2021年 7月

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「株主総会・取締役会~コロナ下でどうする?」の巻

テキスト/梅原光彦 イラスト/今井ヨージ

「密」が制限されるコロナ下ですが、株主総会・取締役会は開催しなければなりません。人と人との接触を減らしつつ株主総会・取締役会を開催・運営するにはどのような方法・手段があるのでしょうか。法的に取り得る選択肢と、実施に当たっての留意点を解説します。

コロナ下で開催するために「株主総会編」

株主総会の基本

株主総会といえば、役員や株主が一堂に会するイメージがありますが、必ずしもリアルに人が集合して開催しなくてはいけないというものではありません。役員や株主が株主総会の会場に出向かなくともよい方法は、以下のとおり幾つかあります。

  • ウェブ会議、テレビ会議、電話会議等により出席する方法
  • 書面投票または電子投票により議決権を行使する方法
  • 代理人に出席してもらう方法
  • 株主総会(社員総会、評議員会)決議を省略する方法

通常、株主総会において決議を成立させるためには、次の手順を踏むのが原則となります。
(会社法298条、299条、309条)

ただし、新型コロナウイルス(COVID-19)感染拡大防止のための取り組みが必要なこの時期には、以下のような方法が活用できます。

(1) みなし決議

会社法は、招集手続きや株主総会の開催を省略して、株主総会決議があったとみなすことができると定めています。それが「みなし決議」です。「書面決議」とも呼ばれます。
定款による定めは不要で、コロナ下に限らず、特別決議、特殊決議であっても利用できます。特に中堅・中小企業などで株主が少ない場合は、容易に実行できるので幅広く利用されています。

ポイント1 「株主全員」の賛成が必要

決議の成立要件として「株主全員」の賛成が必要になります。音信不通の株主や、決議に反対している株主がいると使えません。

ポイント2 メールによる同意も可

議決権を有する全株主から同意書を取得することが必要です。同意書は、書面でも電子メールなどの電磁的記録でも、どちらでも可能です。株主全員の同意が必要となるため、回答期日は余裕を持って設定することが望まれます。

(2) ウェブ会議による株主総会(バーチャル株主総会)

みなし決議(書面決議)が使えない場合には、ウェブ会議による株主総会の開催を検討しましょう。現行法上は、参加も決議も全てバーチャルという株主総会は実施が難しいとされています(2021年7月現在国会で解禁を検討中)。

ただし、リアルな会場で実施している株主総会の様子をライブ配信する「ハイブリッド型バーチャル株主総会」であれば、適法に開催できます。全てがバーチャルではないにせよ、会場の出席者数を減らすことができるという点ではコロナ下で実施する意義は大きいといえます。

ハイブリッド型バーチャル株主総会の種類

ハイブリッド型バーチャル株主総会には2種類あります。

  • ハイブリッド参加型バーチャル株主総会
  • ハイブリッド出席型バーチャル株主総会

参加型は株主総会の審議を傍聴するだけですが、出席型は総会当日にウェブ上で議決権行使まで可能です。現在のところ、出席型は議決権行使システム導入の手間等がかかるため導入例がまだまだ少ないので、ここでは現在の主流である参加型について説明します。

なお、バーチャル総会への出席は強制できず、株主がリアルな総会への出席を希望した場合、拒むことはできません。また、映像なしの音声のみによる(いわゆる電話会議による)株主総会が現行法上認められるかどうかは不透明なところがあります。

ハイブリッド参加型バーチャル株主総会の特徴

参加型は出席型に比べて導入のハードルは低いですが、総会当日ウェブ上で議決権行使ができないので法律上は「出席」扱いにはなりません。そのため後から述べる(3)や(4)の方法を併用する必要があります。事前に書面等で議決権行使をしてもらうとともに、総会当日は審議の様子をウェブ上でチェックするという使い方になります。

<導入に当たっての留意点>
ポイント1 招集通知は丁寧に

招集通知には、通常の株主総会の招集通知記載事項に加え、株主総会の状況を動画配信するインターネットサイトのアドレスを記載し、株主が容易にアクセスできるよう、その方法を分かりやすく案内するなどの配慮が必要です。

ポイント2 本人確認は必須

オンライン出席では、リアルな株主総会と異なり本人確認が難しいことがあり得ます。例えば、株主ごとに ID とパスワード等を送付し、株主がインターネット等の手段 でログインする際に、当該IDとパスワード等を用いたログインを求めるなどの方法が考えられます。

ポイント3 情報伝達の双方向性と即時性の確保

株主総会開催場所と出席者との間でスムーズに相互通信できなければなりません。会議の開始時までにテストをして通信状態等を確認し、通信障害が起きたときの対処方法も事前検討しておきましょう。

(3) 書面投票または電子投票

書面投票(書面による議決権行使)や電子投票(電磁的方法による議決権行使)を認めることで、株主は株主総会が開催される会場に出向かなくとも議決権を行使することができます。(2)のハイブリッド参加型バーチャル株主総会と組み合わせることで、リアルの会場に集まる出席者の数を減らすことができます。

(4) 代理出席

ほかの株主等に代理出席してもらうことができる(注1)ので、例えば複数の株主が特定の株主等に議決権を委任することでリアルの出席株主数を減らすことが可能です。

  • (注1)定款で代理人の資格を制限している場合があるので注意が必要です。

(5) その他の制限・省略

感染症拡大防止策の一環として、株主総会参加の自粛または制限・規模縮小については次のような方法もあります。

ポイント1 役員の欠席

会社法において、取締役、監査役等の役員の株主総会への出席は、株主総会成立の要件とはされていません。また、「新型コロナウイルスの感染拡大の防止」や「役員自身の感染リスクを避ける」という理由は、株主総会を欠席する合理的な理由に当たると考えられます。従って、説明義務を適切に果たせるという前提で、出席役員を一部制限する措置や、役員の一部はウェブを通じての出席にするなどの方法が考えられます。

ポイント2 株主の来場制限
<1.来場自粛の呼び掛け>

株主に来場を控えるよう呼び掛けることは、株主の健康に配慮した措置とも考えられます。その際には、併せて書面や電磁的方法による事前の議決権行使の方法を案内することが望ましいでしょう。

<2.事前登録の実施>

出席を希望する株主に事前登録を依頼し、事前登録をした株主を優先的に入場させる等の措置を取ることも考えられます。全ての株主に平等に登録の機会を提供するとともに、登録方法について十分に周知することが前提となります。

<3.感染対策ルール違反者の入場制限>

発熱している、マスク非着用……など、ウイルス感染が疑われる株主や感染拡大防止のためのルールに従わない株主の入場を制限、または退場を命じることも可能と考えられます。

ポイント3 株主総会の時間短縮

例年より会場の規模を縮小することや、会場に入場できる株主の人数を制限することも可能ですが、開催時間そのものを短縮することも感染リスク低減につながります。

定時株主総会は、通常、1.議長就任宣言、2.開会宣言、3.出席株主数と議決権数の報告、4.議事進行に関する説明・注意、5.監査役の監査報告、6.事業報告・計算書類の説明、7.決議事項の説明、8.質疑応答・審議、9.採決、10.閉会宣言という順番で進められます。そのうち、8.と9.以外は必須とはいえないので、それらの項目を省略もしくは短縮することで、株主総会の時間短縮を図ることが可能です。

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コロナ下で開催するために「取締役会編」

通常であれば、取締役会は議決に加わることができる取締役の過半数(注2)が「出席」することで開催とされます。しかし、新型コロナウイルス感染拡大防止のため、人と人との接触を控えたい場合、次のような方法が考えられます。

  • (注2)これを上回る割合を定款で定めている場合は、その割合以上。

(1) みなし決議

取締役会の開催そのものを省略できる方法です。みなし決議(書面決議)を行うには、株主総会の場合とは異なり、事前に定款で定めておく必要があります。

ポイント1 取締役全員の同意

決議事項につき取締役全員の同意が必要となります。反対する取締役・連絡の取れない取締役がいる場合は、以下(2)のウェブ会議もしくは通常の取締役会を開催しなければなりません。

ポイント2 同意の取り方

同意の取り方としては書面またはメールとなります。まず取締役会の決議事項を取締役(注3)全員に書面またはメール等の電磁的記録により提案、これに対して取締役の全員から書面またはメール等の電磁的記録による同意の意思表示があったときに、取締役会の決議があったものとみなされます。

  • (注3)監査役の権限が業務監査権限まである場合には、監査役も含みます。

(2) ウェブ会議による取締役会(バーチャル取締役会)

リアルな開催場所を決めたうえで、各取締役が自宅等からウェブ会議の方法で出席します。確定した解釈はありませんが、議長の所在場所を開催場所として、全員がウェブ上で「出席」することは問題ないと考えられます。ただし、株主総会と同様に参加も決議も全てバーチャルの取締役会は現行法上難しいという考え方が有力です。

ポイント1 リアルな開催場所が必要

リアルな場所を会場とする必要があります。ただ、代表取締役の自宅などを開催場所とし、各取締役との間を通信回線でつないで取締役会を開くことは一般に認められています。

ポイント2 良好な通信環境を確保

「各取締役が一堂に会するのと同等に自由に協議ないし意見交換できる状態」、すなわち良好な通信状態にある(あった)ことを、審議開始前と終了後に議長が確認すること(確認した旨を取締役会議事録に記載します)。もちろん通信障害が発生しないよう事前にウェブ会議システムのテストも含め通信環境を整備・確認しておくことが重要です。

ポイント3 議事録について

議事録には、開催場所にいない状態で出席した取締役の出席方法がウェブ会議による参加であることを記載すること。また、出席した取締役・監査役は議事録に署名または記名押印する(電磁的記録で作成する場合は電子署名をする)ことが必要です。

ポイント4 出席機会の確保

各取締役の通信環境によりウェブ会議の方法が取れないことを理由に取締役会への出席を拒むなど、出席の機会を不当に奪わないようにしなければなりません。パソコンやスマートフォンに不慣れな取締役がいる場合には、丁寧な事前説明を行うなど一定の配慮が必要となるでしょう。

(3) 代理出席は不可

株主総会と異なり、委任状による代理出席や、書面による議決権行使(現実に開催される取締役会に出席しない取締役が書面で議決権を行使すること)は、取締役会では認められません。取締役会では、議題に対して議論することが大切だからです。(1)の書面決議(決議の省略)を行う場合を除き、議決権の行使には本人の出席が必要です。

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ライター紹介

梅原光彦

ライター歴30年超。新聞、雑誌、書籍、Web等、媒体を問わず多様なジャンルで書き続ける。その一つが米原万里著『打ちのめされるようなすごい本』に取り上げられたことが勲章。京都在住。

監修/堤世浩

プロフィール

東京弁護士会所属。1979年生まれ。堤半蔵門法律事務所代表。企業・個人にまつわる民事・商事案件、倒産・M&A案件、相続案件などを取り扱う。

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