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2020年 9月 8日公開
【連載終了】専門家がアドバイス なるほど!経理・給与
【アーカイブ記事】以下の内容は公開日時点のものです。最新の情報とは異なる可能性がありますのでご注意ください。
テキスト/梅原光彦 イラスト/今井ヨージ
「所得拡大促進税制」が2018年度税制改正で見直され、施行されています。給与を増やすと税金が減る! というこの制度、今回は中小企業に的を絞ってまとめてみました。
目次
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一言で言うと、賃上げをした企業に対する税の優遇制度です。企業で働く従業員の給与水準を引き上げることで「個人所得の拡大促進」を図り、経済成長へとつなげていくために創設されました。青色申告書を提出している中小企業や個人事業主が、一定の要件を満たしたうえで、前年度よりも給与等の支給額を増加させた場合、その増加額の一部が法人税(個人事業主は所得税)から税額控除されることになります。この所得拡大促進税制は期間限定の制度です。2018年4月1日から2021年3月31日までに開始される事業年度(個人事業主の場合は2019年分から2022年分)において適用されます。
継続雇用者の給与等支給額が前年度比で1.5%以上増加していること
上記の要件を満たすと、国内雇用者(注1)に支払った給与等の総額(注2)の内、前事業年度から増加した金額の15%が税額控除されます。ただし、控除額は法人税(所得税)の20%が上限となっています。
この要件で重要なのが「継続雇用者」というワードです。簡単に言うと、前期と当期の両事業年度、24カ月間全ての月に在籍している人のことで、途中入社や途中退社した人は除きます。期間中ずっと在籍していた人=「継続雇用者」の給与が1.5%以上増加していれば要件クリアということになります。
具体的には以下の3条件全てを満たす従業員が「継続雇用者」と認定されます。(1)前事業年度および適用事業年度の全ての月分の給与等の支給を受けた国内雇用者(2)前事業年度および適用事業年度の全ての期間において雇用保険の一般被保険者である者(3)前事業年度および適用事業年度の全てまたは一部の期間において高齢者雇用安定法に定める継続雇用制度の対象となっていない者
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所得拡大促進税制の利用に当たって、具体的な実務の進め方は次のとおりです。
前期の給与等の総額より当期の給与等の総額が増えているかチェックする。
(計算例)
(3,000万円-300万円)÷(2,800万円-300万円)×100=108% 増加額:200万円
この場合、増加しているのでステップ2に進みます。ステップ1で給与等の総額が増加していない場合は、税額控除の計算をしても控除額が出ませんのでご注意ください。
継続雇用者に対する給与を比較してみる。
2,000万円÷1,800万円×100=111.11%>101.5%
この場合、11.1%の増加なので「1.5%以上」という基準を満たしていることになります。
税額控除を計算する。
(計算例)当期の法人税額:300万円の場合
300万円×20%=60万円
給与等の増額:200万円×15%=30万円
60万円>30万円→30万円が税額控除額
この場合、税額控除の上限である「法人税額の20%」(60万円)に、給与等の増額分の15%(30万円)が達していないので、増額分の全額が税額控除されます。
所得拡大促進税制の利用に当たっては次の点に注意してください。
A.創業1年目の法人・個人は比較する前期がないので、適用がありません。しかし、2期目は1期目より給与が増加することが多いので、2期目に適用されるかどうかしっかりチェックしましょう。
A.税額控除は税額からダイレクトに引かれるので節税のインパクトは大きいといえます。
A.適用の申請を忘れていたという理由で、修正申告書でさかのぼって所得拡大促進税制の適用を求めることはできません。適用の可否を事前にしっかり把握しておくことが大切です。
手続きに当たっては人件費の集計がポイントになるので、管理の仕方を工夫してみてください。会計ソフトの給与科目に補助科目を作成して個人別に入力しておくと、決算時に人件費の集計や比較が楽になります。源泉徴収簿だと1~12月の集計はできますが、12月決算でない場合は源泉徴収簿からのピックアップがひと手間必要になります。できるだけ会計ソフト上で人件費を管理することが集計のポイントです。
所得拡大促進税制に加えて、教育訓練費が前年より増加した場合や経営力向上計画の認定を受けて要件を満たした場合は、さらに税額控除額が増える措置(上乗せ措置)があります。
所得拡大促進税制の適用を受けるためには「給与が増加したこと」を証明するためにさまざまな数字を集計する必要があります。また「上乗せ措置」についても、「前年度から教育訓練費が増加した」ということなどを証明するための集計が必要で、作業が煩雑な部分があります。これらの活用を検討する場合には早めに税理士に相談し、十分に適用可否を確認することをおすすめします。
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