改正電子帳簿保存法の「現在地」
電帳法とは、これまで紙での保存が義務付けられていた国税関係帳簿や書類などを、一定の要件のもとで電子化し、保存できるようにした法律のことです。紙の書類を保存する機会が減り、書類のデータ化や書類保管に関する業務効率化が進んだ一方で、電子データで授受した書類はデータでの保存が義務付けられるなど、いくつかの制約も生まれています。
電帳法への対応が迫っていた2023年内は、その準備で多忙を極めた総務担当者や経理担当者も多かったことでしょう。あれから半年以上がたった今、電帳法はどれほど浸透しているのでしょうか。
民間企業が電帳法の対応について調査したところ、電帳法への対応が完了している企業の割合は、1,000名以上の企業で8割程度、100名~1,000名未満の企業では7割程度であることが分かりました。中小企業や零細企業ほど、完了していない企業が多いようです。また、今回義務化された「電子帳簿等の電子保存」に関しては、企業全体の6割弱が対応を完了していました。
電帳法への対応からまだ日が浅いため、対応に関する大規模な調査は行われていません。しかし、中小企業ほど未対応となっている可能性が高いとみられます。
電帳法のトラブル最前線! マイナートラブルが多数発生中
電帳法に対応した企業では、大きなエラーやトラブルよりも、一つ一つは小さなものの、積み重なると面倒なマイナートラブルが散見されるようです。実際に発生したトラブル事例を紹介します。
領収書の自動読み込み機能の精度が低い
電帳法に対応するために、文書管理システムやクラウド経理システムなどを新たに導入した企業は多いと思います。こうしたシステムには、紙の領収書や請求書などをスキャンすると記載されている内容を自動で読み込む機能がついていることがあります。
一見するととても便利な機能ですが、実際は自動読み込み機能の精度が低く、内容を手打ち入力したほうが早い場合もあるようです。
請求書のスキャンが汚い、失敗する
電帳法対応のため、各従業員が請求書や領収書をスキャンする機会が増加しました。しかし全員がこうした作業をていねいにやってくれるわけではありません。一部の従業員のスキャンが雑な場合、経理などのバックオフィス部門がスキャンし直す手間が発生しがちです。
PDFの読み込み精度が低く、印刷できない
利用しているシステムやソフトの自動読み込み機能によっては、PDFなど特定のデータ形式だと読み込み精度が低くなってしまうことがあります。そのためPDFを印刷して画像化してから読み込もうとしますが、電帳法の規定に反してしまうため社内や税理士から止められる、というケースが発生しているようです。
これは電帳法が改正された目的からしても本末転倒になるため、実態と理想が合致しないジレンマを感じさせる事案です。
領収書やレシートの保存状態が悪く、スキャンできない
各従業員が領収書やレシートなどを一定期間保管していると、紙が折れたり汚れたり、また印字が薄くなったりするケースがあります。こうした保存状態の悪い紙は、スキャンしても内容が読み込めないことが多いので注意が必要です。各従業員に注意喚起し、領収書などは入手後早めに提出してもらうとよいでしょう。
特定の領収書の保存要件を誤る
今回の電帳法改正により、紙の領収書などをスキャナー保存する期限は、2カ月とおおむね7営業日以内に延長されました。この期限を過ぎてスキャナー保存した場合は、該当する領収書などを紙のまま保存する必要があります。
しかしこの対応方法について知らず、期限を過ぎてスキャンした紙の領収書を誤って破棄してしまった事案が発生しているそうです。こうしたトラブルが起きないよう、対応期限について従業員へ周知する必要があります。
些末(さまつ)な業務が増え、経理担当者の業務負担が増える
システムを導入して電帳法に対応したものの、システムの運用やタイムスタンプの管理が難しかったり、紙とデータのやりとりが増えたりと、小さな業務が山積してしまう事例もあります。これにより経理担当者の業務負担が増えた結果、人員確保や税理士など外部への委託を検討する会社もあるようです。
2024年3月に更新された国税庁Q&A。その内容は?
2024年3月には、国税庁の「電子帳簿保存法一問一答」に追加のQ&Aが更新されています。その内容から重要なものを紹介しましょう。