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労基署の調査とは
労基署は労働基準法違反を取り締まる行政機関です。「抜き打ち調査」も含めた調査(「臨検」ともいいます)を行っています。
*労基署の基本知識については以下の過去記事を参照ください。
「今年も労働基準監督署が動き出す!」の巻
調査の意味
調査の目的は、労働基準法違反がないか確認し、違反があった場合に是正することです。調査が入るということには、必ずしもその企業に違反や問題があることを労基署が認識しているという前提があるわけではありません。業種や規模を任意に選び、定期的に調査するケースも数多く見られます。
調査の対象
本社だけでなく支社・支店、営業所、工場など全ての事業所が調査の対象となります。例えば、飲食店であれば店舗ごとに調査対象となるということです。従って、一つの会社で何カ所か並行して調査が行われることもあります。
主な違反内容
東京労働局が2018年に東京都内の調査結果について取りまとめた資料によると、定期調査等を実施した12,668事業場の内9,188事業場(72.5%)で労働基準関係法令違反が指摘されています。
主な違反内容は、
- 違法な時間外労働
- 割増賃金不払
- 機械・設備等の危険防止措置に関する安全基準に関する違反
となっています。
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調査の実際(1)確認書類
労基署調査では、賃金台帳、タイムカードの帳簿や書類などを確認して、必要に応じて人事担当者等からヒアリングしながら、労基法等の違反事項があるかどうか調べます。確認する帳簿や書類はおおよそ以下のものとなっています。場合によっては、業務で使用しているPCなどを確認することもあります。
調査で確認される書類
- 会社の事業概要が分かるもの
- 組織図
- 労働条件通知書あるいは雇用契約書
- 労働者名簿賃金台帳(直近3~6カ月分)タイムカード、出勤簿、時間外・深夜労働時間を集計したもの(直近3~6カ月分)
- 就業規則等諸規定
- 時間外・休日労働に関する協定届(提出控)
- 事業場外労働・裁量労働に関する協定届、1年単位の変形労働時間制に関する協定届、フレックスタイム制に関する労使協定、その他各種労使協定(提出控)
- 年次有給休暇管理簿
- 総括安全衛生管理者・安全管理者・衛生管理者・産業医・安全衛生推進者の選任報告(提出控)および巡視記録
- 安全・衛生委員会規定、委員名簿、議事録
- 健康診断個人票、健康診断結果報告(提出控)
- 長時間労働者に対する面接指導の実施状況が分かるもの
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調査の実際(2)事前通告の有無
労基署の調査は、監督官が会社を訪問するケースもあれば、逆に会社の担当者が監督署に出向くケースもあります。監督官が来訪する場合には、事前連絡があって調査日時を設定したうえで訪問するケースだけでなく、事前連絡なし(抜き打ち)で監督官が突然訪問するケースもあります。
事前通告がある場合
事前に日時の通告がある場合には、会社側からすると準備をする猶予と機会が与えられたことになります。例えば、届け出を忘れていた書類があることに気付いたら、事前に届け出を行うなどの対策を取ることが可能です。
なお、事前に指定された調査の日程が会社側の事情でどうしても都合のつかない場合、おおむね調整に応じてもらえます。
事前通告がない場合
事前の通告なく訪問を受けて、担当者が不在で書類の保管場所が分からないといったこともあるでしょう。しかし、「就業規則」「36協定」は労働者の見やすい場所での掲示が求められています。「そんなのどこにあるか知らない……」と答えるだけで法律違反の指摘を受けることもあるので注意が必要です。
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指導と是正勧告
調査により、法律違反等が確認された場合には、「指導票」や「是正勧告書」の交付を受けることとなります。指導票はサッカーでいえばイエローカード、是正勧告書はレッドカードに当たります。
指導票とは
明確な法律違反とはいえないが、このまま放置しておくと法律違反になりかねない事象や、法律違反ではないにしても行政通達への違反がある場合に改善を求める文書です。期日を指定され、改善状況を報告することが求められます。
是正勧告書とは
明確な法律違反に対して是正を求める文書です。所定期日までに是正することが求められます。「違反事項及び該当法条項」「是正期日」が記載されており、交付の際、是正事項について説明がなされたうえで、調査に立ち会った担当者の署名押印を求められます。
是正・改善の義務
指導票・是正勧告書のいずれも、報告の際には是正・改善した事実が客観的に分かる資料(例えば修正した就業規則、未払い賃金を支払った月の賃金台帳など)とともに文書をもって報告します。
是正・改善で指定される期日は事象にもよりますが、おおよそ1カ月後の日付を指定されます。原則的には、この期日までに是正・改善して報告しなければなりません。もしも所定期日までに是正・改善ができない場合には、その理由と経過報告を行うことで是正期日を延長してもらえることもあります。しかし、最終的に監督官が是正・改善したと認めるまでは完了とはなりません。長引く場合は、6カ月にわたって毎月の勤怠データの報告が必要になるといった事例もあります。
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よくある指摘事項
労基署の調査でよく指摘される事項は以下のとおりです。
(1)労働条件通知書に必要事項の記載がされていない
特に「退職に関する事項」について、有期労働契約の場合は「契約更新をする場合の判断基準」、パートタイマーの場合は「昇給」「賞与」「退職金」の有無、「雇用管理改善等に関する相談窓口」の記載が漏れていることがあります。
(2)賃金台帳に「性別」「賃金計算期間」が記載されていない
これらは賃金台帳に記載義務がある事項です。
(3)終業時間と時間外労働の時間の乖離(かいり)
タイムカードに打刻されている「終業時間」と実際に時間外労働として計算している時間とに乖離がある場合は、多額の未払い賃金が生じるケースがあります。
(4)36協定が守られていない
36協定に定めた時間外労働の上限を超えているケース(注)や、特別条項を適用する場合の所定の手続きが行われていないことを指摘されるケースがあります。
(注)2020年4月以降、新たなルールが適用されています。以下の過去記事をご参照ください。
「残業時間の上限規制について」の巻
(5)振替休日の際に、週40時間を超えた場合の割増賃金の支払いがされていない
振替休日の結果、1週6日勤務した場合には週40時間を超える労働となることが多く、その場合の割増賃金(25%以上増)が支払われていないケースが多く見られます。
以上の問題については社内点検して実態を把握したうえで、早めに改善しておくことをおすすめします。
調査に対する心構え
労基署調査では、通常直近3~6カ月程度の期間について調べられます。つまり既に過ぎ去った事象について調べられることになるわけです。もしもその期間中に法律違反があったとして、それをなかったことにする行為(帳簿の改ざん等)は絶対にあってはならないことです。ただ、会社側に悪意があってというよりは、知らずに法律に違反しているケースも多いのが実情です。指摘を受けないように、まずは日々の労務管理に注意を向けることが大切です。特に労働時間管理がポイントになるので、あらためて点検しておくとよいでしょう。
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