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法人税とは
法人税は、株式会社などの法人が、その事業を通して得た所得の中から支払う国税です。法人にとっての所得とは、確定した決算報告書における「当期利益」のことです。逆に当期損失であった場合には、法人税が課されることはありません。
法人税の計算式
法人税は、納税者である会社が自ら税金を計算し、申告・納付します。これを「申告納税方式」と言います。計算式は次のとおりです。
計算式の解説(足す金額と引く金額)
法人税の計算式には当期利益に足す項目「a.費用にならない金額」と、逆に当期利益から引く項目「b.収益とならない金額」「c.前期以前に生じた青色欠損金」が登場します。なぜ足したり引いたりするのでしょう。以下にその項目の意味を説明します。
a.費用にならない金額
法人税や延滞金などは法人税法上「費用にならない金額」とされています。従って、これらの金額は当期利益に加えてから税額を計算します。「費用にならない金額」にあたる項目には次のようなものがあります。
【法人税および法人住民税】
法人税の確定納税分や中間納税の支払いは、損益計算書上は費用として計上されています。けれども、これらの支払税金は税法上の費用にはなりません。前期の法人税は前期の利益にかかった税金ですから、基本的に当期の利益とは全く関係なく、これを費用にするのはおかしいということになります。
【延滞金・加算税】
税金の支払いが遅れたときや、税務調査で指摘され修正申告を提出したときに支払うペナルティーもまた税法上の費用にはなりません。納税が遅れたこと、過少に税金を支払ったというのは会社に非のあること。これらが控除されるのであれば延滞などを奨励することになりかねません。
【過大な役員報酬】
小さな会社では株主と役員が同一の場合がほとんどです。本来であれば株主が配当余剰金と留保余剰金のバランスを見て役員報酬の総額を決定するものですが、小さな会社ではそのチェック機能が働かず、役員報酬が過大になりがちです。
過大かどうかについては、一般的な基準があるわけではありません。あくまでも会社の経営実態から見て多すぎるか否かで判断されます。通常は利益があれば、法人税を支払って、株主にも還元しなければなりません。そうした余力がないのに役員報酬を支払うということは常識的にもおかしな話で、このため過大な役員報酬は費用として認められません。
同様に、過大な退職金も費用にあたりません。ただし、支払額の根拠となる退職金の計算方式が定められている場合は費用として認められます。逆に、そうした客観的な定めがなく、役員が親族か親族でないかだけで金額が左右されるようであれば過大な退職金とみなされます。
【役員賞与】
小さい会社で役員賞与を認めてしまうと、法人税を支払いたくないために、利益が出たらすべて役員に賞与で支払ってしまうという法人が続出してしかねません。このため役員賞与は、原則として費用とは認められていません。
【寄附金】
役員賞与と同様に、寄附金を費用として認めてしまうと、利益相当額を寄附することで法人税逃れをする法人が出てきます。従って寄附金も、原則として費用とは認められていません。ただし、当期利益や資本金の額により寄附金の一部は費用として認めています。
なお、寄附金は次の3区分に分類して計算します。
- 国や地方公共団体に対する寄附、商工会議所等を経由する東日本大震災の指定寄附
→全額経費となります。 - 特に公益性の高い団体(日本赤十字社、認定NPO法人等)に対するもの
→下記の損金算入限度額までは経費となり、超える金額は下記の「3その他の寄附金」に含めて再計算します。 - 3.その他の寄附金
→下記の限度額を超える部分が費用とならない金額となります。
b.収益とならない金額
受取配当金、税金の還付金などは法人税法上「収益とならない金額」とされています。従って、これらの金額は当期利益から除外して税額を計算します。「収益とならない金額」にあたる項目には次のようなものがあります。
【受取配当金】
株の配当金は、配当元の会社で法人税を納めた後の配当余剰金の範囲で支払われるものです。従って、株主である法人が受け取った配当金は、その全額または一部(注)を収益として認識しなくてもよいとされています。
(注)100%子会社が配当元の場合、そこから受け取った配当金は全額収益となりません。それ以外の場合は寄附金と同様に、複雑な算式で計算します。
【法人税等の還付金】
前述のとおり、法人税などの支払税金は支払時に費用とならないため、これらが還付された場合も収益とはなりません。
c.前期以前に生じた青色欠損金
青色申告をしている法人(注)は、当期に利益が生じた場合には、前期以前に生じた欠損金(いわゆる「赤字」の部分)を繰り越して当期利益から控除することができます。
(注)資本金の額が1億円以下で、資本金の額が5億円以上の法人の100%子会社でない法人
【欠損金の繰越控除制度の概要(中小法人の場合)】
中小法人の場合、所得金額の全額を欠損金の控除にあてることができます(大企業は8割まで)、繰越期間は9年と定められています。控除を受けるには欠損金発生年度の帳簿書類を保存していなければなりません。
【中小法人とそれ以外で異なる繰越控除】
下の表のように、前期以前に生じた青色欠損金が600万円あったとすると、翌期への繰越額が中小法人とそれ以外の法人では異なります。
| 中小法人の場合 | 中小法人以外の場合 |
---|
控除前所得金額 | 300 | 300 |
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欠損金控除額 | △300 | △240 |
---|
控除後所得金額 | 0 | 60 |
---|
翌期繰越欠損金 | 300 | 360 |
---|
(単位:万円)
【欠損金の繰越期間(3月決算法人の場合)】
青色申告をしている法人が一時期、何らかの理由で白色申告に変わった場合(注)、その時期に生じた欠損金は青色申告に戻ってからも控除はできません。ただし、それ以前の欠損金は控除できます。
(注)いったん白色申告になると原則2年間は白色申告の期間が続きます。
d.法人税率
一般的な企業の場合、税率は下の表のとおりです。
【法人税率】
区分 | 税率 |
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中小法人 | 年800万円以下の部分 | 15% |
---|
年800万円超の部分 | 25.5% |
中小法人以外の法人 | 25.5% |
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法人復興特別税とは
法人復興特別税は、東日本大震災の復興財源を負担するために2012年度から導入(注)されました。利益に応じて課せられる法人税額に上乗せして納めるものです。
(注)当初は2015年度末まで3年間続けられる予定でしたが、景気回復を支えるため、1年間前倒しで廃止されることになりました。
法人復興特別税の計算式
復興法人税の計算式は次のとおりシンプルなものです。
復興特別法人税の額 = 法人税額× 10%
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法人税と法人復興特別税の申告と納付
確定申告の申告期限
事業年度末の翌日から2カ月以内(延長申請をしている場合には3カ月以内)に所轄する税務署に対して提出しなければいけません。
税の納付期限
事業年度末の翌日から2カ月以内に銀行振込等で納税をしなければいけません。期限後になってしまった場合には延滞金等のペナルティーが発生することになります。
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その他、法人住民税、法人事業税、地方法人特別税について
法人住民税等については法人税等と同様に一定の税率を課税して計算します(下記リンク参照)。法人税等と同じく当期利益が生じない場合には法人住民税等は課税されません。
2014年4月号「所変われば税率も変わる?」の巻
法人住民税には、当期利益に関係なく資本金および従業員数により生じる法人均等割額の規定があります。どんな赤字の会社であっても年間最低70,000円の法人均等割額は発生します。
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