2024年 4月16日公開

有識者に聞く 今日から始める経営改革

2024年だけで終わらない「2024年問題」(後編)

企画・編集:JBpress

持続可能かどうか。その点を深く考えた対策が不可欠

2024年4月1日にスタートしたトラックドライバーの残業時間の上限規制。人手不足が深刻化する中で始まった法規制を受け、企業のさまざまな取り組みがスタートしている。2024年問題の解決に向けて、企業はどのような考え方の下、どのような形で課題解決のための取り組みを進めていくべきなのか。立教大学経済学部教授の首藤若菜氏に話を聞いた。

この記事は全2回シリーズの後編です。前編は下記よりご覧ください。

DXの推進やテクノロジーの活用で解決できることは多い

――運送・物流業界の企業が生産性を高め、残業時間を減らしていくためにはどのような対策が有効なのでしょうか。

首藤 輸送の出発地点と到着地点が変わらない中で運ぶ時間を短縮しようとする場合、改善のための方法はいくつかあります。

できるだけ高速道路を利用して早く到着させることも方法の一つですし、既に高速道路を使っているなら、荷役や荷待ちの時間をできるだけ減らす工夫をすることで運ぶ時間を大幅に短縮できます。

それを実現するためにも、手積みに比べて荷役を効率化できるフォークリフトを使い、パレットに荷物をうまくまとめるような工夫をしていく必要があります。

荷待ちについても、荷主が同じ時間にトラックドライバーに招集をかけるのではなく、時間をずらして招集するだけで、ドライバーの拘束時間は改善されるはずです。

あとは荷主側が考え方を変えることも重要です。もし、古くからのやり方に疑問を持たず、「待たせるのが当たり前」になっているのであれば、待たされる側の立場になって考え、そこにどれだけの時間や労力のムダが発生しているのかを可視化することが大事だと思います。

――課題の中にはDXの推進やAIなどを使うことで解決できるものもありそうです。この領域で、テクノロジーをどう活用するべきだとお考えですか。

首藤 ITはドライバーの労働時間の削減に大きく貢献できると期待しています。

例えば、先ほどお話しした荷待ちの問題は、呼び出しシステムを使うことで改善できると思いますし、中継輸送の際のマッチングなどは、まさにAIが得意とするところでしょう。

また、運送・物流の現場では、出荷の繁閑差(出荷が多い時期と少ない時期の物量の差)がドライバーの労働時間に大きく影響しているので、データを活用した生産予測や需要予測も役立つと思います。

一方で、昨今、注目されている自動運転は、将来的には労働時間削減の助けになると思いますが、現状では道路上への専用レーンの設置や法整備などが課題となっており、実際に効果が出てくるのは少し先になると考えています。

2024年問題に取り組むことが自社の持続可能性を高める