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決算準備の基本(おさらい)
決算が近づいてきたら何をどう準備すればよいのか、一覧にすると以下の7項目となります。
- 実地棚卸の準備
- 現金の残高確認
- 預金・借入金の残高確認
- 売掛金・買掛金の残高確認
- 受取手形・支払手形・割引手形の残高確認
- 固定資産の残高確認
- 仕掛品の確認
それぞれの解説は以前に紹介しています(下記リンク)ので、今回は応用編ということで、経理担当者が特に気をつけておくべきチェック項目を紹介します。
「決算が近づいてきたら準備しなくちゃ!」の巻
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現金が合わない! こんなときは?
現金出納帳の残高と手許(手元)現金の残高が一致していないときは、
- 経費や売上の記載漏れや入力ミスがある
- 担当者が不正をしている可能性がある
という二つの原因が考えられますが、まずは記載漏れ・入力ミスの確認が第一です。特に決算期をまたぐ収入や費用については勘違いしやすいので要注意です。
「収入」の部では売掛金額の確認!
「前期の売掛金で当期に現金で入金があったが帳簿に記載をしていない」や、「商品の引き渡しは終わり、当期中は未入金であったが、間違って現金で入金があったものとして帳簿に記載してしまった」といったケースがないかチェックし、期末の売掛金の残高が正しいかどうか確認します。
「費用」の部では買掛金額の確認!
「前期に納品され、当期に現金で支払ったが帳簿に記載をしていない」「当期に納品され、支払いは翌期になるが間違って現金で支払いがあったものとして帳簿に記載してしまった」などのケースがないかチェックし、期末の買掛金の残高が正しいのかどうか確認します。
いずれも詳細を調べ、回収や支払いなどの作業をします。担当者の故意による不足でなければ「現金過不足」で処理します。故意であれば担当者に不足分の負担を求めましょう。
また現金過不足が頻繁に生じるときは現金出納係を1名に限定させるなど工夫をし、再発防止に努めましょう。
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前払金・前払費用、未収金、前受金、未払金の処理
ここでは前払金・前払費用、未収金、前受金、未払金などの整理を行います。決算の時期に気をつけたいのが、「今年度の支出や収入にすべきものなのかどうか」という観点でチェックすることです。
以下、会計期間が4月~翌年3月という前提で解説しています。
a. 前払金・前払費用での注意
2015年度の処理をしているときに、2016年度の費用を先払いすることがあります。商品の手付払い、損害保険会社に支払う保険料や信用保証協会に支払う保証料などのように複数年分一括払いする場合がこれに当たります。
【前払金のケース】
例えば3月に契約をして「2016年4月から2018年3月まで」一括で前払いをするようなケースです。2016年3月(2015年度中)に支払いをしても、その中身が次期の役務提供に該当する場合には、手付金となるため2015年度の経費にはできません。こういうときは「前払金」という科目で計上することになります。
これらは保険料のほかに、イベントの会場を予約して、予約金を支出した場合も同様に処理します。
【前払費用のケース】
信用保証協会を経由してお金を借りる場合には、原則として借入期間に対応し保証料を一括して支払うことになります。例えば、3月に金銭消費契約をして「2016年3月から2021年2月までの借入期間」に対する保証料を支払ったのであれば2016年3月に支払いをしても、その中身を当期分と次期以降分に分けて当期分だけ経費計上します。次期以降分については「前払費用」または「長期前払費用」という科目で計上することになります。
これらは保証料のほかに、事務所家賃の礼金・更新料が該当します。
b. 未収金での注意
当期末まで活動した副収入の事業だけれど、収入が次期以降に入金になる場合には「未収金」という科目で処理をして、当期の収入にします。
この場合、収入の日付は3月31日で処理します。ただし、記帳するときや、会計ソフトへ入力するときには、通常の3月の処理とは別に決算整理事項で処理することにより次期において簡単にピックアップすることができます。
これらは保険事故が発生した保険金のほかに、固定資産の売却収入が該当します。
c. 前受金での注意
前もって受け取った(入金した)けれど、本当は翌期の収入にすべきもの、というのが「前受金」です。
例えば、次期である4月以降に受け取るべきお金を、3月中に受け取って入金してしまったときは、これを次期の収入にしなければいけません。この場合は、「前受金」という科目で処理します。
d. 未払金の注意
未収入金とは逆に、当期の費用にするべきものなのに、当期末までに支払いできず、4月以降に支払いをする場合は、「未払金」の処理が必要です。注文した消耗品が3月中に届き、後日にまた請求書が届いて、4月になって振り込んだというようなケースです。口座から自動引落としされる場合はうっかり気づかないこともあるかもしれません。
この「未払金」の処理で多いのが、給料や手当です。給料の支払いが、「月末締め」で翌月支払いの場合には、3月分を4月に支払うので3月末の時点では「未払金」という処理をします。
【電気代や水道代などの場合】
電気代や水道代などは通常の会社の場合、毎月ほとんど変動がないので、支払い時に経費計上し期末だけ「未払金」を洗い替えして計上する(注)ことにより事務の手間が省けます。
ただし、毎月正確に月次チェックをしている会社や上場子会社などは手間ですが、毎月未払金を計上することにより正しい月次試算表を作成することができます。
- (注)前期に計上した経費を逆仕訳で計上して、3月分(4月払い)を未払計上することで、毎月計上する方法と年間トータルの金額が一致するようにすることです。
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仮勘定の整理
仮勘定とは正式な会計処理までのつなぎとして使われる勘定です。決算時までに内容をよく調べて、本来あるべき科目に振替処理をしなければなりません。
仮勘定の主な例
仮受金、仮払金のように、収入支出で処理すべき勘定や、金額が不明のため一時的に使われる勘定、あるいは建設仮勘定のように、本来の勘定科目を使用するとかえってややこしくなるために一時的に使われるような勘定もあります。
仮勘定の主な例の整理方法は次のとおりです。
- 一時的に使われる仮勘定 → 本来の科目に振替処理をする必要があります
- 固定資産取得に必要な支払いで未完成分 → 建設仮勘定に振替をします
●建設仮勘定についての注意
【建設仮勘定とは】
例えば建物を建設して、その引き渡しを受けたら、支払った代金は「建物」(資産)で処理します。通常の固定資産を購入した場合と同じですが、ビルなどのように建設期間が長期にわたる場合は、完成までに数回に分けて代金を支払うことがよくあります。この工事の完成前に支出した工事代金を、いったん資産に計上しておくための勘定として「建設仮勘定」があります。工事が完成し、引き渡しを受けたら、「建設仮勘定」として処理していた金額を、適切な資産勘定(自社ビルであれば「建物」)へと振り替えます。
【建設仮勘定は減価償却しない】
固定資産の場合、決算において減価償却をしますが、「建設仮勘定」は減価償却を行いません。まだ完成していない工事途中の建物等に関して支払ったものなので、当然ながらまだ利用が始まっていないからです。
仮勘定は放っておくとどんどん増えてしまいます。年に一度、まとめて整理しようと思うと大変なので、できれば月ごとに内容をチェックして、本来あるべき科目に振替処理をしておくとよいでしょう。
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売掛金の回収
決算を前に考えておきたいのが「売掛金回収」です。自社に非がないのに未回収となっているような場合には、以下のような手順が考えられます。
- 支払いの遅延理由を取引先へ確認
- 新たな期日を約束してもらい、請求書を再発行する
- 再発行分に関しては、再度取り決めた期日の前日に入金を確認
- 入金確認が取れない場合は期日前日に再度連絡し、入金を求める
上記のように手を尽くしても、先方の誠意が感じられない場合は法的手段も検討しなければなりません。
Step.1 支払約定書の作成
約定書とは「お互いの約束事をまとめたもの」で、その中でも支払約定書は「双方の氏名、支払時期、成約手段、成約方法など」をとりまとめたもの。公正証書は公文書なので高い証明力があるだけでなく、「強制執行認諾約款」を付ければ先方が支払いを怠ったときは裁判の判決を待たずに直ちに強制執行することができます。
Step.2 内容証明郵便を送る
支払約定書の作成に応じてもらえないときは、内容証明郵便を送ることになります。これは「この内容の手紙を誰が誰に対し、いつ出したか」を郵便局が証明してくれるもので、法的証拠能力のある手紙です。その内容としては、「再三のお願いにもかかわらず、この通知を無視もしくは破棄した場合、法的措置を用いての督促を行わせていただきます」といった記載を行うのが一般的です。支払約定書のように相手に支払いをさせる法的効力はありませんが、証拠としての効果があり、裁判所を介しての「支払い督促」に必要になってきます。
Step.3 支払い督促を行う
簡易裁判所に申し立てをするという最終手段です。証拠の提出がなくても、所定の申立書審査で書記官が申し立てどおりの支払いを命ずる支払督促を発行してくれる制度です。広く金銭の支払いを求める請求に利用されています。相手が「異議申立」を行うと通常の訴訟へと移行し、「異議申立」がなければ強制執行することが可能となります。
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