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2018年 1月16日公開
【連載終了】専門家がアドバイス なるほど!経理・給与
【アーカイブ記事】以下の内容は公開日時点のものです。最新の情報とは異なる可能性がありますのでご注意ください。
テキスト/梅原光彦 イラスト/今井ヨージ
商品やサービスの「表示・広告」にはルールがあります。そしてそのルールはしっかりと法律などに定められています。適切な表示・広告を行うにはどんな法律ルールに気をつければよいのでしょう。今回は、経理から総務・法務まで幅広い役割を兼ねることが多い中堅・中小企業の経理担当者のために、表示・広告とルールの基礎知識をまとめました。
目次
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消費者向けの表示・広告については、大きく分けて、「全商品・サービス共通のルール」と「商品ごとの個別ルール」との2種類があります。まずは全商品・サービス共通のルールで最重要となる三つのルールから説明します。
表示・広告ルールの中でも最重要といえるのが景品表示法(不当景品類及び不当表示防止法)です。景品規制(景品類の最高額を制限)と表示規制(商品やサービスの品質、内容、価格等を偽って不当表示を行うことの禁止)を定めた法律で、過大な景品類の提供や不当な表示から消費者の利益を保護することを目的としています。
景品表示法は、豪華な景品につられて不当に高いものを買ってしまったり、実際とは異なる商品の情報に惑わされて買ってしまったり……ということを防ぐため(消費者が適正に商品・サービスを選択できるよう)、景品類や表示について厳しく規制しています。ここでは不当表示を防止する表示規制を中心に紹介します。
不当表示には「優良誤認」と「有利誤認」という二つのパターンがあります。これらは一般消費者に誤解を与えるような表示であるとして禁じられています。
優良誤認は「商品・サービスの品質、規格その他の内容についての不当表示」で、実際のものよりも著しく優良であると示したり、事実に反してライバル商品より著しく優良であると示したりすることです。例えば、清涼飲料水で果汁10%なのに100%と偽った場合などが前者、同業他社でも行っているサービスを「当社だけ!」と表示した場合などが後者です。
有利誤認は「商品・サービスの価格その他の取引条件についての不当表示」で、取引条件について実際のものよりも著しく有利であると誤認させたり、ライバルよりも著しく有利であると誤認させたりすることです。例えば、通常価格の商品なのに「特別価格!」「通常の5割引き!」と表示するような場合などが前者、実際はライバル商品と同等なのに「他社商品より〇〇が5割も多い!」などと表示した場合などが後者です。
2016年4月1日から、景品表示法の不当表示に対する課徴金制度が始まりました。事業者が表示規制に違反した場合、従来のような措置命令(注1)にとどまらず、「課徴金」と呼ばれる金銭を国に支払うよう事業者に命じる制度です。不当表示へのペナルティーが強化されたということで、事業者はルールに則った適正な表示がより一層求められます。
事業者団体等によっては、景品表示法に基づき、消費者庁長官および公正取引委員会の認定を受けて業界自主規制を設けていることがあります。これを「公正競争規約」といいます。公正競争規約自体は業界の自主ルールなので法律ではありません。しかし、その業界での表示・広告について「何が良くて、何が悪いのか」が具体的に細かく明文化されており、これを守っていれば景品表示法違反に問われることはまずないでしょうから、こちらも確認しておくことが必須です。
なお、独占禁止法でも「不当な顧客誘因行為の禁止」「ぎまん的顧客誘因行為の禁止」「不当な利益による顧客誘因の禁止」などについて定められています。独禁法は広告・表示規制の大本のような位置付けの法律ですが、この法律の特別法として誕生した景品表示法があるため,独禁法が消費者向け表示・広告で問題になるケースはそれほど多くありません。そのため、ここでは詳しく触れません。
自社商品・サービスを、周知されている他社の商品・サービスと混同させるような表示などを禁止する法律です。禁止行為には以下のような例があります。
禁止行為を行った場合、相手方から差止請求、損害賠償請求等で訴えられる可能性があります。また、民事上の紛争となるだけでなく、刑事処罰の対象となる場合もあります(注2)。
事業者が、重要事項について事実と異なることを告げるなど不当な「勧誘」をした場合、消費者は契約を取り消すことができます。そのルールを定めた法律が消費者契約法です。「勧誘」というと、面と向かって説得し、誘いかけるイメージがありますが、最高裁は不特定多数に向けられた広告も「勧誘」に含まれる可能性を認めています。従って、広告を出す際には消費者契約法に違反していないかの確認も必要ということになります。
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全商品・サービスに共通ルールとして、これまでに紹介した景品表示法、不当競争防止法、消費者契約法のほかにも販売方法や広告の素材に応じたルール、消費税表記に関するルールがあります。
訪問販売、通信販売、電話勧誘販売など消費者トラブルが生じやすい取引を対象に、事業者が守るべきルールが定められています。
特定商取引法の対象となる類型
上記、いずれかの類型にあてはまる取引を行う場合は経産省HP「特定商取引法ガイド」で確認してから表示内容を検討するとよいでしょう。例えば通信販売における広告表示ルールでは、販売価格はもちろんのこと送料についても表示が必要であること、代金の支払い時期や方法を表示することなど細かく定められています。法律解釈に関する問い合わせには、各地域の地方経済産業局が応えています。
商品やサービス等の代金を分割で支払うことを約束して売買を行う「割賦販売」について事業者が守るべきルールを定めた法律です。例えば、広告をする際には取引条件(手数料、支払期間、回数など)を表示する義務があるとされています。この義務に反して表示をしなかった場合、50万円以下の罰金刑が定められています。
広告の素材とは、タレントの肖像、イラスト、写真、音楽、キャッチコピー、ロゴマークなどです。これらによって構成される広告の表現・内容において、他人の著作物(著作権法)、商標(商標法)、肖像権・パブリシティ権(顧客吸引力のある有名人・著名人の氏名や肖像を本人が独占できる権利)を無断で使用してはならないというルールがあります。
消費税法では、消費税相当額を含んだ支払総額の価格表示を義務付けています。これを「総額表示方式」といって、ルールが義務付けられる対象は次のような広告・表示です。
ただし、特別措置法(注3)によって例外も認められています。詳細は財務省HPをご確認ください。
商品・サービスごとに表示・広告のルールが定められているものもあります。代表的な取扱商品と対象法令は以下のとおりです。なお、取扱商品と対象法令はこれらに限られるものではありませんのでご注意ください。
商品・サービスごとの個別ルール
先に紹介した各業界団体の公正競争規約のほかに、自治体の条例などでもルールが設けられている場合があります。表示・広告を行うにあたっては、それら法律以外のルールにも目配りする必要があります。
近年は、賞味期限の改ざんや産地偽装問題、携帯電話の0円広告などがメディアをにぎわすことが多く、「広告の仕方、表示のあり方」について一般社会の目は厳しくなっています。売上重視のあまり、「表示・広告」でルール違反を犯すと消費者の信頼を損ない、宣伝どころか逆効果になってしまうケースもしばしば見られます。「表示・広告」に関するルールをしっかり把握し、自社の提供する商品・サービスの品質表示・宣伝・広報等をするうえでは常に適法・適正を心がけることが何より大切です。
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