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改正の背景
近年、海賊版コンテンツによる被害は深刻の度合いを増しています。一つの海賊版サイトだけで約3,000億円もの出版物がタダ読みされたとの試算も出されており、クリエイター・コンテンツ産業の損害は計り知れません。
実は、これまでも「著作権者の許可なく著作物(全般)をアップロードすること」や、「違法アップロードされた音楽・映像を違法アップロードであることを知りながらダウンロードすること」は違法でした。しかし、違法コンテンツへのリンクを集約した「リーチサイト」や、違法アップロードされた書籍・漫画・論文・ソフトウェアについてダウンロードが行われるような問題に対して対策が不十分でした。
そこで改正著作権法では海賊版被害の拡大を防止するため、リーチサイト対策(2020年10月1日施行)およびダウンロード違法化・刑事罰化(2021年1月1日施行)を柱とした法整備が行われました。
改正の目的
- 海賊版被害への早急な対応
- 社会の変化に応じた著作物の利用の円滑化
- 著作権の適切な保護
今回の改正の目的は上記3点ですが、ここでは「海賊版対策の強化」に関する改正ポイントを中心に解説していきます。
なお、改正著作権法(注)では、そのほかに、著作権者から許諾を受けて著作物を利用している者が、著作権者から著作権を譲り受けた人などにその利用権を対抗できる制度や、プログラムの著作物に係る登録制度も新たに整備されています。
- (注)正式には「著作権法及びプログラムの著作物に係る登録の特例に関する法律の一部を改正する法律」
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改正の概要
インターネット上の海賊版対策として、今回の改正では次の4点を中心に法整備が図られました。
強化される対策
(1)リーチサイト対策
(2)侵害コンテンツのダウンロード違法化
(3)著作権侵害訴訟における証拠収集手続の強化
(4)アクセスコントロールに関する保護の強化
以下、改正のポイントとして解説していきます。
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改正のポイント(1) リーチサイト対策
「リーチサイト」とは、ほかのウェブサイトで違法にアップロードされた著作物などのリンク情報等を集約してユーザーを侵害コンテンツに誘導するウェブサイトです。改正著作権法では、悪質なリーチサイト(「リーチアプリ」も含みます)として、次の二つの類型を定めています。
公衆を侵害著作物等に殊更に誘導するものであると認められるウェブサイト
例えば、サイト運営者が、侵害コンテンツへの誘導のために、デザインや表示内容等を作り込んでいるような場合など
主として公衆による侵害著作物等の利用のために用いられるウェブサイト
例えば、掲示板などの投稿型サイトで、ユーザーが違法リンクを多数掲載し、結果として侵害コンテンツの利用を助長しているような場合など
リーチサイトへの法的規制
リーチサイトを運営する行為は刑事罰(5年以下の懲役等)の対象となります。またリーチサイトに侵害コンテンツへのリンクを掲載する行為は著作権侵害行為とみなされ、以下の民事上・刑事上の責任を問われる可能性があります。
民事上の責任
上記請求などを受ける可能性があります。
刑事上の責任
上記のいずれか、または両方を科される可能性があります。
ただし、これらの行為はいずれも親告罪となっているため、著作権者による告訴がなければ、行為者が刑事上の責任を負うことはありません。
なお、改正法におけるリーチサイト規制では、ダウンロード型のサイトだけでなく、ストリーミング型のサイトも対象としています。
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改正のポイント(2) 侵害コンテンツのダウンロード違法化
今回の改正により、映像や音楽だけでなく、書籍や漫画、ソフトウェアのプログラムなど著作物全般についての違法ダウンロードが規制対象に加えられました。ただし、善良なユーザーがインターネット上で情報を取得する際、過度な萎縮が生じることがないよう、規制対象を「違法にアップロードされたことを知りながら」ダウンロードする場合に限定したり、その他の例外事由を設けたりするなどされています。
参照元:文化庁「インターネット上の海賊版対策のための著作権法改正」
ダウンロード者に対する主な規制は以下の2種類となります。
違法にアップロードされたことを知りながらダウンロードした場合
たとえそれが私的使用のためであっても、原則として著作権侵害とみなされます。その結果、民事上の責任(差止請求や損害賠償請求など)を負う可能性があります。ただし、要件として「違法にアップロードされたことを知っている」必要があり、重大な過失により知らなかった場合は、著作権侵害とみなされません。
侵害コンテンツのダウンロードを継続的にまたは反復して行った場合
侵害コンテンツのダウンロードの中でも特に悪質な場合は刑事罰まで科されます。すなわち、正規版が有償で提供されているものについて、ダウンロードを継続的に反復する行為は刑事罰の対象となります(単発的なダウンロードは含まれません)。
上記のいずれか、または両方を科される可能性があります。
なお、侵害コンテンツのダウンロードは親告罪となっているため、著作権者による告訴がなければ、行為者が刑事上の責任を負うことはありません。
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改正のポイント(3) 著作権侵害訴訟における証拠収集手続の強化
裁判所は著作権侵害訴訟において、当事者の申し立てに基づき、侵害行為の立証や侵害行為による損害額の算出のために必要な書類の提出を、書類の所持者に命じることができます(文書提出命令といいます)。ただし、提出を拒否する「正当な理由」がある場合、裁判所は提出を命ずることはできないことになっています。
改正前は、裁判所は、この「正当な理由」の有無を判断するために、書類の所持者に当該書類を事前に提示させることはできましたが(裁判所のみが提示を受けます)、「侵害行為の立証」や「侵害行為による損害額の算出」に必要かどうか判断するために、書類の所持者に当該書類を事前提示させることはできませんでした。改正後は、これらの場合にも書類を事前提示させることが可能になり、裁判所は文書提出命令を出すかどうかの判断をしやすくなりました。
また、当事者の同意は必要ですが、裁判所は、専門委員(裁判官をサポートする大学教授などの専門家)に対しても、その書類を開示できるようになりました。これによって裁判所は専門委員からのより実効的な助力が得られるようになりました。
事前に書類の提示を求めることができるケース
改正前 提出を拒否する「正当な理由」の有無を判断するため
↓
改正後 上記理由に加えて
「侵害行為の立証」に必要かを判断するため
「侵害行為による損害額の算出」に必要かを判断するため
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改正のポイント(4) アクセスコントロールに関する保護の強化
アクセスコントロールとは、著作物の不正使用を防止すること、あるいはそのための保護手段、技術のことをいいます。改正前はCDやDVDを想定した規定となっていましたが、今日ではコンテンツ提供はインターネット配信が主流になってきており、その際のライセンス認証はシリアルコードを使った認証が広く普及しています。そこで、今回の改正では、シリアルコードを使ったライセンス認証など最新のアクセスコントロール技術が保護対象に含まれることが明確化されました。また、ライセンス認証を回避する機能をもつ不正なシリアルコードを提供する行為は著作権侵害行為とみなされ、民事・刑事上の責任を問えるようになりました。
民事上の責任
上記請求などを受ける可能性があります。
刑事上の責任
上記のいずれか、または両方を科される可能性があります。
なお、不正なシリアルコードの提供行為は親告罪となっているため、著作権者による告訴がなければ、行為者が刑事上の責任を負うことはありません。
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まとめ
日常の業務において、画像・論文・ソフトウェアなどの著作物をインターネットからダウンロードして使用することも多いといえます。これまで合法だった行為が違法となるケースも生じるため、従業員には十分な注意を呼び掛ける必要があります。
新たに規制対象となった画像・論文・ソフトウェアを取り扱うサービスを運営している、またこれらを従業員がダウンロードする機会が多い事業者は、今回の改正内容をしっかり把握し、改正された著作権法の内容に適するように自社の社内規則等を整備したり、社員教育を徹底したりすることが求められます。
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