2012年 3月

専門家がアドバイス なるほど!経理・給与

「社員採用!知っておきたい手続き&基本知識」の巻

テキスト/梅原光彦 イラスト/ 今井ヨージ

従業員を採用するときには、社会保険や雇用保険、税などの手続きが必要です。書類の提出先は年金事務所、ハローワーク、税務署など。期限を守らないといけない手続きなので、必要事項についてしっかり予習しておきましょう。

「我が社にも久々に新戦力が入ってくるな」と感慨深げにつぶやいた社長の声を聞き、思わず社長の頭をピシャリとたたく経理ママ。「そ、そやった! こないだ面接した新入社員が入社してくるんやった。経理だけやなくて労務も忙しいなるが」。あせるママに、社会保険労務士の受験経験もある現代知恵蔵君が声をかけた。「やるべき要点を整理して覚えていきましょう。そうすれば、いい春になりますよ。さて……」

1.採用時に確認する情報

まず社員を採用したら、以下の情報(加入手続きに必要な情報)を確認し、必要な書類があれば提出してもらいます。年金事務所への提出手続きによって健康保険証が発行されるので、年金手帳の有無などは特に早めに確認しましょう。

  1. 社員の入社年月日(実際に報酬が発生する日)
  2. 社員の氏名(フリガナ)、住所(郵便番号、フリガナ)、性別、生年月日
  3. 雇用形態(正社員、パートタイム労働者、契約社員、役員など)
  4. 給与形態(月給、時給等)と金額
  5. 被扶養者の有無と氏名(フリガナ)、続柄、性別、生年月日、同居の有無、収入(仕送り含む)
  6. 年金手帳の所持の有無、年金受給の有無など

2.社員が入社したときの社会保険等の手続

社員を採用した場合、社会保険や雇用保険などの手続きがあります。受け入れ準備であわてないために、必要事項についてあらかじめリストアップしておきましょう。

●社会保険関係

  1. 健康保険・厚生年金保険被保険者資格取得届
  2. 健康保険被扶養者(異動)届
  3. 年金額の改定通知書のコピーまたは年金証書
  4. 国民年金第3号被保険者資格取得・種別変更・種別確認(3号該当)届

●労働保険関係

  1. 雇用保険被保険者資格取得届
  2. 賃金台帳
  3. 雇用保険被保険者証
  4. 労働者名簿
  5. 雇入通知書(パートタイマーの場合)
  6. 出勤簿(タイムカード)
  7. 労働条件通知書

●所得税・住民税関係

  1. 給与所得者の扶養控除等(異動)申告書
  2. 給与所得・退職所得に対する所得税源泉徴収簿
  3. 給与支払報告・特別徴収にかかる給与所得者異動届出書

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2-1.社会保険関係

仕事以外で社員が病気になったときや、定年退職後の生活を保障することなどを目的としているのが社会保険です。新規に社員を雇用したときは、健康保険・厚生年金保険の被保険者としての資格取得届が必要になります。

1 健康保険・厚生年金保険被保険者資格取得届

社員を雇用した日から5日以内に年金事務所または健康保険組合・厚生年金基金に提出します。この届けを出すことによって、新たに雇用された社員が健康保険および厚生年金保険の被保険者となります。保険証の発行は全国健康保険協会(協会けんぽ)で行うため、健康保険証が会社に届くまでには10日から2週間ほどかかります。

なお届け出時には、給料月額を記入する必要があります。これは1カ月あたりの報酬額、すなわち通勤費も含めた総支給額となります(当初は見込み額でかまいません)。この金額を元に標準報酬等級月額が決まり、それに応じた保険料の徴収額が決まります。

添付書類
  1. 被扶養者がある場合には「健康保険被扶養者(異動)届」
  2. 定年再雇用の場合は、就業規則の写し・退職辞令の写し・事業主の証明など
  3. 届出が60日以上遅延した場合は、賃金台帳や出勤簿の写し(遅延理由書を求められることもあります)
健康保険証がすぐに必要な場合は?

健康保険証が会社に届くまでには日数がかかりますが、その間でも緊急を要する場合には、「健康保険被保険者資格証明書交付申請書」を年金事務所に提出すると、「健康保険被保険者資格証明書」を即日交付してもらえます。有効期限は20日間ですが、この資格証明書を医療機関に提示すれば、健康保険証を受け取るまで、自己負担額だけで受診できます。

新入社員が被保険者となるのは実際に報酬が発生する日

事実上の使用関係に入った日が被保険者の資格取得の日となります。「事実上の使用関係に入った日」とは、入社の日など報酬が発生する日のことで、必ずしも勤務を始めた日とは限りません。例えば4月1日に採用され、4月15日から勤務を始めたという場合、月給制だと4月1日、日給月給制だと4月15日が資格取得日になります。

試用期間中であっても加入手続きは必要

試用期間中の社員は健康保険法、厚生年金保険法で除外規定している「臨時に使用される人」(日々雇い入れられる人、2月以内の期間を定めて使用される人)には該当しません。従って試用期間であっても、被保険者の加入手続きを行う必要があります。

2 健康保険被扶養者(異動)届

社員に被扶養者(家族など)がいるときは、「健康保険被扶養者(異動)届」を同時に提出(資格取得届に添付)します。被扶養配偶者がいる場合は、「国民年金第3号被保険者関係届書」も添付します。

提出先は年金事務所または健康保険組合。提出期限は5日以内です。被扶養者との「同居」を確認する必要がある場合は住民票が必要なので、該当する社員には早めの準備をお願いしておきましょう。

添付書類
  1. 被扶養者の年齢や関係によって必要な添付書類は異なります(表【1】【2】を参照)
  2. 20~59歳の配偶者の場合は、「健康保険の被扶養者(異動)届」と複写になっている「国民年金第3号被保険者資格取得・種別変更・種別確認(3号該当)届」

被扶養者になれる家族でも同居が条件になることも

「被扶養者になれる家族」とは被保険者の収入により生計を維持している人です。以下の人たちがそれにあたり、被保険者との関係で、同居が条件となることもあります。

(1)被保険者と別居でもよい人

  • 配偶者(内縁を含む)
  • 子、孫および弟妹
  • 父母、祖父母など直系尊属

(2)被保険者と同居していることが条件の人

  • 兄姉、伯叔父母、甥姪などとその配偶者、孫、弟妹の配偶者、配偶者の父母など(1)以外の3親等内の親族
  • 内縁関係の配偶者の父母および子(その配偶者の死後、引き続き同居する場合を含む)

注意! 75歳以上の家族の場合
75歳以上の家族については、後期高齢者医療制度に加入することになっています。従って、健康保険の「扶養」に入れる手続きは必要ありません。

収入がある家族も被扶養者になれる?

被扶養者認定対象者(家族)に収入がある場合は、次の基準で認定が決まります。

(1)年収が130万円未満かどうか
認定対象者(家族)の年収が将来に向かって(注1)130万円未満で、かつ被保険者(社員)の年収の半分未満であれば、原則として被扶養者になれます。また、認定対象者の年収が被保険者の半分以上であっても、130万円未満である場合、被保険者の収入によって生計を維持していると認められれば、被扶養者になることもあります。

  • (注1)「将来に向かって」とは、今後「130万円未満」になるかどうかということです。

(2)別居の場合は仕送り額で判断
被保険者と別居している場合には、認定対象者(家族)の年収が130万円未満で、かつ被保険者からの仕送り額より少ないときに被扶養者になれます。

(3)60歳以上は180万円未満
認定対象者が60歳以上、または障害厚生年金を受けられる程度の障害者の場合には、年収の認定基準の「130万円未満」が「180万円未満」となります。

税法上の扶養にはなれなくても健康保険上では扶養になれる

健康保険の扶養と税法上の扶養とでは、次のように収入要件が違います。税法上の扶養にはなれなくても、健康保険上では扶養になれる場合があるので、金額を確認する必要があります。

  • 健康保険の扶養・・・将来に向かって、年収130万円未満
  • 税法上の扶養・・・年収103万円以下

配偶者が退職したり収入が減少するなどして扶養手続きをとる場合は、今後「130万円未満」になるかどうかで判断されます。ただし、退職して雇用保険の失業給付を日額約3,600円以上受け取る場合は、その間健康保険上の扶養にはなれません。

3 年金額の改定通知書のコピーまたは年金証書

雇い入れた社員が年金受給者の場合、現在の年金受取額が分かるものを資格取得届に添付します。また、70歳以上の人を新規で採用した場合、以下の3条件をすべて満たすときは、「厚生年金保険70歳以上被用者 該当届」もあわせて提出しなければなりません。

  1. 昭和12年4月2日以降の生まれ
  2. 勤務日数および勤務時間ともに、一般社員の4分の3以上
  3. 過去に厚生年金の加入期間がある

4 国民年金第3号被保険者資格取得・種別変更・種別確認(3号該当)届

採用した社員に配偶者がいて、国民年金の第3号被保険者(いわゆるサラリーマンの妻)にあてはまる場合は、その届出をするのも会社の義務です。被扶養者である配偶者が20歳から59歳の場合には届け出る必要があります。

提出期限は5日以内。「健康保険被扶養者(異動)届」と一体となった様式となっているので、あわせて年金事務所に提出できます。年金手帳の配偶者の住所・氏名が結婚前のままのときは、この届出で年金事務所への氏名変更届・住所変更届とすることができます。

添付書類

年金手帳(氏名が旧姓になっている場合)

配偶者の年金手帳を紛失している場合は

「年金手帳再交付申請書」を添付します。この届出書は単票なので、会社控がいる場合は別にコピーを取って『控』を作成し、届出のときに受付印をもらうとよいでしょう。結婚などによって配偶者の氏名や住所が変わっている場合は、旧姓や旧住所を備考欄にメモしておくと手続きがスムーズに進みます。

配偶者が未成年の場合は20歳になる月に注意!

配偶者が未成年の場合は、20歳になったときに「国民年金第3号被保険者」となります。配偶者が20歳になる月に注意して提出してください。

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2-2.労働保険関係

失業したときや、仕事のうえで病気やケガをしたときに、これを保障するのが労働保険の役割です。前者が雇用保険、後者が労働者災害補償保険(労災)で、ほとんどの会社は、これら保険制度に強制的に加入させられています。

1 雇用保険被保険者資格取得届

社員が入社したときにハローワークに提出します。提出期限は雇用した日の翌月10日まで。なお、外国人の場合は雇用保険の取得・喪失手続きの際に、在留資格・在留期間について届け出ることが義務付けられています。就労資格の確認が必要ですので、「外国人登録証明書」などを早めに確認しましょう。

添付書類
  1. 雇用保険適用事業所台帳
  2. 出勤簿(タイムカード)
  3. 雇用契約書、辞令等
前職がある社員で雇用保険被保険者証を紛失しているとき

雇用保険被保険者証を紛失し「雇用保険被保険者番号」が分からないときは、備考欄に前職の会社名や退社年月日などを記載しておけば、ハローワークで調べてくれます。

試用期間中であっても加入手続きは必要

雇用保険と同様に、試用期間中であっても被保険者として扱わなければなりません。

手続き後の書類は本人に渡すか会社で保管する

資格取得の手続きを行うと、以下の書類が発行されます。

(1) 雇用保険資格喪失届
→会社で保管し、社員が退職する際にはこれで資格喪失の届出を行う。

(2) 雇用保険資格取得等確認通知書(事業主通知用)
→会社で保管する。

(3) 雇用保険資格取得等確認等通知書(被保険者用)/雇用保険被保険者証
→被保険者に渡す。

労災保険の手続きは採用時には不要

適用事業所としての届けを最初にしてあれば自動的に労災保険の対象となるので、社員を新たに雇い入れたときに個別の手続きは不要です。

2 賃金台帳

労働基準法で、会社に作成と保存が義務付けられています。被保険者が雇用されたことと雇用された日を証明するために必要な書類として雇用保険被保険者資格取得届に添付します。

3 雇用保険被保険者証

以前ほかの会社に勤務し、雇用保険の被保険者だった場合には、本人から「雇用保険被保険者証」を預かり、雇用保険被保険者資格取得届に添付します。

4 労働者名簿

資格取得手続きに必要な書類として雇用保険被保険者資格取得届に添付します。常時使用する従業員が30人未満の事業所は「従事する業務の種類」については記入不要です。

5 雇入通知書(パートタイマーの場合)

パート採用の場合は、資格取得手続きに必要な書類として雇用保険被保険者資格取得届に添付します。

6 出勤簿(タイムカード)

資格取得手続きに必要な書類として雇用保険被保険者資格取得届に添付します。

7 労働条件通知書

会社と従業員の間で締結するもの。従業員1人につき2通作成し、双方で保管します。

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2-3 所得税・住民税関係

源泉所得税と住民税は会社が毎月給与を支払う際に社員が納めなければならない税を控除して、社員に代わって納めます。これを特別徴収といいます。税の控除手続きは、給与計算の作業の一環でもあります。

1 給与所得者の扶養控除等(異動)申告書

配偶者や扶養親族の状況を確認するための書類です。毎月の給与から控除される源泉徴収税は、配偶者や扶養親族の人数や状況によって金額が違うからです。必ず最初の給与支払日までに従業員に記入してもらい、会社で保管します。
税率には、甲欄(安い税率)と乙欄(高い税率)があり、この申告書は甲欄(安い税率)で計算するために必要な書類です。独身者で扶養親族がいない場合も安い税率(甲欄)で計算するために必要なので、提出してもらってください。この申告書がないと乙欄(高い税率)で計算することになります。

他の会社と掛け持ちで働いている社員の場合は

2社以上で働いている場合は、主な収入がある会社に扶養控除等(異動)申告書を提出して甲欄(安い税率)で税金を計算し、その他に勤める会社では乙欄(高い税率)が適用されることになります。パート社員などの場合、他の会社に勤めている可能性がある人には、主な収入がどちらになるのか確認してください。

パート・アルバイトの場合でも必要?

扶養控除等申告書の提出がないと、たとえ1日アルバイトで5千円の給与でも乙欄での源泉所得税を徴収しないといけなくなるので、パート・アルバイトの人も、扶養している家族がいない人も、提出してもらってください。

所得の見積額は、給与総額ではない

税法上、所得と収入は異なります。収入から経費をひいたものが所得で、給与をもらう人にも一定の経費(給与所得控除)が認められています。収入を給与のみと仮定すると、161万9千円までは65万円を経費として収入からひくことができます。税法上扶養になれるのは103万円までなので、例えば1月から12月までの総収入が103万円の方は、65万円をひいた金額である38万円を「所得」として記入します。

扶養親族になれるのは?

税法上で扶養控除の対象となる適用を受けられるのは次の人です。
(1)「同一生計」の親族(民法でいう6親等内の血族および3親等内の姻族)
* 別居でも、その人の収入で生活しているような場合は生計が同じとみなされます。
(2) その年分の所得が38万円以下

2 給与所得・退職所得に対する所得税源泉徴収簿

最初の給与計算までに会社が作成し、保管します。扶養控除等申告書の内容をここに転記します。

3 給与支払報告・特別徴収にかかる給与所得者異動届出書

前職のある人(中途採用者)が、引き続き住民税の特別徴収を希望した場合は、以前の勤務先から「給与所得者異動届出書」を送付してもらい、その社員の住民税の納付先である市区町村に提出します。

届出書は市区町村のホームページからダウンロードできます。(市区町村により書式が異なります。)

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