2024年 6月11日公開

一歩先への道しるべ ビズボヤージュ

「南海トラフ地震」に備え淡路島の3自治体と大塚商会が連携協定を締結

企画・編集・文責 日経BP総合研究所

つながりを深め「災害に強い島」を目指す

2023年11月29日、兵庫県南あわじ市で淡路島内3市(淡路市、洲本市、南あわじ市)への「災害対策用資機材寄附贈呈式」が行われた。これは同年8月、大塚商会が3市との間で締結した「災害対策支援協定」に基づくもの。この協定は、災害発生時に淡路島内3市と大塚商会が迅速かつ円滑に連携し、被災した自治体を支援することを目的としている。今回寄贈された災害対策用資材と当日の式の様子を紹介する。

* 本記事は「一歩先への道しるべ(https://project.nikkeibp.co.jp/onestep/)」の記事を再掲載しています。所属と肩書は取材当時のものであり、現在とは異なる場合がございます。

被災地や自治体での活用が進む2つの災害対策用資材

大阪湾と播磨灘の間にある淡路島は、兵庫県南部に位置し、約593m2(平方メートル)の面積を持つ日本最大の島である。『古事記』では天地創造によって最初に誕生した「国生みの島」とされ、古代には優れた航海術を持つ“海人”の拠点となった。今も島内には様々な遺跡が残り、往時の名残をとどめている。

また、海と山の幸に恵まれ、古来「御食国(みけつくに)」として朝廷に食材を献上してきた。現在の食料自給率は実に100%超。「神戸ビーフ」や「特産松坂牛」の原料となる但馬牛の産地としても知られ、近年は地場産の「淡路ビーフ」が人気を集めている。「最近は、淡路島への移住者やワーケーションで来られる方が増えています。羽田空港から徳島経由で2時間程度ですので、首都圏の方も多いですね」と南あわじ市の守本憲弘市長は語る。

一方で、風光明媚な淡路島は、自然災害の脅威にもさらされてきた。1995年の阪神・淡路大震災では、淡路島北部を震源として、マグニチュード7.3の大地震が発生。また、南海トラフ巨大地震では最大震度6強、沿岸部を中心とした建物全壊や津波などの被害が想定されている。

南海トラフ巨大地震の備えとして、大塚商会は淡路島内3市と「災害対策支援協定」を締結し、企業版ふるさと納税を活用して災害対策用資機材を寄贈することを決定。この日、「WOTA BOX」と屋外シャワーキット1基と災害用簡易トイレ「ラップポン」16基を3市それぞれに寄贈した。

WOTA社製の「WOTA BOX」は、水道のない場所でも安心安全に水を利用できるポータブル水再生システム。排水の98%以上をリサイクルして、シャワーや手洗いに利用することができる。100リットルの水で約100回シャワーを利用することができ、災害発生時には車に搭載して被災地を回ることも可能だ。

寄付贈呈式後に行われた「WOTA BOX」のデモンストレーションの様子

このシステムは、コロナウイルスの除去も可能な「RO膜」と活性炭の6つのフィルターを採用。万一、シャワー中に排尿した人がいても、WOTA BOX内のセンサーが尿を検知して分離し、循環利用せずに排水する安全機能も備えている。

コロナウイルスを除去するRO膜を採用した「WOTA BOX」のフィルター

もう1つの寄贈品「ラップポン」は、日本セイフティー社製の災害用簡易トイレである。熱圧着によって排泄物などを1回ごとに密封する、新しいラップシステムを採用。特殊防臭フィルムを使用し、凝固剤を併用することで、臭気を漏らさず微生物(細菌)を遮断。快適かつ衛生的で、感染症予防にも役立つ。

災害用簡易トイレ「ラップポン」

停電に備えて、約90回使用可能な専用バッテリーを装備。また、通常のAC電源からの給電に加えて自動車のシガーソケットから電源を確保できる車用DCケーブルも用意されている。現在、避難所などの感染症対策として多くの自治体が「ラップポン」を備蓄しており、自衛隊・警察・消防などのトイレカーや高齢者の自宅介護など、平時での活用も進んでいる。焼却しても有毒ガスを発生させないので、可燃物として廃棄処理できるのも大きなメリットとなる。