違反をしないためには、どんな点に気をつければよいのでしょう。発注などの際に注意すべきポイントを紹介します。
目次
下請法は、事業者同士の公正な取引を促進するため、独禁法の補完として設けられています。まずは下請法の目的から理解しておきましょう。
正式には「下請代金支払遅延等防止法」といいます。親事業者による下請け事業者への優越的地位の濫用行為を取り締まるために制定された法律です。
どんな会社でも自社の資源だけで全ての商品やサービスを完結することはできません。必ず協力会社、すなわち下請け事業者の力が必要になります。本来はウィンウィンであるべき取引関係ですが、親事業者(発注側)・下請け事業者(受注側)というそれぞれの地位・力関係の違いから、下請け側が一方的な不利益を被ることを防止することが下請法の目的です。
下請法では、例えば、下請け事業者に責任がないのに、親事業者が発注後に下請け代金の額を減じることが禁じられています。たとえ当事者間で協賛金、値引き、歩引き等の名目で発注後に一定金額を下請け代金から差し引くことで合意している場合であっても、下請法違反になります。また、親事業者の社内検査などの事務手続きの遅れや、下請け事業者から請求書が提出されていないことを理由に、下請け代金の支払日を遅らせることも認められません。
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下請法は、適用の対象となる下請け取引の範囲を、1. 取引の内容、2. 当事者の資本金、との両面から定めています。
下請法の規制対象となる取引は、その委託される内容によって条件が定められています。その内容は次の四つに大別されています。
物品を販売する事業者、もしくは製造を請け負っている事業者が、規格、品質、形状、デザイン、ブランドなどを指定して、他の事業者に物品の製造や加工などを委託することをいいます。ここでいう「物品」とは動産のことで、家屋などの建築物は対象に含みません。
物品の修理を請け負っている事業者が、その修理を他の事業者に委託すること、もしくは自社で使用する物品を自社で修理している事業者が、その修理の一部を他の事業者に委託することなどをいいます。
ソフトウェア、映像コンテンツ、各種デザインなど、情報成果物の提供や作成を行う事業者が、他の事業者にその作成作業を委託することをいいます。
【情報成果物の代表的例】
運送やビルメンテナンスなど各種サービスの提供を行う事業者が、請け負った役務の提供を他の事業者に委託することをいいます。ただし、建設業を営む事業者が請け負う建設工事は役務に含まれません。
規制対象となる取引の発注者(親事業者)は、資本金区分(または出資金の総額)により「優越的地位にある」ものとして扱われます。資本金(出資金)という明確な基準で親事業者を認定することで、その不当な行為を、より迅速かつ効果的に規制できるようになります。
次の取引内容で、資本金の大きい発注者が、資本金の小さい事業者または個人事業主に発注した場合、下請法が適用されます。
取引内容(1)
製造委託、修理委託、プログラムの作成委託、運送・倉庫保管・情報処理の委託
取引内容(2)
プログラム以外の情報成果物作成委託、運送・倉庫保管・情報処理以外の役務提供委託
下請法では、親事業者による優先的地位の濫用行為を禁じるとともに義務を定めています。また親事業者がそれらに違反した場合の罰則も定めています。
親事業者には次の行為が禁止されています。
親事業者には次の四つの義務が課せられています。
注: 下請法3条に定められている書面で、親事業者が発注に際して下請け事業者に交付しなければならない書面のこと。下請け事業者の給付の内容、下請け代金の額、支払期日および支払い方法など記載事項が規定されています。
親事業者に禁止行為や義務違反があった場合、親事業者には次のような罰則やリスクがあります。
発注者が、発注書(3条書面)を交付する義務や取引記録に関する書類の作成・保存義務を守らなかった場合には、50万円以下の罰金の刑事罰が定められています。
親事業者による下請法違反により下請け事業者に損害が生じている場合、下請け事業者から、調停や裁判外紛争解決手続き(ADR)を申し立てられたり、民事裁判を起こされたりして、損害賠償等を求められる可能性があります。
公正取引委員会は、親事業者が下請法に違反した場合、それを取りやめて原状回復させること(減額分や遅延利息の支払い等)を求めるとともに、再発防止などの措置を実施するよう勧告を行う場合があります。勧告を受けた場合、企業名や違反事実の概要などが公表されます。親事業者に下請法違反があったという事実が業界内に知れ渡れば、企業イメージが損なわれることは言うまでもありません。法令違反を犯した親事業者との取引を敬遠する下請け事業者が出てくるなど、他の取引関係にも悪影響が生じる可能性があるでしょう。なお、勧告に至らない事案であっても、公正取引委員会は親事業者に対し改善を強く求める指導を行う場合があります。
親事業者には違反事実を自発的に申告するという選択肢も
公正取引委員会は、発注者側が下請法違反を自発的に申し出た場合には、おおむね過去1年分の代金減額分等を返還することなどを条件に、勧告等は行わないと公表しています。なお、自発的申告をすべきか否か等については、条件の詳細も含め事案ごとに判断が異なるため、専門家に相談されることをお勧めします。
事業者間の取引を監督する公正取引委員会は、中小企業庁と連携して下請法違反行為の発見に力を入れています。発注者側事業者、受注者側事業者に対するアンケート調査(定期書面調査やWeb調査)や、相談窓口(「下請かけこみ寺」や、公取への申告など)への相談・通報などを通じて下請法違反の有無を察知し、発注者側に対して取引記録の調査や立ち入り検査が行われます。こうした取り締まりは年々厳しくなっているのが実情です。
親事業者から不当な扱いを受けても日ごろの取引があるため、なかなか動きにくい面があるのも事実です。公取への申告なども可能ですが、実際に申告を行うよりも、下請けいじめをやめてもらうための説得材料・交渉カードとして使うのが現実的かもしれません。
親事業者からすると、これくらいは普段の付き合いがあるのだから頼んでみようと気軽に考えてしまうと、それが「下請けいじめ」ととられる可能性は十分あります。親事業者としての禁止行為や義務違反をしていないかどうか、あらためてチェックする必要があります。
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