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2022年11月15日公開
【連載終了】専門家がアドバイス なるほど!経理・給与
テキスト/梅原光彦 イラスト/今井ヨージ
前回の「税務調査〈準備編〉」に続いて、今回は〈当日編〉です。税務調査もいよいよ本番。何に気をつけて、どう対応すればよいのでしょう。今回は税務調査当日の行動を中心に、注意すべきポイントをまとめてみました。
目次
調査当日の時系列に沿って説明していきます。一般に調査は2日間にわたり、それぞれ、午前・午後に分けて調査が行われます。調査の開始時刻は自社の始業時間に合わせて調整してもらうことができます。例)午前:9時ないし10時頃から12時まで、午後:13時~16時まで。
ヒアリングについては社長が対応したほうがよいでしょう。ヒアリングが長時間に及ぶ場合は、午前中いっぱいかかることもあります。ヒアリングが終わり、帳簿類の確認に入ったら、社長は通常の業務に戻ってかまいません。外出する場合は連絡が取れるようにと求められることがあります。
調査官はヒアリングの中で以下のことを確認します。
事前に確認している事項であっても質問して、受け答えに矛盾がないか調べます。
あらかじめヒアリング事項を想定し、顧問税理士や経理担当者と質疑応答の練習をしておくとよいでしょう。担当者は調査官に聞かれたことだけ答えるようにしてください。わからないことは後で調べて回答しても問題ありません。
ヒアリングが終わった段階で早めにお昼の休憩に入る場合もあります。午後からは、請求書や帳簿類の書類調査に入るので、必要な書類、帳簿類を確認しておきましょう。まずはリクエストされた書類のみ用意しておけば大丈夫です。
事前に用意しておいたほうがよい帳簿類については前回の「知っておきたい“税務調査”〈準備編〉の巻」をご参照ください。
「知っておきたい“税務調査”〈準備編〉」の巻
領収書の台紙に書類の裏紙を使っている場合は注意してください。調査官の注意を引いてしまうような文言が書いてあれば、余計な疑念を抱かれます。メールのやり取りを印刷した書類の裏紙などは特に注意してください。
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午後からは帳簿関係の確認に入ります。調査官が複数の場合は、売り上げ、経費と担当を分けて確認していきます。途中でコピーを依頼されたり、追加資料の提出などを求められたりする場合があるので、顧問税理士が調査官のいる部屋に残るのが一般的です。社長や経理担当者はそれぞれ自室または自分の席で通常業務に戻ってかまいません。
税務調査において、売り上げの確認は必須事項です。売上帳、売上請求書、総勘定元帳、通帳などを照合し、売り上げの計上漏れがないか確認していきます。
【調査官の視点】CHECK -1 期ズレのチェック
税務調査で最初にチェックされるのは、売り上げが適正に計上されているか、です。例えば3月決算の会社の場合、期末である3月分の売り上げが全て計上されているか――「期ズレ」がないか、を確かめます。具体的には、翌期の4月以降に入金された売掛金のうち、3月分について正しく当期に計上されているかをさかのぼって確認します。期ズレは比較的調査が容易で、計上漏れがあれば修正申告に直結するので帳簿の調査で必ず確認される事項です。
CHECK -2 締め後の売り上げ計上漏れチェック
締め後の計上漏れはないかを確認します。例えば3月決算法人で、売上請求書の締め日が25日締めの場合、3月26日~3月31日に売ったものは、4月分請求になります。税務上は、3月26日~3月31日に売ったものはあくまで3月分の売り上げになるので、請求書は発行していなくても、当期の売り上げとして計上しなければなりません。調査官が午前中のヒアリングで、「締め日」を聞くのは締め後の売り上げ計上漏れがないか確認するためです。
【ワンポイントアドバイス】POINT-1 調査官には別室を用意
調査官が調査する部屋と業務を行う部屋は別の部屋にしてください。そうすれば顧問税理士がコピーを取りに来たり、質問をされて社長や経理担当者に確認したりする際に、別室で簡単な「打ち合わせ」ができます。例えば、「社長、税務署はこの論点について質問してきています。追加で契約書の提示を求められる可能性があるので、契約書の準備と印紙が貼付されているかを今一度確認しておいてください」など、事前準備の時間をとることができます。
経費の計上が適切かどうか確認します。
売り上げの確認が終わったら、経費の確認に入ります。調査官は主に以下の事項について確認します。
【調査官の視点】CHECK -1 飲食費のチェック
例えば、社長の自宅周辺での飲食費については「家族で食事をしたのではないか?」との疑念を抱かれます。「誰と食事をしたのか」「業務と関係があるのか」などを確認します。
CHECK -2 勤務実態のチェック
源泉徴収簿を確認し、勤務実態のない人物への給与支払いがないかを確認します。
CHECK -3 消耗品費・修繕費のチェック
消耗品費や修繕費として計上しているもののうち、金額や内容を見て、資産計上すべきものはないかを確認します。
CHECK -4 仕掛品のチェック
仕入れや売上原価として計上しているもののうち、翌期に計上されるべきもの(仕掛品)がないかを確認します。
売り上げと経費の確認を行うと同時に、それらの取引に伴って発生する消費税が適正に計上されているかを確認します。
【調査官の視点】CHECK-1 海外発送分のチェック
発送費のうち海外発送分はないか、その消費税は適正に計上されているかを確認します。
CHECK -2 エビデンスのチェック
消費税法上保存すべきエビデンスが適切に保存されているかを確認します。
CHECK -3 外注費のチェック
外注費で計上しているもののうち、給与とすべきものはないかを確認します。
CHECK -4 接待交際費のチェック
接待交際費として計上されているもののうち、香典や祝い金などが消費税対象外として適正に処理されているか確認します。
契約書の確認をすると同時に印紙税が適正に貼付されているかも確認します。
【調査官の視点】CHECK-1 印紙貼付チェック
印紙を貼付すべき契約書があった場合、適正に印紙が貼付されているか確認します。
CHECK -2 使いまわしチェック
印紙が貼付されていても、使いまわしをされていないか、印紙にちゃんと割印が押されているかなども確認します。
調査2日目の16時頃、調査官から「現場」での調査はこれで終わる旨を告げられます。しかし、この時点ではまだ「調査終了」ではありません。ここからは次の三つのパターンに分かれます。
今回の調査で特に修正すべき事項が見つからなかった旨の話があります。この場合は後日、是認通知が会社に届きます。
修正事項について指摘があります。それに対して反論がない場合は、修正を承諾し、後日修正申告と納税を済ませます。
調査官は税務署に戻り、さらに調査が継続します。調査は早くて1週間、長引く時は1カ月以上続くことがあります。後日、顧問税理士に連絡があり、税務署に出向くか、もしくは電話で修正事項について話し合うことになります。
税務署の修正事項について、まずは話を全て聞いてください。その上で、修正事項がいくつあるか、論点を確認します。「修正事項は以上で全てですか?」と確認してから、こちらの見解を述べるようにしましょう。その場で見解を述べる必要はないので、後日税務署へ赴くか、電話で伝える形でもかまいません。
修正事項は複数ある場合がほとんどです。修正事項に対する納税額をそれぞれ計算し、指摘事項を数値化してください。その上で、「これは譲れる」「これは粘る」などのように優先順位をつけて交渉するとよいでしょう。このあたりは税理士の腕の見せ所ですので、顧問税理士とよく相談して決めてください。
前回も述べましたが、税務調査はいつやってくるか分かりません。期中から税務調査を意識し、論点になりそうな取引があった場合は、覚書を作成しておく、証拠書類を保存しておくなど日々の積み重ねをしておくことこそが、最大の税務調査対策となります。
2024年 9月10日
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