2015年 3月 1日公開

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「税務調査がやってきた! vol.3 修正申告と更正請求」の巻

テキスト: 梅原光彦 イラスト: 今井ヨージ

第1回は「税務調査の流れ」を、第2回は「指摘事項の傾向と対策」ということで、税務調査の実際について紹介してきました。今回は、税務調査後の修正申告と更正請求について説明します。

「税務調査がやってきた! vol.3 修正申告と更正請求」の巻

指摘事項があるときは

前回までのおさらいから始めましょう。
税務調査の終盤には調査官から指摘内容のまとめがあります。
指摘事項(注)がなければ、調査官から「更正決定等をすべきと認められない」旨の通知書面を受け取り、これで税務調査は終了となります。
逆に指摘事項があるとき、ここから今回のテーマ「修正申告」「更正請求」になるのですが、これ以降の流れは下のチャートのようになります。

(注)会社の経理上、解釈ミス・計算ミス・不正などがあったことにより税金が本来より少なく(または多く)計算されている、という税務署からの問題点の指摘のこと

税務調査の流れをまとめた図

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指摘事項を受けるときは

指摘事項は調査終了後すぐに提示されることが多いのですが、個々の事情により後日になる場合もあります。指摘事項があった場合は、会社側として意見を述べます。受け入れるべきところは受け入れ、主張すべきところは主張することになります。

注意(1)

面談で調査官が指摘した事項について、指摘の基になる資料のコピーを取っておくとよいでしょう。もちろん原本は社内にあるはずなのですが、あらためて探しだすとなると手間がかかるし、コピーがあれば、修正申告書の作成がスムーズに運びます。通常の場合、ここで言う「基になる資料」とは、領収書・請求書・総勘定元帳・契約書等のことです。

注意(2)

指摘事項について説明を受けて納得できない事由があれば、指摘の根拠を聞きましょう。根拠となる法令や慣例などがあるはずです。

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指摘事項に納得できるか否か

当然ながら税務署の指摘事項に納得できる場合、できない場合、それぞれで対応は異なります。

指摘事項に納得できる場合

修正申告書を提出し、追加の税金を納付します。納得していないのに、その場の成り行きでうっかり修正申告書を提出すると、その後不服申し立て等はできません。修正申告書は納得のうえ提出しましょう。

指摘事項に納得できない場合

納得できない場合にはその旨を調査官に申し述べます。これを受けて、税務署長が「更正」の処分を行います。更正処分とは、税務署が指摘事項について計算し、本来の申告すべき税額を示した「更正通知書」を会社(納税者)に交付することです。通知書を受けて会社側は2カ月以内に不服申し立てを税務署に行います。

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修正申告とは

修正申告とは

確定申告書を提出したあとでも、納税者の意思により、正しい課税標準または税額を計算し直して「修正申告書」を提出することができます。このことを修正申告(注)と言います。

(注)指摘事項のうち申告等をした税額等が「実際より少なかったとき」に正しい額に修正するために行う申告が修正申告です。逆に「実際より多かったとき」(還付を求めるとき)には更正の請求を行います。

修正申告ができる場合

修正申告書は、自ら誤りを見つけて提出する場合もあれば、税務調査を受けて提出する場合もあります。修正申告ができるのは以下の場合です。

  1. 納税申告書に記載した納付税額に不足があるとき
  2. 納税申告書に記載した欠損金額が過大であるとき
  3. 納税申告書に記載した還付金額が過大であるとき
  4. 納税申告書に納付税額を記載しなかった場合で納付すべき税額があるとき

修正申告に伴う加算税・延滞金

1.税務署等の調査を受けたあとで修正申告をしたり、更正を受けたりすると、新たに納めることになる税額の過少申告加算税等がかかる場合があります。

<加算税の内容>

確定申告の
提出有無
隠蔽仮装
の事実
加算税
の内容
事由加算税
の税率
期限内に申告書を提出している修正の事実が隠蔽(いんぺい)または仮装でない場合過少申告加算税
追加税額が生じた場合に課税される附帯税
税務署の調査を受ける前に自主的に修正申告をした場合 なし
税務署の調査を受けたあとに修正申告の提出または更正を受けた場合追徴税額のうち追徴税額と50万円とのいずれか多い金額までの部分10%
追徴税額のうち追徴税額と50万円とのいずれか多い金額を超える場合にはその超過部分15%
修正の事実が隠蔽または仮装である場合重加算税
隠蔽または仮装行為に対して課税される附帯税
税務署の調査を受けたあとに修正申告の提出または更正を受けた場合 35%
期限内に申告書を提出していない事実が隠蔽または仮装でない場合無申告加算税
納付すべき税額があった場合に課税される附帯税
税務署の調査を受ける前に自主的に修正申告をした場合 5%
税務署の調査を受けたあとに期限後申告の提出または決定等を受けた場合本来の納税額のうち50万円までの部分15%
本来の納税額のうち50万円を超える超過部分20%
事実が隠蔽(いんぺい)または仮装である場合重加算税
隠蔽または仮装行為に対して課税される附帯税
税務署の調査を受けたあとに期限後申告の提出または決定等を受けた場合。 40%

2.修正申告によって新たに納付することになった税額を納めるときは、法定納期限の翌日から納付日までの期間について、延滞税がかかる場合があります。

<延滞税の内容>

延滞税の内容延滞税
法定納期限までに税金を納付しなかった場合に課税される附帯税
事由納期限までの期間および納期限の翌日から2月を経過する日までの期間については、年「7.3%」と「特例基準割合+1%」のいずれか低い割合を適用する。平成27年度の特例基準割合は1.8%と定められています。納期限の翌日から2月を経過する日の翌日以後については、年「14.6%」と「特例基準割合+7.3%」のいずれか低い割合を適用することとなり平成26年度の特例基準割合は1.8%と定められています。
法定納期限までに完納しない場合。
延滞税の税率2.8%9.1%

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更正の請求とは

指摘事項のうち申告等をした税額等が実際より多かったときに、税務署に対して、正しい額に訂正することを求める手続きです。主には還付される税金が少な過ぎた場合に、納税者の側から更正の請求を行います。

更正の請求ができる期間

原則として法定申告期限から5年以内に限り行うことができます。

ただし、課税標準または税額等の基礎となった事実に関する訴えについての判決等があった場合は、法定申告期限から5年経過後であっても、事実が生じた日の翌日から2カ月以内であれば更正の請求を行うことができます。

更正の請求ができる場合

原則として法定申告期限から5年以内に限り行うことができます。

更正の請求は、以下の場合に、更正の請求書を提出することによって行うことができます。

  1. 納税申告書に記載した納付税額が過大であるとき
  2. 納税申告書に記載した欠損金額が過少であるとき
  3. 納税申告書に記載した還付金額が過少であるとき

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更正に納得できるか否か

更正とは

更正とは税務署等が課税標準または税額等を計算し行う処分を言います。更正の内容としては、税金を払い過ぎているので還付するという場合と、逆に不足しているので追加で納税しなさいという場合の二つのパターンがあります。

ここでも税務署の更正の内容に納得できる場合、できない場合でそれぞれ対応は異なります。

更正に納得できる場合

税務署が計算した更正通知書の金額を納税して終了となります。

更正に納得できない場合(不服がある場合)

納税者は、更正の結果に不服がある場合は、税務署長等に対して異議申し立てをしたり、国税不服審判所長に対して審査請求をしたりすることができます。

更正の内容に不服がある場合の流れをまとめた図

更正の内容に不服があるとき

以下のような救済制度が設けられています。

Step 1 税務署長等に異議申し立て

税務調査の結果、税務署長等が行った更正処分に不服がある場合には、一定の場合を除き納税者は、その処分をした税務署長等に異議の申し立てをすることができます。
異議申し立てができるのは、処分があったことを知った日の翌日から2カ月以内が期限となっています。

Step 2 国税不服審判所長に審査請求

異議申し立ての結果としての決定に、なお不服がある場合などは、一定の場合を除き、国税不服審判所長に審査請求をすることができます。
なお、青色申告書についての更正に不服がある場合には、税務署長等に対して異議申し立てを経ないで直接審査請求をすることもできます。
審査請求ができるのは、異議決定書謄本の送達があった日の翌日から1カ月以内を期限とします。(異議申し立てを経ない場合は、処分があったことを知った日の翌日から2カ月以内)

Step 3 裁判所に訴訟の提起

審査請求の裁決に不服がある場合には、裁判所に対し、その処分の取り消しを求める訴えを提起することができます。
提起ができるのは、裁決があったことを知った日から6カ月以内が期限となっています。

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