2025年 6月24日公開

社会保険労務士コラム

アルコール(飲酒)に関する諸問題への対策

著者:有馬 美帆(ありま みほ)

従業員のアルコール(飲酒)に関する問題は、コンプライアンス(法令遵守)だけでなく、企業の社会的責任にも関わる重大な問題です。今回は、アルコール(飲酒)に関する諸問題の解説と、就業規則の整備などを通じた対策をわかりやすく解説します。

アルコール(飲酒)に関する問題対策の重要性

アルコール(飲酒)に関する問題は、今も昔も企業の人事労務管理にとって大きなテーマです。2024年(令和6年)には、大手航空会社において機長2人から乗務前の検査でアルコールが検出され、2025年(令和7年)に入ってからも、配達業務を行う大企業で配達員が飲酒運転を行ったことだけでなく、運行前の飲酒の有無を確認する点呼を怠っていたことが判明しました。どちらも、人の生命・身体に重大な影響を及ぼしかねない業務に関する事件です。同時に企業の社会的信用にも関わる問題でもあります。そこで今回は、アルコール(飲酒)に関する諸問題の対策について、お伝えすることとします。

アルコール(飲酒)に関する問題の類型

アルコール(飲酒)に関する問題には多様なものがありますが、まずは「どの場面」で生じるかについて整理してみますと、次のように大別できます。

1業務上で生じたアルコール(飲酒)問題
2通勤途上で生じたアルコール(飲酒)問題
3私生活上でのアルコール(飲酒)問題
4その他のアルコール(飲酒)問題

1の業務上とは、労働時間(使用者の指揮命令下にある時間)中の行為を意味しますが、取引先での接待なども、それが業務性を有すれば含まれることになります。冒頭の運航・運転に関する不祥事の例はこのケースに該当します。2の通勤途上は、労働時間そのものではありませんが、例えば自動車通勤をしている従業員が通勤中に飲酒運転をしてしまったような場合などは、業務にも重大な影響を及ぼす可能性があります。3の私生活上の飲酒行為はプライベートな時間の行為ですので、本来ならば企業の管理外となるはずです。ですが、たとえば二日酔いになって出勤してくるような事態や私生活における飲酒運転などを防ぐ意味でも、対策は必要不可欠です。4のその他ですが、これは業務なのかそれ以外なのか判然としないケースなどです。たとえば、上司が労働時間後にお酒の席に誘った部下に対して暴言を吐いてしまったような場合が当てはまります。このようなケースについても、企業内の人間関係の延長線上にあるわけですから、企業として全く無関係ではいられません。

アルコール(飲酒)問題対策は就業規則の整備から

次に、実際に「どの事例」が問題となるか主なものについて整理してみます。

1始業時刻前の飲酒による業務への悪影響(二日酔い等)
2労働時間中の飲酒