2023年 7月11日公開

【連載終了】専門家がアドバイス なるほど!経理・給与

「負担増!だけど知っておきたい雇用保険料率改定の背景」の巻

テキスト/梅原光彦 イラスト/今井ヨージ

  • 経理

令和5年4月1日から雇用保険料率が改定されました。雇用保険料率の変更は前年度に年度途中も含めて二度行われ、本年度で三度目となります。社会保険と比べて低かった印象のある雇用保険料ですが、今回の改定でどうなるのか、概要を解説します。

1. 改定に至る経緯

保険料率引き上げの経過

政府は、雇用保険料の引き上げ等に関する雇用保険法の改正案を閣議決定し、令和4年2月、国会に提出しました。雇用保険料は業種によって異なりますが、一般の事業の場合、労使で負担する保険料率は9/1000(0.9%)でした。それが表1のように、令和4年4月~9月においては9.5/1000(0.95%)に、続く10月~令和5年3月においては、13.5/1000(1.35%)に、と2段階で引き上げられています。

  • ※ 農林水産・清酒の事業は、労働者、会社負担分ともに+1/1000
    建設の事業においては、労働者負担分は、+1/1000、会社負担分は+2/1000

保険料率の内訳

雇用保険には、a. 労働者が退職した際に受給する「失業手当」などの「失業等給付」、b. 育児休業期間中の賃金保障としての「育児休業給付」、c. 雇用調整助成金などの「雇用保険2事業」があり、それぞれの保険料率としての内訳は表2の通りとなっています(一般の事業の場合)。

令和5年3月までの改定

全ての給付が増加しているようですが、新型コロナウイルス感染拡大による経済の影響から「雇用調整助成金の拡充」や「基本手当の給付日数の延長」などの措置を講じたことから、a. とc. の事業に対する負担分として雇用保険料率を引き上げることとなりました。すなわち、令和4年4月から9月まではc. を3.5/1000に、10月以降は、a. を労使ともに3/1000とし、2段階に分けての引き上げが実施されたということになります。

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2. 令和5年4月改定後の保険料率

以上、雇用保険料率は2段階の引き上げを経て、さらに令和5年4月1日から令和6年3月31日までは次の通り改定されました。

  • 失業等給付と育児休業給付に対する保険料率は、労働者負担・事業主負担ともに6/1,000に変更になります(農林水産・清酒製造の事業及び建設の事業は7/1,000に変更になります)。
  • 雇用保険二事業の保険料率は、引き続き3.5/1,000です(建設の事業は4.5/1,000です)。

雇用保険法改正前(令和4年3月以前)は、一般の事業では9/1000だったのに対して今回の改正では15.5/1000となりました(表3)。給与が30万円だった人はこれまで2700円だった雇用保険料が改正後は4650円となるなど、大幅に上がっています。

実務的には、毎年7月に納付する「労働保険料の概算保険料」を新たな保険料率で算出することになります。労働保険料は概算で先に事業主が納めて、翌年度確定精算する仕組みとなっています。本年度は、多くの企業がすでに手続きを終えていると思いますが、保険料率は低いとはいえ金額そのもので見ると事業主の負担がこの2年で随分増していると感じているのではないでしょうか。

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3. まとめ

雇用保険料率は、社会保険と比べると安いというのがこれまでのイメージでしたが、三度の改定でそうもいえなくなってきました。事業者は保険料の改定を受け入れるしかありませんので、せめても雇用保険給付の活用を考えてみるのもよいでしょう。例えば「教育訓練給付」(下記サイトを参照)などはリスキリング(学び直し)が叫ばれる昨今、前向きに活用すべき制度といえるでしょう。

教育訓練給付とは、労働者の主体的な能力開発やキャリア形成を支援し、雇用の安定と就職の促進を図ることを目的とする制度です。厚生労働大臣が指定する教育訓練を修了した際に、受講費用の一部が支給されます。この機会に利用を検討してみてもよいのではないでしょうか。

厚生労働省「教育訓練給付制度」

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