この記事は全2回シリーズの後編です。前編は下記よりご覧ください。
パートナー探しは基準の明確化と情報発信から
――海外展開を進める上で重要なパートナー探しや、パートナーとの関係構築はどのように進めればよいのでしょうか。
丹下 中小企業にとって、自社単独で販路を切り開くのは容易ではなく、信頼できる現地企業との協業が、販路拡大の成否を左右する要となります。
パートナー探しで重要なのは、戦略段階からパートナー選定の基準を明確にすることです。例えば、自社がファミリービジネスである場合、同様に家族経営の企業と組んだ方が価値観を共有しやすいといった判断軸が挙げられます。また、法令順守やコンプライアンスに対する姿勢も国や企業ごとに異なるため、事前に基準を設定することが求められます。
次に、自社を知ってもらうための情報発信について、複数の手段を並行して実施することです。海外からの直接的なアプローチを待つだけではなく、自社サイトでの情報発信や国際展示会への出展、支援機関を通じたマッチングなど、さまざまなチャネルを駆使して可能性を広げることが重要です。こうした地道な情報発信が、優良なパートナーとの出会いを引き寄せる土壌となります。
パートナー企業との関係構築においては、契約交渉時に役割分担を明確にするのが基本です。どちらがどの業務を担うのかを丁寧にすり合わせ、互いに無理なく責任を果たせる体制を整えることが信頼関係の第一歩となります。また、Win-Winの関係性を維持するためには、定期的な対話や相互理解を深める姿勢が欠かせません。
さらに注意すべきなのが、技術流出への対策です。自社の核となる技術は国内で完結させたり、輸出にとどめたりするなど、リスクを極力抑える工夫が求められます。例えば、あるラーメンのチェーン店では、スープの核となる部分は国内で生産し、それ以外を現地に任せるといった形で分業を工夫して味を守っています。
最後に、立ち上げ時の現地での対応もポイントです。パートナー企業に任せきりにせず、協力しながらビジネスを展開していくべきでしょう。丁寧な支援や、月次での売り上げ・進捗の確認など、中長期的な視点での関与が、信頼性の高いパートナーシップの鍵となります。

ポイントは、丹下氏が代表を務める法政大学イノベーション・マネジメント研究センター「日本企業における新たな国際化のマネジメントに関する研究会」プロジェクトによる事例研究を基に整理された。
出典:丹下英明・足立裕介・奥山雅之編著『中小企業の新たな国際化とマネジメント』(同友館)よりJapan Innovation Review編集部で作成
――海外展開に当たり、中小企業ならではのメリットやデメリットはありますか。