2021年 2月

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「オンラインショップ開設&運営の基礎知識(企業編)」の巻

テキスト/梅原光彦 イラスト/今井ヨージ

企業にとって消費者と直接つながるオンラインショップはますます重要な販路になってきています。そこで今回は、オンラインショップを運営中、もしくは開設予定の企業の担当者が知っておくべきルールを、法的な観点から解説します。

オンラインショップの立ち上げ

ECサイト、オークションサイト、ショッピングモールサイト、まとめサイト……などなど、ネットの世界ではさまざまなビジネスが展開されています。今回はオンラインショップを立ち上げて商品・サービスを顧客に販売するという典型的なビジネスを対象に、主に開設準備段階を想定して解説していきます。利用規約など最低限備えるべき規定や、それを作成するうえでの注意点、返品・返金のルールなどについて紹介します。

事前調査

オンラインとはいえ店舗なので、開設に際しては行政への届け出や、取り扱う商品・サービスによって許認可を受けることが必要な場合があります。食品、酒類、医薬品、中古品などです。開設に当たってどんな申請が必要か事前に調査しておきましょう。

(1)食品を販売する場合

食品を販売する場合は、食品衛生法に基づく許可が必要になります。自らが製造、販売しようとする食品が規制の対象になるかどうかなどについて、所轄の保健所に相談しましょう。食品の中でも健康食品は、医薬品的な効果があるものとして不用意に広告すると、医薬品医療機器等法や景品表示法などに違反する可能性があるので注意が必要です。

(2)酒類を販売する場合

オンラインショップを開設して酒類を販売する場合には、通信販売酒類小売業免許(注)が必要になります。無許可で酒類を販売すると1年以下の懲役または50万円以下の罰金に処される可能性があるので注意しておきましょう。

  • (注)インターネット、カタログの送付、新聞広告などにより、二つの都道府県以上の広域な地域の消費者に対して酒類の通信販売を行う場合に必要になります。

(3)医薬品を販売する場合

薬局開設許可、医薬品販売許可、特定販売届け出などが必要になります。所轄の保健所や各都道府県の薬務課などに相談しましょう。

(4)中古品売買を行う場合

中古品の買い取りや販売を行う場合は古物商許可が必要です。所轄の警察署を通じて公安委員会に許可申請することになります。

そのほか、マッチングサイト(異性同士、事業者と労働者などの紹介サービス)についても許認可が必要な場合があります。

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重要規定(1)「利用規約」

ウェブサービスを始めるに当たって大切な三つの規定があります。まずは利用規約です。

利用規約とは

オンラインショップでは、事業者とユーザー(消費者)との間でいちいち契約書を交わすことは現実的ではありません。従って契約書の代わりに利用規約を作成します。利用規約は、自社商品・サービスの購入・利用ルールからトラブル発生時の対処ルールまでを定めたもので、オンラインショップにとって最も重要な規定といえます。

利用規約の作成

作成に当たって、同様の商品・サービスを提供している他社の利用規約を参考にするのはよいのですが、そのまま流用してしまうと著作権侵害となるリスクがあるので避けなければなりません。また、似ている商品・サービスの場合でも細かな違いはあるので、トラブルに対応しきれないことも考えられます。従って自社の商品・サービスの特性に合わせた利用規約を作る必要があります。

利用規約の主な内容

利用規約に盛り込むべき主な内容は次のとおりです。

  • 自社サービスの利用には利用規約への同意が前提であることの説明
  • 利用規約の変更方法
  • 利用規約で使用する用語の定義
  • 自社サービスの説明(利用方法、料金、支払方法など)
  • 自社サービス内のコンテンツについての権利の帰属
  • 自社サービスにおける禁止事項
  • 利用規約違反に対するペナルティー
  • 損害賠償に関する事項
  • 免責に関する事項
  • サービスの中止、変更、終了に関する事項
  • 紛争時の裁判管轄

作成・運用上の主な注意点

利用規約に盛り込むべき内容の中でも、特に注意すべきポイントを紹介します。

(1)商品に欠陥があった場合のルールを明記する

商品に欠陥があった場合、どのような対応を行うのか定めておく必要があります。
主な内容は次の2点です。

  • ユーザーが事業者に対して損害賠償などの権利を主張できる期間
  • 商品に欠陥があった場合、どのように責任を取るのか(損害賠償、商品の交換など)

規約として定めると次のような条文となります。

例:不具合が発生した場合の責任条項

納入後〇カ月以内に当方(事業者のこと。以下同じ)の責に帰すべき事由により不具合が発生した場合には、当方はユーザーの請求に基づき、当方の責任と負担においてその不具合を補修、もしくは代金の全額を返金するものとします。

(2)禁止事項を明記する

ユーザーにされては困る行為を定めておきます。ユーザーがコンテンツや商品のレビューなどを投稿するタイプのサービスを提供する場合は特に必要です。

禁止行為としては――

  • 当方もしくは第三者の名誉・信用を毀損(きそん)する行為
  • 当方もしくは第三者を不当に差別もしくは誹謗(ひぼう)中傷する行為
  • 公序良俗に反する行為

などが考えられます。

ただし、どれだけ禁止行為を列挙しても全てを網羅することはできません。そこで最後に「当方が不適切と判断する行為」を入れておくことをおすすめします。
またユーザーが禁止行為をしたときの制裁(「アカウントの停止」や「サービスの利用停止」など)も規定しておくとよいでしょう。

(3)利用規約の変更手順を明記する

サービスを展開していくうちに利用規約を変更する必要が生じる場合があります。ユーザーから個別に変更の同意を得ることが難しいウェブサービスでは、利用規約の変更についてのルールを明記しておくことが大切です。すなわち、「ウェブサイト上に利用規約を変更する旨を明示し、その後は、ユーザーがサービスを利用した時点での最新の規約が有効となる」という規定をあらかじめ利用規約に入れておくのが一般的です。

例:利用規約の変更手順

本利用規約を変更する場合は、利用規約を変更する旨を当社ウェブサイトに掲示し、その後ユーザーがサービスを利用した時点で、変更後の利用規約が適用されるものとします。

(4)免責規定

ウェブサービスを運営していくうえではさまざまなトラブルが予想されます。そこで次のような規定を設けることが一般的です。

  • 当方はユーザーのPC利用環境について一切関与せず、また一切の責任を負いません
  • 当方は本サービスの内容変更、中断、終了によって生じたいかなる損害についても一切の責任を負いません
  • 当方は本サービスの各ページからリンクしているホームページに関して合法性、道徳性、信頼性、正確性について一切の責任を負いません

上記のように事業者が責任を負い難い問題について列挙しつつ、最後に「第〇項から〇項までの規定は当方に故意または重過失がある場合には適用しません」という旨の規定を置くことをおすすめします。事業者としては全てのトラブルについて責任を回避したいところですが、消費者契約法によって「全ての場合について一切の責任を負わない」という免責規定は無効になる可能性が高いからです。

そしてもう一つ重要な規定が、事業者が損害賠償を負う場合の限度額を定めておくことです。この規定があれば、事業者がユーザーに支払う賠償額は最大でもユーザーから受け取った金額の範囲内に抑えられます。

例:損害賠償制限規定

本サービスの利用に関し、当方が損害賠償責任を負う場合、損害賠償の総額はユーザーが当方に本サービスの対価として支払った金額の総額を限度とします。

(5)合意の取り方

利用規約は単に作成してサイト上に掲載しておくだけでなく、ユーザーにきちんと見てもらったうえでその利用規約が適用されることについて合意をもらう必要があります。2020年4月1日から施行されている改正民法により、利用規約が適用されるための条件として、(a)「事業者とユーザーとが利用規約を契約の内容とする旨の合意をすること」または(b)「事業者が利用規約を契約の内容とすることを明確に表示しておくこと」が求められています。

具体的には――

(a)の例としては

  • 申し込みボタンに「利用規約に同意して申し込む」といった文言を表示する
  • 利用規約に同意するチェックボックスにチェックを求める

(b)の例としては

  • サービス申し込み時の確認画面に「本取引には利用規約が適用されます」などの文言を表示する

などの措置が必要となります。

なお、利用規約自体の表示方法については全文表示でも構いませんが、利用規約は長文になることが多く、その全文表示がユーザーの利便性を妨げることもあります。そこで利用規約の文字部分をハイパーリンクにして、ユーザーが確認しやすいようにしておく方法もあります。

(6)ユーザーに一方的に不利なルールはNG

先に述べた民法改正では、ユーザーと事業者との間で利用規約を利用契約の内容とする旨の合意をしていた場合などは、ユーザーが個別の条項まで目を通したか否かにかかわらず、ユーザーは個別の条項についても合意をしたものとみなすことが明記されました。
ただし、改正のもう一つの側面として、「ユーザーの権利を制限し、またはユーザーの義務を加重する条項であって、民法上の信義則に反して相手方の利益を一方的に害する条項」については、ユーザーが合意をしたものとみなす対象から除外されました。ユーザーが知らないうちに不意打ち的に不利な条項に拘束されることを避けるためです。
従って、

  • ユーザーの利益を一方的に害する条項を削除する
  • その条項が必要な場合は個別にユーザーの同意を得る

のいずれかの対応が必要になります。

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重要規定(2)「プライバシーポリシー」

プライバシーポリシーとは

プライバシーポリシーとは、ユーザーの個人情報などプライバシーに関する情報の取扱方針のことをいいます。事業者はプライバシーポリシーを定めて、これをユーザーに開示および公表することが個人情報保護法によって義務付けられています。

プライバシーポリシーの作成

プライバシーポリシーを作成するに当たって注意すべきポイントは次のとおりです。

  • 個人情報を取得する目的を具体的に特定し、明示すること
  • 取得した個人情報の利用目的を列挙しておくこと

個人情報の取得目的は「事業目的に使用するため」「当社の販売促進のため」といった漠然とした表現ではなく、「商品の発送のため」「アフターサービスのため」「新商品情報をお知らせするため」などと具体的に記載することが大切です。また現在は必要でなくても今後の事業展開で個人情報を利用する可能性がある場合は、その利用目的も前もってプライバシーポリシーに含めておくとよいでしょう。

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重要規定(3)「特商法表記」

特定商取引法には、消費者保護の観点から事業者が守るべきルールが定められています。

特商法表記とは

特商法(特定商取引法)とは消費者トラブルが起こりやすい特定の取引類型を対象に事業者による不公正な勧誘行為などを取り締まる法律です。オンラインショップの場合、特商法に基づいた事項を作成し、掲載しなくてはなりません。

特定商取引法に基づく表示の記載事項

オンラインショップでは、消費者に対して契約条件を明確に伝えるため、主に次の事項をウェブサイト上に掲載しなければなりません。

  • 販売価格
  • 送料
  • 上記以外に負担すべき金銭(キャンセル料や梱包<こんぽう>料など)
  • 代金の支払い時期
  • 代金の支払い方法
  • 商品の引き渡し時期
  • 返品特約に関する事項
  • 事業者の氏名または名称・電話番号・住所

そのほか、申込期限、数量制限などの特別な販売条件がある場合にはそれを記載する必要があります。

返品特約の定め方

特商法では、通信販売の返品特約について規定されています。返品を認めないことも可能で、例えば「お客様都合の返品は一切受け付けません」というように条件を付けることもできます。ただし、返品特約は「見やすく明瞭に、または容易に認識できるように」表示されている必要があります。

返品特約では――

  • 返品の可否
  • 返品の条件
  • 返品に係る送料負担の有無

を規定してユーザーに理解してもらう必要があります。そのため特商法の施行規則では、返品特約をウェブサイトに掲示しておくほかに、商品サービスの最終申込画面上にも返品特約の表示が必要であるとしています。

なお、返品特約を記載しない場合は、商品の引き渡しを受けた日から数えて8日間以内であれば、消費者側は契約申し込みの撤回や解除ができます。

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まとめ

以上、オンラインショップを立ち上げて運営していくために必要なルールについて、主に法的な観点から解説しました。改正民法は2020年4月1日から施行されています。今後、オンラインショップを開設する場合、あるいは既にオンラインショップを運営中だが利用規約の見直しがまだできていないという場合は、しっかりと確認することをおすすめします。

なお、サイト運営開始後にも注意しなければならない問題は多数あります。そのうち特に気を付けなければならないものの一つが広告ルールです。ここでは簡単に紹介するにとどめますが、広告掲載に当たってはご注意ください。

広告ルールについて

ネット広告は主に三つの法律の規制を受けています。

特商法……誇大広告・優良誤認を招く広告の禁止
景表法(注1)……優良誤認表示・有利誤認表示の禁止
薬機法(注2)……健康食品で医学的効能効果をうたう広告の禁止

  • (注1)不当景品類及び不当表示防止法
  • (注2)医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律

これらに抵触する広告を行った場合、事案によっては行政処分や刑事処分を受ける恐れもあります。広告掲載に当たっては行政庁のガイドラインや弁護士など専門家の意見なども参考にしながら、法律に触れることがないよう常にチェックする必要があります。

  • *広告ルールの基本知識については以下の過去記事を参照ください。

「これで安心!商品・サービスの表示・広告のルール」の巻

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ライター紹介

梅原光彦

ライター歴30年超。新聞、雑誌、書籍、Web等、媒体を問わず多様なジャンルで書き続ける。その一つが米原万里著『打ちのめされるようなすごい本』に取り上げられたことが勲章。京都在住。

監修/堤世浩

プロフィール

東京弁護士会所属。1979年生まれ。堤半蔵門法律事務所代表。企業・個人にまつわる民事・商事案件、倒産・M&A案件、相続案件などを取り扱う。

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