2017年12月12日公開

【連載終了】専門家がアドバイス なるほど!経理・給与

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「マイナンバー社会保険編」の巻

テキスト/梅原光彦 イラスト/今井ヨージ

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社会保険の各種届にマイナンバー(個人番号)の記載が始まるのは、当初予定では平成29年1月からとなっていましたが、現在のところ一部延期されています。ただ、マイナンバー記載がいったん義務付けられると、事業者にとって対応は急務となります。いざというとき、あわてないよう、社会保険分野でのマイナンバー対応について現状を確認しておきましょう。

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今後マイナンバー記載が求められる届出

マイナンバー制度が導入されてから2年(平成28年1月開始)。平成29年秋からは「マイナンバーカード」を利用した認可保育所の入所申請ができるようになるなど、マイナンバーの活用範囲が広がっています。

しかし、社会保険(健康保険・厚生年金保険)の各種提出書類については、年金事務所の対応が遅れていることから、平成29年1月以降にマイナンバー記載が求められるはずの一部の書類で記載開始が延期されています(平成29年10月6日現在)。もちろん今後、社会全体でマイナンバー利用が本格化していくという大きな流れに変わりはありません。

マイナンバー記載が必要な健康保険・厚生年金関係の届出一覧

当初予定では以下の届出にマイナンバー記載が必要とされていました。今後は順次記載が求められることになる予定です。

1.被保険者資格の取得・喪失、被扶養者関係届書

  • 健康保険・厚生年金保険被保険者資格取得届/厚生年金保険70歳以上被用者該当届
  • 健康保険・厚生年金保険被保険者資格喪失届/厚生年金保険70歳以上被用者不該当届
  • 厚生年金保険被保険者資格喪失届/70歳以上被用者該当届
  • 健康保険・厚生年金保険被保険者氏名変更(訂正)届
  • 健康保険被扶養者(異動)届/国民年金第3号被保険者関係届
  • 国民年金第3号被保険者関係届

2.報酬月額、賞与、育児休業等関係届書

  • 健康保険・厚生年金保険被保険者報酬月額算定基礎届/厚生年金保険70歳以上被用者算定基礎届
  • 健康保険・厚生年金保険被保険者報酬月額変更届/厚生年金保険70歳以上被用者月額変更届
  • 健康保険・厚生年金保険被保険者賞与支払届/厚生年金保険70歳以上被用者賞与支払届
  • 健康保険・厚生年金保険育児休業等取得者申出書(新規・延長)/終了届
  • 健康保険・厚生年金保険育児休業等終了時報酬月額変更届/厚生年金保険70歳以上被用者育児休業等終了時報酬月額相当額変更届
  • 健康保険・厚生年金保険産前産後休業取得者申出書/変更(終了)届
  • 健康保険・厚生年金保険産前産後休業終了時報酬月額変更届/厚生年金保険70歳以上被用者産前産後休業終了時報酬月額相当額変更届
  • 厚生年金保険養育期間標準報酬月額特例申出書・終了届

3.その他の届書・申請書

  • 厚生年金保険被保険者種別変更届
  • 厚生年金保険特例加入被保険者資格取得申出書
  • 厚生年金保険特例加入被保険者資格喪失申出書
  • 厚生年金保険適用証明期間継続・延長申請書
  • 厚生年金保険適用証明書交付申請書
  • 年金手帳再交付申請書

既に始まっているマイナンバー対応

社会保険分野では一部遅れているものの、健康保険組合に加入している事業所については、既に資格取得届、被扶養者異動届にマイナンバー記載が求められているところもあります。

[健康保険・厚生年金保険被保険者資格取得届の書式]

健康保険組合加入事業者用の「健康保険・厚生年金保険被保険者資格取得届」では個人番号記入欄が追加された書式が、厚生労働省のホームページからダウンロード可能となっています。

厚生労働省のホームページ

「生命保険料控除証明書」の見方

記載がなくても手続きは進むけれど……

届書に記入欄はありますが、マイナンバーの記載がなくても届出は可能となっています。健保組合は原則的として、取得届や異動届にマイナンバーの提出を求めるものの、記入がない場合でも保険証は発行しています。

現状ではマイナンバー取得のための強制規定はなく、マイナンバーを利用する事務を処理するために「必要があるときは、本人または他の個人番号利用事務等実施者に対し個人番号の提供を求めることができる。」(マイナンバー法第14条)と規定されているだけです。ただし、会社側にはマイナンバーを記載して届出を行う義務があります。従って従業員にはできるだけマイナンバーの提供の協力を求めるようにしてください。

なお、日本年金機構でも年金の請求の際にマイナンバー記入が始まっていますが、こちらも基礎年金番号の記載は必須であるのに対して、マイナンバーの記載は任意となっています。

従業員からマイナンバー提供を拒まれた場合の対応は……

従業員がマイナンバーの提出を拒むことも可能です。その場合は、“会社は提出を求めたが従業員に拒まれた”といった旨の記録を残したうえで、マイナンバーを記載せずに書類を提出することになっています。詳しくは以下の内閣府ホームページを参照ください。

内閣府ホームページ:マイナンバー社会保障・税番号制度(4)民間事業者における取扱いに関する質問(Q4-2-5)

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マイナンバー提出のメリット

マイナンバーを申請書類等に記載するには当然、従業員の協力が欠かせません(注1)。記入を求める際、なぜマイナンバーが必要なのか従業員から問われることもあるでしょう。そんなとき、しっかり答えられるようにしておきたいものです。

注1:年金関係でマイナンバー記載が必要な届出のほとんどは本人が提出するもので、事業所が提出するのは先に紹介した「健康保険・厚生年金保険被保険者資格取得届」だけです。

マイナンバー制度のメリット

マイナンバー制度のメリットとしては次の三つが挙げられます。

  1. 行政を効率化し、人や財源を国民へのサービスに振り向けられる
  2. 社会保障・税に関する行政の手続きで添付書類が削減されることや「マイナポータル」(注2)を通じたお知らせサービスなどによる国民の利便性の向上
  3. 所得をこれまでより正確に把握することで、きめ細やかな社会保障制度を設計し、公平・公正な社会を実現する

注2: 政府が運営するオンラインサービス。行政手続きがワンストップで行え、行政からの通知を自動的に受け取ることができます。

マイナンバー記入の具体的メリットとは

具体例として、以下の届出にマイナンバーを記入することで、これまで必要だった書類の提出が不要になるなど、利便性が向上するメリットがあります。

1)年金受給権者現況届(現況届)

請求者本人のマイナンバーを記入することで、住所変更届や翌年以降の現況届の提出が原則不要となります。

2)年金請求書

請求者本人のマイナンバーを記入することで、生年月日に関する書類(住民票等)の添付が原則不要となります。

なお、協会けんぽでも高額療養費などの申請においてマイナンバーを記入することで非課税証明書等の添付書類が省略されることになっています。(平成29年度10月27日現在)

今後活用が広がるマイナンバー

今後、マイナンバーは行政・民間のさまざまな分野で利用が広がることが予想されます。また、マイナンバーカードやマイナポータルは、マイナンバーそのものを使わない利活用が可能です。政府では民間活用を含め、IT社会の重要な基盤として、最大限活用していくこととしています。認可保育所の入所申請がオンラインでできるようになるなど、活用のメリットを前向きに受け止めて対応していくとよいでしょう。

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