2015年 9月 1日公開

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「マイナンバー対応講座(入門編)」の巻

テキスト: 梅原光彦 イラスト: 今井ヨージ

今年(平成27年)10月からマイナンバー(通知カード)が住民票の住所に簡易書留で送付され、来年(平成28年)1月から順次、その利用が始まります。そこで今回は、マイナンバーについて、特にそれを利用・管理しなければならない事業者の立場から解説します。

「マイナンバー対応講座(入門編)」の巻

マイナンバー制度の基本

マイナンバー制度とは

「マイナンバー制度」は通称です。正式には「行政手続きにおける特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律」(マイナンバー法)に基づく「社会保障・税番号制度」と言います。

マイナンバー制度により、住民票を有する全ての国民に12桁の番号が振られ、この番号を照会することで複数の機関に存在する個人の情報が同一人の情報であることを確認できるようになります。その目的は、「公平・公正な社会の実現」「行政の効率化」「国民の利便性の向上」の実現にあります。

また法人にも、一法人に一つの法人番号(13桁)が指定されます。法人番号は、利用範囲の限定がされておらず誰でも自由に使えるものとなります。なお、法人の名称や所在地とともに法人番号を検索できるシステムが導入される予定となっています。

利用分野

社会保障、税、災害対策の行政の三分野で利用されます(注)。
民間事業者はそのうち、社会保険と税の手続きでマイナンバー(個人番号)を使います。

(注)将来的には、医療や預金など利用できる分野は広がっていくと考えられます。

<マイナンバーの利用分野>

マイナンバーの利用分野を示した図

内閣官房マイナンバー社会保障・税番号制度Webサイト「マイナンバー 社会保障・税番号制度 民間事業者の対応(PDF)」3ページより。

内閣官房マイナンバー社会保障・税番号制度Webサイト「マイナンバー 社会保障・税番号制度 民間事業者の対応(PDF)」

利用(対応)事業者

パートやアルバイトを含む従業員を雇用する全ての民間事業者が利用することになります。企業だけでなく個人事業主も同様です。マイナンバー法では、平成28年以降、全ての事業者は税や社会保障の手続きなどで、マイナンバー制度に対応する義務があるとされています。

利用開始

利用開始は平成28年1月以降です。

雇用保険・労災保険の手続きでは

平成28年1月以降、雇用保険の取得や喪失の手続き、労災保険の給付申請等の際にはマイナンバーの記載が必要となります。

税の手続きでは

主に平成28年分として申告する手続きからの利用になりますが、平成28年1月以降の退職者に交付する源泉徴収票にはマイナンバーの記載が必要となります。

健康保険・厚生年金の手続きでは

平成29年1月以降の利用となります。

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マイナンバーの取得

マイナンバーの取得開始

税務・社会保険の手続きを行うにはマイナンバーが必須となります。そのため従業員や取引先からマイナンバーを取得する必要があります(注)。「取得」とは、マイナンバーを本人から申告してもらうことを言います。マイナンバーの取得は、平成27年10月以降、通知が届き次第、始めることが可能になります。

(注)従業員の扶養家族についても取得が必要な場合があります。

短期のパート・アルバイト、有識者への講演や原稿に対する報酬の支払先が個人の場合は、平成28年1月以降、マイナンバーの取得が必要になります。

取得に当たっての注意

マイナンバー取得の段階で、法律上しなければならないことは、以下の二つです。

【a.利用目的の特定・通知】

「源泉徴収票作成事務」「健康保険・厚生年金保険加入事務」など、マイナンバーを取得する目的をあらかじめ特定し、次に、その利用目的を本人に通知することが原則となっています。

通知の仕方は、社内LANによる本人へのメール通知、書面の提示または送付、就業規則への明記などが考えられます。

【b.本人確認】

なりすまし防止のためにマイナンバーの確認と身元の確認をしなければなりません。本人の通知カードで番号を確認し、運転免許証やパスポートなど顔写真が入った証明書で身元を確認するという方法が適切とされています。

<番号確認と身元確認>

番号確認と身元確認の解説図

内閣官房マイナンバー社会保障・税番号制度Webサイト「マイナンバー 社会保障・税番号制度 民間事業者の対応(PDF)」24ページより。

確認は、本人と対面して行う以外に、証明書のコピーを郵送してもらうこと、オンラインや電話でも可能です。詳しくは以下の国税庁のサイト(29ページ以降) で具体例が確認できます。

国税庁Webサイト:国税分野における番号法に基づく本人確認方法(PDF)

本人確認済みの場合

本人確認は、マイナンバーの提供を受けるつど行わなければなりません。ただし、2回目以降の番号確認は、初回に運転免許証等によってきちんと本人確認を行っており、個人番号カードや通知カードなどの提供を受けることが困難であれば、初回に本人確認を行って取得したマイナンバーの記録と照合する方法でもかまいません。

個人番号カードがある場合

個人番号カード(注)があれば、その1枚だけでマイナンバーの確認と身元の確認が可能です。

(注)個人番号カードは、平成28年1月以降、市町村窓口で本人確認を行ったうえで交付を受けることができます。

<個人番号カードの様式>

個人番号カードの様式

個人番号カードの様式。内閣官房マイナンバー社会保障・税番号制度Webサイト「マイナンバー 社会保障・税番号制度 民間事業者の対応(PDF)」6ページより。

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マイナンバーの管理

マイナンバー法では、マイナンバーを扱う事業者に個人情報保護法よりも厳しい保護措置を求めています。従ってマイナンバーを含む個人情報は、従来の個人情報よりも厳格に取り扱う必要があります。注意点は以下のとおりです。

事務の範囲と取扱者を決める

マイナンバーを扱う事務の範囲を明確にして、事務取扱担当者を特定します。

従業員に制度を周知する

従業員に対して、社内報や掲示板等で、マイナンバー制度についての情報を提供します。従業員がマイナンバーの重要性を理解し、通知カードを紛失したりしないよう周知します。

特に徹底したいのは次の3点です。

  • 従業員個々に通知カードが平成27年10月に届くので必ず受け取ること
  • 簡易書留で送付されるので不在の場合は郵便局に受け取りに行く必要があること
  • 住民登録の確認をする(注)

(注)住民票の住所に居住していない場合や、扶養家族と別居している場合など、速やかに受け取れないケースも考えられます。正しく住民登録されているか確認し、必要に応じて住所変更などの手続きを行うよう促してください。

厳しい管理体制を整える

マイナンバーを含む従業員の個人情報は、取扱担当者以外の目に触れることがないように管理を厳重にします。

パソコンで管理している場合

ウイルス対策ソフトの導入・更新、アクセスパスワードの設定などを行うこと。

紙などで帳簿等を管理している場合

鍵付きの棚や引き出しに保管するなど情報漏えいがないよう徹底すること。

就業規則の変更や取扱規程などの策定

従業員がマイナンバーを報告する義務やその手続き、マイナンバーを漏えいさせた場合に懲戒処分の対象となることなどを就業規則に規定する必要があります。
また、特定個人情報(マイナンバーが含まれた個人情報)等の適正な取り扱いを確保するための、取扱規程等の策定を行う必要があります。

従業員への研修等の実施

物理的な管理体制の整備、規程の作成等を行うだけでなく、全従業員を対象に、マイナンバーを安全に管理するため教育の実施や正しい情報の周知も重要となります。

外部委託先との契約の見直し

社内のマイナンバーを取り扱う事務を社会保険労務士や税理士に委託している場合には、委託先の必要かつ適切な監督が求められます。そのため、委託先との契約内容の変更が必要となります。

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マイナンバーの使用

民間事業者は従業員と外注先のマイナンバーを使って、「源泉徴収票作成事務」「健康保険・厚生年金保険加入事務」などに必要な手続きを行います。

従業員について

社会保障と税の二つの分野でマイナンバーを使います。

【社会保障分野】

健康保険、厚生年金、雇用保険といった社会保険の手続きでマイナンバーを記載します。

例:「健康保険被保険者資格取得届」「厚生年金保険被保険者資格取得届」「雇用保険被保険者資格取得届」の作成および提出

【税分野】

従業員とその家族のマイナンバーを法定調書等に記載します。

例:「源泉徴収票」「給与支払報告書」の作成および提出。

外注先について

報酬等に係る支払調書の作成および提出のためマイナンバーを使います(注)。

(注)報酬等の調書や不動産関係の調書では、社外の個人(講演等の講師や不動産の個人地主など)のマイナンバーを記載する必要があります。

提出先は健康保険組合、年金事務所、ハローワーク、税務署、市町村です。

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書類の様式変更

税や社会保険の書類の様式が変わり、マイナンバーの記載欄が追加されます。 追加された欄には、従業員やその家族のマイナンバー、支払者である法人の法人番号(個人事業主の場合はマイナンバー)を記載します。

各様式の変更点については下記のサイトで確認できます。

国税庁Webサイト:国税分野における社会保障・税番号制度導入に伴う各種様式の変更点(PDF)(平成27年6月発表資料)

厚生労働省Webサイト:社会保障・税番号制度の導入に向けて(PDF)(平成27年7月発表資料)各種様式の変更点はp11、p12、p14参照

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不要になったマイナンバー

マイナンバーを含む個人情報は、必要がある場合のみ保管が認められます。従って必要がなくなったらマイナンバーを廃棄または削除するというルールを取扱担当者に徹底させてください。

保管の必要がある場合とは

  • 雇用契約などの継続的な関係がある場合
  • 法令で一定期間保存が義務付けられている場合

廃棄の方法

シュレッダーなど、復元できないように廃棄できる方法を準備することが求められます。

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