2012年10月

専門家がアドバイス なるほど!経理・給与

「高年齢雇用継続給付って?」の巻

テキスト/梅原光彦 イラスト/ 今井ヨージ

60歳超の社員の雇用をサポートするのが、雇用保険の「高年齢雇用継続給付」の制度です。社員が60歳を超え、賃金が減額すると給付金が支給されます。今回は、制度の基本と手続きについてご紹介します。

「こないだ配送担当で中途採用した源さん、大手を定年退職して、うちに来てくれたんやが、給料ダウンやて嘆いてるらしいで」と社長。「うちみたいに小さい会社では十分なことはできん。60過ぎて仕事があるだけでよしとしてもらわんとな」と答える経理ママに、もの知りの現代知恵蔵君が口をはさんだ。「そういう人のための給付制度があるんです……」

1.高年齢雇用継続給付とは?

高齢化社会の進展にともない、定年後、60歳を過ぎても働きたい、という人が増えています。しかし、高齢者の場合、再就職が難しく、就職できても賃金がダウンするのが通常です。そこで登場したのが雇用保険の高年齢継続給付の制度。「高年齢雇用継続基本給付金」と「高年齢再就職給付金」の二つから成っています。中身は同じ雇用保険の継続給付ですが、適用される期間が異なります。

注意!
平成16年1月1日から、60歳到達時の賃金月額証明書の提出義務が廃止され、原則として被保険者が高年齢雇用継続給付の希望を事業主に申し出ないと手続きが行われないという流れとなりました。従って、事業主としては高年齢雇用継続給付の申請に関わらず60歳時点で受給資格の確認を行うことが望ましいといえます。

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2.高年齢雇用継続基本給付金

制度の概要
60歳以降も継続して同一企業に雇用されている60歳以上65歳未満の人に支給される給付金です。給付金は、1回限りではなく、対象月に支払われた賃金総額の最大15%が支給されます。
ただし、支給対象となるのは、賃金が定年前の75%未満に下がり、失業手当(=基本手当)や再就職手当を受け取らず(=すなわち離職せず)に、働いている人に限られます。

2-1.受給条件

  • 雇用保険の被保険者期間が5年以上あること(注1)
  • 賃金(みなし賃金)が60歳到達時賃金の75%未満であること
  • 各月の賃金が344,209円未満であること(注2)
  • 支給対象月の末日まで在籍していること。(注3)
  • (注1) 断続している場合には、間が1年未満で連続していること。被保険者期間が短くて受給条件に満たなかった場合は、期間が5年に達した段階で手続きをとることができます。
  • (注2) 平成24年度の額。この額は毎年8月1日に変更されます。賃金が下がったといっても、これ以上の賃金であれば、そもそも十分な賃金を得ているので高年齢雇用継続給付の支給対象としないということです。
  • (注3) 月の中途で退職(15日付け退職)などの場合は、その月分は支給されません。

みなし賃金とは?
自己都合欠勤等によって賃金が減額された場合、本来支払われたであろう賃金(みなし賃金)を合算して減額率を算定します。実際に支払われた賃金が70%であったとしても、みなし賃金が合算された結果、75%以上となったときは支給されません。

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2-2.受給額・受給期間


60歳時点の賃金が月額30万円だった場合、60歳以後の各月の賃金が15万円に下がったときには、50%に低下したことになるので、1カ月当たりの賃金15万円の15%に相当する額の2万2,500円が支給されます。

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2-3.申請手続き

1)受給資格確認の手続き

社員が60歳に達した日の翌日から支給申請までの間に、「被保険者六十歳到達時等賃金証明書」と「高年齢雇用継続給付受給資格確認票」(注4)をハローワークに提出し、受給資格確認の手続きを行います。
この手続きは、高年齢雇用継続基本給付金と高年齢再就職給付金のいずれにも必要な手続きです。受給資格確認票には「給付の種類」という欄があり、継続基本給付金か再就職給付金かを選択するようになっています。
受給資格が認められると「受給資格確認通知書」が送られてきます。

  • (注4)用紙はどちらもハローワークでもらえます。
提出書類
  • 「高年齢雇用継続給付受給資格確認票・(初回)高年齢雇用継続給付支給申請書」
  • 払渡希望金融機関指定届(注5)
  • (注5)雇用保険の基本手当を受給していて、既に口座指定している場合は、その口座を使用できます。

2)申請

初回の申請

最初に支給を受けようとする支給対象月(注6)の初日から起算して4カ月以内に申請します。申請先は、事業所の所在地を管轄するハローワークです。

  • (注6)受給要件を満たし、給付金支給の対象となった月をいいます。
2回目以降の申請

管轄安定所長が指定する支給申請月中に申請します。次回の申請日は、ハローワークから交付される「高年齢雇用継続給付次回支給申請日指定通知書」に印字されています。

注意!

支給申請書の提出は、初回の支給申請を除いて指定された支給申請月中に行わなければなりません。提出期限を過ぎると、原則として支給が受けられなくなるので注意してください。

提出書類
  • 高年齢雇用継続給付支給申請書
  • 被保険者六十歳到達時等賃金証明書
  • 高年齢雇用継続給付受給資格確認票

初回の支給申請は、「高年齢雇用継続給付受給資格確認票・(初回)高年齢雇用継続給付支給申請書」の用紙を使用します。

添付書類
  • 支給申請書と賃金証明書の記載内容を確認できる書類(労働者名簿、出勤簿、賃金台帳など)
  • 年齢を確認できるもの(運転免許証や住民票など、コピー可)
  • 払渡希望金融機関指定届(通帳のコピー)

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3.高年齢再就職給付金

制度の概要
退職後に雇用保険の失業給付である基本手当(=失業手当)を受給した後(注7)、60歳以降に再就職した60歳以上65歳未満の人に支給されます。ただし、支給を受けられるのは、賃金(注8)が退職前の75%未満に、下がった人に限られています。

  • (注7)支給残日数が100日以上なければいけません。
  • (注8)基本手当の計算の基礎になった賃金日額(=離職票を基に計算した額)の30倍。

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3-1.受給条件

  • 60歳以上65歳未満で再就職したこと
  • 雇用保険の被保険者期間が5年以上あること
  • 再就職後も被保険者であること(注9)
  • 賃金が60歳到達時賃金の75%未満であること
  • 再就職日の前日に基本手当(失業給付)の支給残日数が100日以上あること
  • 再就職手当・早期再就職支援金を受給していないこと
  • 対象月の末日まで在籍していること
  • (注9)1年を超えて引き続き雇用されることが確実であること

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3-2.受給額・受給期間

  • * 再就職日の前日に基本手当の支給残日数が200日以上のときは、再就職日の翌日から2年を経過する日の属する月まで、100日以上200日未満のときは、1年を経過する日の属する月まで。

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3-3.申請手続き

1)受給資格確認の手続き

雇用した日以後、事業所を管轄するハローワークに速やかに提出しなければなりません。

提出書類
  • 「高年齢雇用継続給付受給資格確認票・(初回)高年齢雇用継続給付支給申請書」
  • 払渡希望金融機関指定届(注10)
  • (注10)雇用保険の基本手当を受給していて、既に口座指定している場合は、その口座を使用できます。

2)支給の申請

管轄安定所長が指定する支給申請月の支給申請日に申請します。なお、受給資格の確認を初回の支給申請と同時に行う場合、この手続きは、最初に支給を受けようとする支給対象月(受給要件を満たし、給付金の支給の対象となった月をいいます。)の初日から起算して4カ月以内に行ってください。この場合も2回目以降の支給申請については、管轄安定所長が指定する支給申請月の支給申請日となります。

  • * 公共職業安定所(ハローワーク)から交付される「高年齢雇用継続給付次回支給申請日指定通知書」に印字されています。
提出書類
  • 高年齢雇用継続給付支給申請書
添付書類
  • 支給申請書の記載内容を確認できる書類(賃金台帳、労働者名簿、出勤簿など)
  • 被保険者の年齢が確認できる書類等(運転免許証か住民票の写し。コピーも可)

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