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電子契約とは
電子契約は急速に広がりつつあります。JIPDEC(一般財団法人日本情報経済社会推進協会)の調査によると、2018年の時点で普及率は既に4割を超えています。最近ではテレワークの拡大により電子契約の普及の勢いはさらに増しています。
電子契約とは
電子契約とは、電子ファイルをインターネット上で交換して「電子署名」を施すことで契約を締結し、企業のサーバーやクラウドストレージなどに電子データを保管しておく契約方式のことです。この電子契約と、印影をスキャンして契約書データに貼り付けるもの(「電子印鑑」などといわれます)とは全くの別物なのでご注意ください。
- * 「電子印鑑」については、以下の過去記事を参照ください。
電子署名とは
電子署名とは、書面の契約書における印鑑の代替となるものです。電子署名が付された電子文書は正式なものであり、かつ改ざんされていないことを証明するものになります。電子署名には「当事者型署名」と「立会人署名型」(注)がありますが、ここでは電子契約の主流である「立会人署名型」を想定して解説していきます。
注:「事業者署名型」とも呼ばれます。PDFなどの電子契約書をインターネット上にアップし、双方が確認して合意することで、そこに「立ち会った」電子契約サービス提供事業者が契約書の締結を確認して電子署名を行うものです。「当事者型」に比べて導入から契約の締結まで手続きが簡単なことから普及が進んでいます。
電子契約サービスについて
電子契約を導入する場合、電子契約サービス事業者が提供する電子契約システムを利用するのが一般的です。電子契約サービス事業者は数多くあり、それぞれにサービスの料金・機能などが異なります。従って社内事情や利用状況に合わせて自社に適した事業者を選択することになります。
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電子契約のメリットとデメリット
電子契約はメリットが多くある一方でデメリットもあります。導入に当たっては、その効用と問題点を理解しておく必要があります。
電子契約のメリット
(1) コスト削減・省スペース
紙代、郵送費、保管等の費用がかからないほか、電子契約だと印紙税も現在のところ課税されません。さらに契約書類の保管スペースも不要になります。
(2) 事務処理の効率向上
紙の契約書に比べて作成の手間がかかりません。電子契約であればプリントアウトや製本、押印、郵送が不要となります。また遠隔地にいてもほぼ一瞬で契約書の取り交わしができます。
(3) 卓越した利便性
パソコンやスマートフォンがあれば、いつでもどこでも押印・閲覧できます。押印のためだけに出社する必要がありません。
(4) コンプライアンス強化
契約書類の紛失、持ち出しのリスクが減り、郵送に伴う事故が回避できるうえ、改ざんも困難となるので文書管理に関わるコンプライアンス強化につながります。
電子契約のデメリット
(1) 導入プロセスにおける課題
導入するまでに環境整備や社内調整などの労力を要します。システムの導入や管理体制の整備はもちろん、社内での調整、取引先への説明等が必要になります。まだまだ十分に一般的とはいえない方式なので、取引先によっては電子契約への移行に同意が得られず、電子契約と紙の契約書が混在することになります。
(2) 法的リスクなど
電子契約サービス事業者に事故が発生する可能性がないとはいえません。ハッキングのリスクもあります。また、「そのような契約書は結んでいない」などと電子契約・電子署名の有効性が争われた場合に、どのような条件を満たせば電子契約・電子署名の有効性が認められるのかについても一部明確でない部分があります(実際に争われた裁判例もまだありません)。さらに権限なき社員が勝手に電子署名してしまった場合の効力などについても問題となり得ます。
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導入に当たっての注意点
電子契約の導入に当たっては、社内の体制を整えておく必要があります。どこまでやるかは、業種、事業規模、契約規模などによって異なりますが、以下に代表的な項目をご説明します。
相手側の契約締結権限を確認するためのフローの整備
契約を巡るトラブルが訴訟に発展した場合に備えて、当事者間で電子契約に関するメールの受信者が契約締結権限を有していることを確認する作業が必要となります。通常、電子契約サービスでは、電子メールやワンタイムパスワードの送信などにより受信者の本人確認を行いますが、これだけではメールの受信者が社内で契約締結権限を有していることの確認として十分でない場合があります。そこで、契約締結権限の確認フローを社内で整理しておくことが必要になります。
契約締結権限の確認方法としては――
- 契約締結権限が誰にあるかを書面またはメールにて事前通知してもらう
- 契約締結権限がある者の名刺データを事前にもらい、名刺に書かれたメールアドレスと電子署名をする者のメールアドレスが一致するか確認する
などさまざまな方法が考えられます。締結する契約の重要性などを考慮しながら柔軟に決めるようにするのもよいでしょう。
自社側の契約締結権限に関する規定の整備
紙の契約書の場合の印章管理規定に対応するものとして、電子署名を行う権限のある地位・役職等を指定する規定や、電子署名を行う際の社内承認ルール(社内稟議<りんぎ>ルールを含む)などの整備が必要になります。これは自社の社員が勝手に電子署名をしてしまうことを防ぐ抑止力にもなります。
文書管理規定の改定・整備
電子契約文書は、社内のファイルサーバーやクラウドサービス上で保存することになります。そのため電子契約の導入に当たっては、電子契約文書の保存(管理者、保存期間の定めを含む)、アクセス権限の所在・閲覧手続き等に関する規定を設ける必要があります。
なお、電子契約の電子保存のためには、「電子帳簿保存法」(注)への対応も必要になります。これについては同法に対応した電子契約システムを使うのが手っ取り早いでしょう。
注: 正式名は「電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿書類の保存方法等の特例に関する法律」。紙(書面)を印刷・保管等することによる負担を軽減するため、国税関係帳簿書類を電子データで保存すること(いわゆるペーパーレス化)を認めた法律です。契約書等を電子データで保存するための要件などが定められています。
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「紙」の必要性も再確認!
電子契約について述べてきましたが、電子契約に移行する前に、従来の書面(紙)による契約のメリット・デメリット、さらには法律上、書面(紙)による契約が必要な場合があることについても理解しておきましょう。
注意点1 書面(紙)による契約のメリット・デメリット
書面(紙)による契約のメリット・デメリットは電子契約のそれの裏返しとなります。例えば、書面(紙)による契約を保持することで「誰が押印したか分からない」と争うリスクは軽減できるでしょうが、電子契約の持つ印紙税負担の軽減、印刷・保管コストの軽減等のメリットは失われることになります。
注意点2 法律上、押印が義務付けられている文書がある
電子契約が普及しつつあるとはいえ、全ての書面が電子化できるわけではありません。例えば、消費者保護などを目的として、法律で書面(紙)による締結や交付が義務付けられているものも一部ですが存在します。訪問販売、電話勧誘販売、連鎖販売、特定継続的役務提供、業務提供誘引販売取引における交付書面(特定商品取引法4条ほか)、不動産取引における重要事項説明書、定期借地契約書・定期建物賃貸借契約書等が代表例です。
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まとめ
従来の紙の契約書を維持する選択肢もありますが、電子契約のメリットとデメリットを比較検討してみると、総じてメリットの方が大きいといえるでしょう。
コロナ禍で一気に拡大したテレワークの影響もあり、電子契約を導入する企業は今後も増えていくと考えられます。また、自社が導入しなくても、重要な取引先が先に導入に踏み切った場合、対応せざるを得ないともいえます。
企業ごとの状況・特性によって必要度は異なるでしょうが、電子契約の普及拡大に備えて、早い段階から入念に準備を始めることが望ましいといえます。その場合、最初は少額取引の契約から徐々に電子契約を拡大していくという選択肢もあります。
従来の紙の契約書は、社内や取引先の反応を見ながら少しずつ減らしていくとよいでしょう。
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