この記事は全2回シリーズの後編です。前編は下記よりご覧ください。
DX推進で経営者が最初にすべきこと
――中小企業がDXを進める際には、どこからどう着手すれば良いでしょうか。岡田先生のご意見をお聞かせください。
岡田 DXを進める際には、まず「自社の理想像」、つまり「ありたい姿」を明確にし、それに基づいて現状を把握し、何が足りないのか、どの部分にギャップがあるのかを分析することが重要です。このギャップを埋める方法を考える際に、どのようにITを活用できるかを検討することが、DXの出発点になります。
絶対に避けなければならないのは、「IT導入ありき」で進めてしまうことです。経営者がIT化を目的にしてしまうと、本来の目標を見失いかねません。あくまでこれらは手段であり、目的にするべきではないのです。
取り組む際にはまず、自社でできるところから始めることも大切です。例えば、営業部門が「自社の認知度が低い」と感じているのであれば、「会社の認知度を高める」という目的を明確にし、そのためにWebサイトを作ったり、SNSを活用したりするところから始めるのも一つの方法です。
――DX推進においては経営者の意識改革が最も重要ですが、経営者はどのように考え方を変え、どのようにDXに関与すべきでしょうか。
岡田 経営者は「会社をより良いものにする」という強い意志を持ち、そのために「会社の理想像」を常に描き続けることが重要です。そして、その理想にどうやって到達するかを常に考える姿勢が必要です。
「IT導入ありき」の考え方は絶対に避ける。むしろ、パーパス経営(自社の存在意義を明確にし、定めた存在意義に従って行う経営)に近い発想が必要。
出典:岡田浩一氏提供の資料を基にJapan Innovation Review編集部で作成
例えば、コロナ禍では、リモート会議が普及し、多くの企業が出張コストを削減できたことを実感しています。しかし、単にコスト削減で終わらせるのではなく、結果的に生まれた社員の時間や余力を、どのように会社の目標達成に活用できるかを考えることがDXの本質です。こうした発想こそ、DXを成功に導くカギになります。
経営者がDXに取り組む際の指針として、経済産業省がまとめた「デジタルガバナンス・コード」を活用することをおすすめします。このガイドラインに沿って進めることで、変化する社会の中で、企業がどう生き残り、成長していくべきかが明確になっていくでしょう。
DXを進める際の注意点
――中小企業は「人材がいない」「予算がない」という課題に直面していますが、こうした問題をどのように解決すれば良いでしょうか。