2025年 7月 8日公開

総務・経理・人事コラム

人材採用・育成に役立つ! 使わないともったいない補助金・助成金

著者:金指 歩(かなさし あゆみ)

人事の現場では、「もっと人材育成や雇用に力を入れたいけれど、予算が足りない……」という声をよく耳にします。そんなときに検討したいのが、補助金・助成金の活用です。今回は人事領域に関連する補助金・助成金を紹介します。

企業が活用できる「補助金」「助成金」とは

企業経営において、補助金や助成金は財務面を支援する重要な制度です。しかし「補助金や助成金があるのは知っているけれど、活用したことがない……」という方も多いのではないでしょうか。まずは、補助金・助成金の概要から説明しましょう。

補助金とは、国の政策目標の実現を目的に設けられる制度です。経済産業省や地方自治体が補助金を出すケースが多く見られます。原則として審査があり、採択件数に限りがあること、また公募期間が短いことが特徴です。

一方、助成金とは、一定の条件を満たせば原則として支給されるものです。厚生労働省が多くの制度を設けています。例えば「非正規社員を正社員に転換した」「テレワーク制度を整えた」など、企業の行動に対して対価が支払われます。

補助金や助成金にはさまざまな種類がありますが、特に中小・中堅企業にとっては、助成金のほうが使いやすいケースが多いようです。制度の条件を満たして正しく申請すれば、比較的高い確率で支給されやすいのが助成金だからです。その種類も豊富で、雇用、人材育成、就労環境の整備など、さまざまな経営課題に対応できます。

助成金には、対象費用の一定割合が助成されるタイプや、上限額が設けられているタイプがあります。その条件を確認し、利用するメリットの大小を検討した上で申請するとよいでしょう。

人材育成に活用できる補助金・助成金の例

ここからは、人材育成に活用できる補助金・助成金を紹介します。

なお、日本政府が出している補助金や助成金については、以下のサイトで検索できます。ぜひ活用してみてください。

中小企業基盤整備機構「支援情報ヘッドライン」(中小企業基盤整備機構のWebサイトが開きます)

人材開発支援助成金

人材開発支援助成金は、労働者のキャリア形成や職業能力の向上を目的とした制度です。計画的な職業訓練などを実施した企業に対して、研修費用や訓練期間中の賃金の一部などを助成します。

人材開発支援助成金には以下六つのコースがあるため、用途に応じてコースを選びましょう。

  • 人材育成支援コース:職務に関連する知識やスキルを習得するための訓練などを実施する場合
  • 教育訓練休暇等付与コース:有給教育訓練等制度を導入し、労働者が当該休暇を取得して訓練を受けた場合
  • 人への投資促進コース:デジタル人材、高度人材を育成する訓練や、労働者の自発的な訓練、サブスクリプション型の訓練などを行った場合
  • 事業展開等リスキリング支援コース:新規事業立ち上げなどの事業展開に伴い、新たな分野で必要な知識・スキルを習得するための訓練を実施した場合
  • 建設労働者認定訓練コース:認定職業訓練または指導員訓練のうち、建設関連の訓練を実施した場合
  • 建設労働者技能実習コース:雇用する建設労働者にスキル向上のための実習を有給で受講させた場合

例えば、中小企業が人材育成訓練を実施した場合、従業員1人あたり1時間800円の賃金助成を受けられます。

この助成金は、若手社員だけでなくミドル・シニア社員のリスキリングや社内のデジタル化など、幅広く活用できる点が特徴です。

厚生労働省「人材開発支援助成金」(厚生労働省のWebサイトが開きます)

障害者能力開発助成金

障がいのある従業員に対して職業訓練を提供した場合には、障害者能力開発助成金(2024年度に「人材開発支援助成金(障害者職業能力開発コース)」から分離独立)が利用できます。教育訓練の場を整備した企業に対して、必要な施設や設備の設置・整備にかかる費用の一部が支給されます。