2025年 2月25日公開

社会保険労務士コラム

「女性活躍推進」のための法令遵守と職場風土づくりとは?

著者:有馬 美帆(ありま みほ)

女性活躍推進のポイントを法令遵守と職場風土づくりの両面から解説します。

2025年は、男女雇用機会均等法が1985年に制定されてから40周年を迎えます。また、女性活躍推進法制定10周年の年でもあります。この記念すべき年にあたって、企業が女性活躍推進に取り組む際に注意すべき点を、法令遵守と職場風土づくりの両面から解説します。

女性活躍推進に関するコンプライアンス(法令遵守)

政府が2024年6月に発表した「女性活躍・男女共同参画の重点方針2024(女性版骨太の方針)」の冒頭に「企業等における女性活躍の一層の推進」が位置づけられています。今回は企業が「女性活躍推進」のために求められる対応に関する基礎知識を分かりやすくお伝えします。

女性活躍推進のためには法令遵守ももちろん欠かせませんが、それに加えて女性が活躍しやすい職場風土づくりも求められます。これは法令の定めに従うだけでは達成できない領域です。そこで今回は、前半で女性活躍推進に関する法令の重要ポイント、後半で女性活躍のための職場風土づくりに関するヒントについてお伝えします。

女性活躍推進に関する法令の概要

男女雇用機会均等法

女性活躍推進の原点ともいえる法律が、1985年に制定された男女雇用機会均等法(以下「均等法」)で、雇用の場における「性別」による差別を禁止する法律です(均等法第2条)。かつては「女性」であることによる差別を禁止する法律でしたが、現在は男女双方を保護するものに改正されています。ただし、「女性労働者にあっては母性を尊重されつつ」とも定められており、女性特有の事情に関する配慮も求めています。均等法が禁止する「性別」による差別は次のとおりで、募集から退職までをカバーしています。

均等法が禁止する「性別」による差別(第5条・第6条)

(1) 募集及び採用

(2) 配置(業務の配分及び権限の付与を含む。)、昇進、降格及び教育訓練

(3) 福利厚生の措置であって厚生労働省令で定めるもの

(4) 職種及び雇用形態の変更

(5) 退職の勧奨、定年及び解雇並びに労働契約の更新

(1)から(5)の中に「賃金」がないことにお気づきになりましたか? そもそも賃金については、労働基準法が「使用者は、労働者が女性であることを理由として、賃金について、男性と差別的取扱いをしてはならない」(同法第4条)と定めており、均等法はそれ以外の差別を禁じるために制定された経緯があるからです。

女性の管理職割合などに関する女性活躍推進法についても後述しますが、均等法の段階ですでに「昇進」に関する差別を禁じていることにご注意ください。さらに、均等法は女性労働者の婚姻、妊娠、出産等を理由とする不利益な取扱いを禁止しています(同法第9条)。

均等法はセクシュアル・ハラスメント(セクハラ)の禁止(同法第11条)、マタニティ・ハラスメント(マタハラ)の禁止(同法第11条の3)も定めています。セクハラおよびマタハラについて「相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備その他の雇用管理上必要な措置」をとることが求められています(同法第11条、第11条の3)。

女性活躍推進法の概要

女性活躍推進法(以下「女活法」)は、女性が職業生活の場で個性と能力を発揮して活躍することを目的とした法律です。女活法が制定された2015年とは、均等法成立から30年も経過している年だということが、女性活躍がなかなか進まないわが国の状況を如実に示しています。