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2021年 6月 8日公開
【連載終了】専門家がアドバイス なるほど!経理・給与
【アーカイブ記事】以下の内容は公開日時点のものです。最新の情報とは異なる可能性がありますのでご注意ください。
テキスト/梅原光彦 イラスト/今井ヨージ
仕訳帳等の帳簿や請求書等の書類について、全部または一部の電子データによる保存を認めた法律「電子帳簿保存法」が令和元年に改正され、帳簿の電子化をさらに進めやすくなりました。続けて令和2年末に「令和3年度与党税制改正大綱」が公表され、電子帳簿等保存制度の見直しが決定しました。今回はこの大綱を基に、電子データで保存してよいもの・ダメなものなど、導入に当たって押さえておきたいポイントを解説します。
目次
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「電子帳簿保存法」は、紙での保存が義務だった税務関係の帳簿、書類を電子化して保存することを認めた法律です。正式名称は「電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿書類の保存方法等の特例に関する法律」です。1998年に制定された後、時代に合わせて改正されてきました。
電子帳簿保存法の内容を整理すると、次の三つに分かれます。
会計ソフトで作成した会計帳簿や、コンピューターで自ら作成した書類が対象になります。手書きの会計帳簿や手書きの棚卸表などをデータ保存したものは認められていないので、これらは紙で保存しなければなりません。
対象となるのは以下のような帳簿や書類の写しです。
取引相手から受け取った書類や自己が作成して取引相手に交付する書類(手書きを含む)の写しが対象になります。
主な書類は次のようなものです。
取引情報の授受を電磁的方式により行う取引データなどが対象になります。
具体的には、以下のようなインターネットを通じてやりとりする取引データが対象です。
■電子帳簿保存法のまとめ
以上、概要を述べましたが、現行の電子帳簿保存法は、事前承認が必要なことやルールが複雑で企業側では導入しづらい現状がありました。しかし、令和3年度与党税制改正大綱で規制が大幅に緩和されています。この大綱を基に、次項からテーマごとの改正ポイントを解説します。
以下は、令和3年度与党税制改正大綱と、財務省が国会に提出している改正法案をベースにした解釈で内容を構成しています。今後法令や解釈の変更がある場合も考えられますので、あらかじめご了承ください。
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令和3年改正のポイントは以下のとおりです。
従来、電子帳簿保存法の適用を受けるには、税務署長の事前承認が必要でした。改正により事前承認が廃止されたことで、企業はいつでも国税関係書類のデータ保存ができるようになりました。※注1
「優良電子帳簿保存適用者」として事前に税務署へ届け出をすることで、修正申告等があったときの過少申告加算税が10%から5%へ減額されます(2022年1月1日以降に法定申告期限の到来する事業年度から適用)。※注2
「真実性の確保」と「可視性の確保」を満たす電子帳簿のことをいいます。
a.訂正・削除履歴の確保→帳簿から変更履歴が追えることb.相互関連性の確保→帳簿から関係帳簿・書類が追えることc.関係書類の備え付け→システム関係書類(システム概要書や仕様書など)の用意があること
d.見読可能性の確保→ディスプレイと端末・プリンターが用意されすぐに出力できることe.検索可能性の確保→取引年月日、相手先、取引金額などで検索できること、および、それらの範囲指定検索やアンド検索ができることf.税務調査時ダウンロード対応の確保→税務調査時において調査官からデータのダウンロードの求めに対応すれば、e.の範囲指定検索やアンド検索できる機能の確保は不要
→c.関係書類の備え付け、d.見読可能性の確保の要件を満たし、f.税務調査時ダウンロード対応の確保ができれば「優良電子帳簿保存適用者」としての減免措置は受けられないものの、国税関係書類のデータ保存の要件は満たすことになり、書面に出力して保存する必要はなくなります。要は税務調査官がデータを持ち帰り、署内でデータを加工し検索できればe.の検索可能性の要件は満たさなくてもよいということです。
注1:改正法が適用される2021年12月31日以前に開始する事業年度分や同日以前に電子データ保存を開始するものについては、税務署へ事前の届け出が必要です。
注2:所得税の青色申告特別控除額65万円の適用を受けるには、仕訳帳および総勘定元帳を優良電子帳簿により作成および保存することが要件となります。
従来、電子帳簿保存法の適用を受けるには、税務署長の事前承認が必要でした。事前承認が廃止されたことにより、企業はいつでも国税関係書類のスキャナー保存を開始できるようになりました。
スキャナー画像データの訂正や削除の履歴が保存されるシステムを利用している場合には、タイムスタンプ(注)は不要となりました。
→書類受領から3日以内に受領者が書類に自署し、スキャナー保存およびタイムスタンプの付与が必要
→書類受領から2カ月以内に受領者がスキャナー保存およびタイムスタンプを付与すればOK(自署は不要)
注:ある時刻にその電子データが存在していたことと、それ以降改ざんされていないことを証明する技術。
改正前はスキャナー保存について相互けん制(注)、定期的な検査および再発防止策の社内規程整備等をする必要がありましたが、今改正でそれらは撤廃されました。
注:書類を作成または受領してからスキャニングし、原本と電子データを確認してからタイムスタンプを付与するまでの過程を二人以上で行うこと
検索項目を取引年月日、取引金額、取引先に限定し、税務調査時ダウンロード対応の確保ができれば、範囲指定検索およびアンド検索機能の確保は不要となりました。
また、指定期間(前々事業年度)の売上高が1,000万円以下の小規模事業者については、税務調査時ダウンロード対応の確保ができれば、一切の検索要件は不要となります。
電子帳簿保存法の要件を満たさずにスキャナー保存されている場合であっても、そのスキャナー保存された書類は定められた期間保存する必要があります。ただし、書類の原本が保存されている場合はスキャナー保存の必要はありません。
電子スキャナー保存されたデータを改ざんし、税務調査時に仮装・隠蔽(いんぺい)行為の事実があった場合は、通常課される重加算税に本税の10%に相当する金額が加算されます。2022年4月1日以降に申告期限が到来する事業年度に係る書類から適用されます。
改正法では、2022年1月1日以降に行う電子取引データは書面による保存ができなくなります。従って以下の方法で電子取引データを保存する必要があります。
保存場所:納税地または国内の事業所など保存期間:7年(欠損金の生じる事業年度においては10年間)電子取引データへの措置:以下のいずれかの措置が必要
a.取引情報の送信者側においてタイムスタンプを付与して電子データを授受することb.送信者と受信者双方がタイムスタンプを付与し、当該取引データの保存担当者等の情報を確認できるようにしておくことc.訂正削除の履歴確認ができるシステムか訂正または削除ができないシステムを利用することd.正当な理由がない訂正および削除の防止に関する事務処理規程の備え付け
上記のように電子取引データについては、「タイムスタンプを付与する」、「訂正削除の履歴が確認できるシステム等を利用する」、「事務処理規程を備え付ける」のいずれかのルールで運用することになります。実務上は、適用要件漏れを防ぐためにも「事務処理規程の備え付け」は必須と思われます。事務処理規程の備え付けとは、電子取引データについて、正当な理由がない訂正および削除の防止に関する事務処理の規程を定め、当該規程に沿った運用と規程を備え付けておく措置です。社内規程(注1)の整備により電子取引データを保存することになります。
注1:社内規程の作成に当たっては、国税庁のWebサイトに掲載されている「電子帳簿保存法一問一答(電子取引関係)」の11ページ「電子取引データの訂正及び削除の防止に関する事務処理規程」が参考になります。
国税庁「電子帳簿保存法Q&A(一問一答)」 (国税庁のWebサイトが開きます)
以下の3点にご注意ください。
適用時期:2022年1月1日以降に保存される電子データから適用
保存すべき国税関係書類のスキャナー保存に係るデータの改ざん等を行い、税務調査等において仮装隠蔽行為の事実に基づいた期限後申告などが行われた場合は、通常課される重加算税の額に当該申告漏れに係る本税の10%に相当する金額を加算した金額が重加算税となります。
A.仕訳日記帳や総勘定元帳などの会計帳簿類は全てコンピューターで作成されたもののみが認められています。一方で、取引関係書類(見積書や領収書など)については、自ら作成した手書きのものや相手から受領したものはスキャナー保存が認められています。従って、会計ソフトで帳簿を作成し、証憑類(取引の証拠となる書類)を紙で保存している企業は、会計帳簿類は「データで保存」、証憑類は「スキャナー保存」できるので、原本や控えを紙で保存する必要はありません。当然ですが、データ保存の要件やスキャナー保存の要件を満たす必要があります。
A.電子データを納税地で整然とした形式で明瞭な状態で出力できれば、クラウドサービスや海外サーバーの利用は問題ありません。
A.まずは当該ソフトウェアの取扱説明書で電子帳簿保存法の要件を満たしているか確認してください。また、公益社団法人日本文書情報マネジメント協会(JIIMA)が、市販ソフトウェアを対象に、電子帳簿保存法における要件適合性を確認(認証)しているので、JIIMAのWebサイトでも確認できます。
A.いずれも「電子取引」に該当すると考えられるので、所定の方法により取引情報(請求書や領収書等に通常記載される日付、取引先、金額等の情報)に係るデータが保存されていれば、出力した書面等を保存する必要はなく、また、別途書面の請求書等を授受する必要もありません。ただし、以下の点に注意が必要です。
1、2については一般的に受領者側におけるデータの訂正削除が可能と考えられるので、受領したデータにタイムスタンプの付与が行われていない場合には、受領者側でタイムスタンプを付与すること、または事務処理規程に基づき、適切にデータを管理する必要があります。また、対象となるデータは検索できる状態で保存する必要があるので、当該データが添付された電子メールについて、当該メールソフト上で閲覧できるだけでは十分とはいえません。
3~5については、取引情報(請求書や領収書等に通常記載される日付、取引先、金額等の情報)に係るデータについて、訂正削除の記録が残るシステムまたは訂正削除ができないシステムを利用していれば、電子取引の保存に係る要件を満たすと考えられます。他方、例えば、クラウド上で一時的に保存されたデータをダウンロードして保存するようなシステムの場合には、「注意1」と同様の点に留意する必要があります。
6、7については、一般的に受領者側におけるデータの訂正削除が可能と考えられるので、受領したデータにタイムスタンプの付与が行われていない場合には、受領者側でタイムスタンプを付与すること、または事務処理規程に基づき、適切にデータを管理する必要があります。
1~7のいずれの場合においても、データは原則7年間(繰越欠損金が生じた事業年度分は10年間)定められた保存期間が満了するまで保存する必要があります。
コロナ禍において、企業のDX(デジタルトランスフォーメーション)化は加速しています。そうした中、電子帳簿保存を利用することで、ペーパーレス化、業務のデジタル化、効率向上が図れます。ただし、電子保存法の要件を満たしていない場合は青色申告の取り消しなどのリスクがあります。せっかく業務効率を改善しても、青色申告が取り消されてしまっては本末転倒です。その書類が「電子データ保存」、「スキャナー保存」、「電子取引データの保存」のどのルールに該当するか、保存方法は適正かを事前にしっかり確認しましょう。
実務上はPDFで書類をやりとりすることも多いと思います。しかし、単にPDFデータを保存するだけでは要件を満たしません。PDFを電子データ化し、検索可能性の要件を満たす必要があります。電子保存の要点は電子化したデータを「検索可能な状態にしておくこと」にあるのです。要件を満たさない項目が生じないよう、電子帳簿保存法に対応した会計ソフト、スキャナー保存ソフトの利用をおすすめします。
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