2017年 3月 1日公開

【連載終了】専門家がアドバイス なるほど!経理・給与

【アーカイブ記事】以下の内容は公開日時点のものです。
最新の情報とは異なる可能性がありますのでご注意ください。

「社会保険“新加入基準”での手続き」の巻

テキスト/梅原光彦 イラスト/今井ヨージ

平成28年10月から厚生年金保険・健康保険の被保険者資格の取得基準が改められ、社会保険の手続きが変わりました。「特定適用事業所」に勤務するパート、アルバイトに対する社会保険の加入基準が拡大されるようになったのです。そこで今回はこの基準変更に伴う手続きについて解説します。

「社会保険“新加入基準”での手続き」の巻

【お知らせ】がんばる企業応援マガジン最新記事のご紹介

適用が拡大する「新加入基準」

変更のあらまし

平成28年10月1日から、パートタイマーなどの短時間労働者に対する社会保険(健康保険・厚生年金保険)の適用拡大が実施されました。今回の改正で、501人以上の企業が新たな加入基準で労働者を社会保険に加入させることとなりました。
一方で、500人以下の事業者は、これまで「おおむね1日」または「1週」の所定労働時間および1カ月の所定労働日数が正社員の3/4を満たす場合に、その労働者を社会保険に加入させる、となっていたのですが、「おおむね」と「1日」がなくなって「1週」と「1カ月」だけで判断することとなりました。
従って、501人以上の企業については新たなルールが適用され、それ以外の企業についてはルールが変更ということになります。

新たな加入基準とは

これまで短時間労働者の社会保険の適用については、「1日または1週の所定労働時間」および「1月の所定労働日数」が通常の労働者(いわゆる正社員)のおおむね3/4以上であるかどうかが判断基準とされてきました。これが改められ、「おおむね」「1日または」といったあいまいな文言が削除され、以下の五つの要件全てに該当する短時間労働者が、社会保険に加入することになったというわけです。

  1. 常時501人以上の企業(特定適用事業所)に勤めていること
  2. 週の所定労働時間が20時間以上あること
  3. 雇用期間が1年以上見込まれること
  4. 賃金の月額が8.8万円以上であること
  5. 学生でないこと

従って特定適用事業所に該当する企業は、上記の「新加入基準」に沿って、新たに社会保険加入手続きが必要となる従業員がいるかどうかの確認が必要となります。

2)~5)の要件については以下に補足説明します。1)については次項へ。

【「週の所定労働時間」とは】

就業規則、雇用契約書等によりその者が通常の週に勤務すべき時間を言います。例えば、1カ月単位で定められている場合は、1カ月の所定労働時間を52/12で除して算定します。なお、1週間の所定労働時間が短期的かつ周期的に変動する場合は、平均により算定します。

【「雇用期間が1年以上見込まれる」とは】

期間の定めがなく雇用される場合や、雇用契約期間が1年未満であっても雇用契約書に契約が更新される旨が明示されている場合も該当します。

【「月額賃金」とは】

週給、日給、時間給を月額に換算したものに、諸手当を加えた額を言います。賞与、割増賃金や最低賃金法の対象とならない手当(精皆勤手当、通勤手当、家族手当等)を除きます。

【「学生」とは】

大学、高等学校、専修学校、各種学校に在学する学生で、修業年限が1年以上の課程に限ります(夜間学部・定時制校は除きます)。

目次へ戻る

被保険者数が501人以上になったら

「新加入基準」に定められている第1の要件「常時501人以上の企業(特定適用事業所)」とは、どんな事業所なのでしょうか。

特定適用事業所とは

「同一事業主の適用事業所」の厚生年金の被保険者数が「常時500人を超える事業所」のことを言います。特定適用事業所に該当するかどうかは、各支店や営業所ごとの人数ではなく、法人ごとの事業所の人数で判断することになります。法人ごとと言うのは、現在の適用事業所の単位ではなく、同一法人格に属する適用事業所を一つのグループとします。また、同一の個人が複数法人の事業主を兼ねている場合であっても、法人格が違えば別のグループとなります(注)。

(注)個人事業所の場合は、適用事業所単位となります。

「501人以上」――被保険者数の計算は

短時間労働者を除く厚生年金保険の被保険者数で判断することになります。
「新加入基準」施行 (平成28年10月1日) 時点で厚生年金保険の被保険者数が501人以上である場合には、特定適用事業所に該当するとして該当する事業所には、既に日本年金機構より「特定適用事業所該当通知書」が事業所宛てに送付されています。

平成28年10月以降に、直近11カ月のうち被保険者数が501人以上の月が「5カ月」になったときには、その翌月をめどにお知らせが送付され、5カ月目の翌月も501人以上であった場合には、5カ月目の翌々月ごろに「特定適用事業所該当通知書」が送付されることになっています。

また、被保険者数が継続して501人以上になることが見込まれる場合には、通知書が届く前に「特定適用事業所該当届」を提出し、特定適用事業所となることも可能です。

「常時500人を超える」とは

1年のうち6カ月以上、厚生年金被保険者数の合計が500人を超えることが見込まれる場合を言います。この場合の500人の算定については、短時間労働者が、「1週間の所定労働時間が、その事業所で同じような業務をしている正規労働者の3/4以上」で、「1カ月の所定労働日数が、その事業所で同じような業務をしている正規労働者の4分の3以上」という二つの要件の両方を満たすかどうかで判断します。

目次へ戻る

短時間労働者が被保険者となるポイント

「変更のあらまし」で述べたように、社会保険の適用拡大に伴い、従来の基準が明確になりました。あらためて説明すると、ポイントは次の2点です。

  • 「1週の所定労働時間」
  • 「1月の所定労働日数」

この二つが正社員の3/4以上ある短時間労働者は、被保険者として取り扱われることになるということです。

従って、特定適用事業所(501人以上の企業)に該当した事業所の場合、社会保険の加入基準にこれまで該当しなかった短時間労働者でも、「新加入基準」の2)~5)の要件に該当すれば、短時間労働者の被保険者になります。

500人以下の事業所で新たに加入義務が生じるケース

500人以下の事業所についても、前述のように加入基準が明確になることで、新たに被保険者として取り扱われることになる人が出てきます。

例えば、以下のような場合

 1日の労働時間1週の労働時間1カ月の労働日数
正社員8時間40時間20日(週5日勤務)
短時間労働者5時間30時間24日(週6日勤務)

従来は、1日または1週の時間が基準だったので、上記の例では1日は3/4未満となり、必ずしも社会保険に加入させる必要はありませんでした。しかし、今後は1週の労働時間だけで比較するので、加入義務が生じるということです。

年金事務所等へは届け出を

「特定適用事業所該当通知書」が届いた事業所において、これまで社会保険に加入していないパート従業員が「新加入基準」の2)~5)の要件に該当する場合には、「特定適用事業所該当通知書」に記載されている該当年月日の日付で資格取得届を作成し、年金事務所等に届け出る必要があります。

パート従業員には説明を

新基準に該当するパート従業員に対しては、このままの働き方を継続するのであれば、社会保険に加入することとなることを説明する必要があります。もしも本人に加入の意思がないのであれば、働き方を見直したうえで新たに雇用契約書を締結しなければなりません。

目次へ戻る

被保険者数が500人以下になったら

501人以上の企業として「特定適用事業所」として取り扱われることとなっても、後に被保険者の人数が少なくなって500人以下となることもあります。こんな場合でも、届け出をしなければ、引き続き特定適用事業所として取り扱われることになります。

ただし、被保険者数(全ての被保険者)の3/4以上の同意を得て、「特定事業所不該当届」と「特定事業所不該当同意書」を所轄年金事務所に届け出ることで、特定適用事業所として取り扱われなくなります。

その場合には、新たな基準により加入した被保険者の資格喪失届も併せて届け出ることになります。

目次へ戻る

事業主の義務として

今回の法改正により、新たに適用対象となる企業も増えると思われます。パート従業員の中には「どうしても加入したくない」などと反発する人が出てきて、基準どおり進めていくことが難しい場合も考えられます。
しかし、社会保険は強制加入が前提の制度であり、加入手続きを行うことは事業主の義務となっています。従業員には年金をはじめとした各種保険給付が受けられるといったメリットについてもしっかりと説明し、納得のうえで加入してもらうことが大切です。

【お知らせ】がんばる企業応援マガジン最新記事のご紹介