2024年 5月28日公開

社会保険労務士コラム

労基法上の管理監督者とは? 管理職との違いを理解しましょう

著者:有馬 美帆(ありま みほ)

誤解の多い労働基準法上の「管理監督者」について、その要件などを詳しくお伝えします。

管理職となった社員を一律に残業代の支給の対象外としてしまう企業が時折見受けられます。これは労働基準法に定められた「管理監督者」に関する誤解が原因です。大きな未払い残業代問題に発展しかねないこの問題と対策について、基本から分かりやすく解説します。

「管理監督者」とは?

労働基準法(以下「労基法」とします)は「事業の種類にかかわらず監督若しくは管理の地位にある者」(以下「管理監督者」とします)については、労働時間、休憩および休日に関する規定を適用しないとしています(労基法第41条第1項第2号)。つまり、管理監督者に該当する労働者であれば、時間外・休日労働に関する割増賃金を支給しなくても、また他の労働者のように休憩を与えなくても違法ではないということになります。

この「管理監督者」と「管理職」は混同されやすく、「管理職には残業代を支払わなくても良い」という考えがまかり通ってしまっている面があります。通常、管理職は課長以上を意味することが多いため、「課長に昇進したら残業代が出なくなって給料が下がってしまった」という悩みや嘆きがネット上で散見されたりもします。

しかし、「労基法上の管理監督者」と「管理職」は全く別の概念なのです。

管理監督者と管理職の違いとは?

 労基法上の管理監督者管理職
定義事業の種類にかかわらず監督若しくは管理の地位にある者(労基法第41条第1項第2号)法的な定義なし
要件(1)労務管理上、経営者と一体的な立場にあること
(2)労働時間の管理を受けていないこと
(3)地位にふさわしい待遇を受けていること
一般的には「課長」以上の役職者
(企業の自由裁量)
効果労基法の労働時間、休憩および休日に関する規定の適用除外・残業代支給の対象外にすると違法の可能性あり
・労働組合加入の対象外