総務部門にも押し寄せる「リスキリング」の波
リスキリングとは、業務において必要なスキルを別途習得することをさします。この言葉には「これからの社会やビジネスシーンで必要とされるような新しいスキルを得る」「今の仕事とは異なる職種・業務で必要なスキルを得る」という意味合いが含まれ、単なる「学び直し」とは一線を画しています。
近年、従業員のリスキリングを促すためにさまざまな施策を講じる企業が増加しました。その施策に対して、業務上関わった総務担当者は多いかもしれません。
しかし実は、総務部門・担当者自身にもリスキリングの波が押し寄せていることをご存じでしょうか。その背景には、以下のような背景があるといえます。
総務が「コストセンター」ではいられない切実な事情
大前提として、グローバルでの社会変化や市場変化はどんどん速く、大きくなっています。その変化はコロナ禍でさらに勢いを増し、ハイブリッドワークなどの新しい働き方や、生成AIなど業務を助ける画期的なツールなど、これまでに一般的ではなかった制度やツール、概念などが普及しました。
一方、日本では、少子高齢化や人口減による労働人口の減少が大きな課題となっています。近い将来である2025年には、約800万人いる「団塊の世代」が後期高齢者になるため、社会保障費の負担増大や後継者不足による中小企業の廃業が進むと懸念されています。また、人口減少により市場規模自体が縮小し、事業拡大はおろか事業を継続すること自体の難易度が上がっているともいえます。
こうした社会変化やビジネス環境の難化に対応するため、企業では業務効率化が命題となりました。もちろん、「コストセンター」と冷やかされることもあった総務などのバックオフィス業務も、その例外ではありません。従来の業務だけを行っていればよい状況から、これからのビジネスシーンに役立つようなスキルを得て、仕事のレベルを一段上げる取り組みが求められるような状況へと移行しつつあります。
「守りの総務」から「攻めの総務」へ
上記のような変化を踏まえ、総務部門には、今の企業を維持する「守りの総務」から、企業戦略を支えていくような「攻めの総務」へ転じる必要性も増しています。すでに総務部門を経営層に近いポジションである「戦略総務」と捉えて、社内改革を任せている企業もあります。
また、総務業務のデジタル化による「総務DX」に取り組み、業務効率化を図ることもこれからの大きな課題だといえるでしょう。
総務担当者が取り組みたい「リスキリング」とは
では、総務担当者はこれから、どのようなことを身につければよいのでしょうか。これからの業務に直結するスキルや価値観、ノウハウを五つ挙げて説明します。
データ分析やRPA、システム全般に関するスキル
今ある総務業務のDXを進めるにあたり、ITリテラシーの向上は不可欠だといえます。よって、社内外のデータを分析するスキルや、事務作業を自動化するRPA(Robotic Process Automation)を活用するスキルなどを中心に学んでいくと、業務効率の向上や、戦略総務など業務自体の拡大に生かせるでしょう。
電子化、ペーパーレス化のスキル
電子帳簿保存法の施行などでわかるように、近年は政府主導での書面の電子化が進んでいます。この動きに対応するためにも、電子化やペーパーレス化のスキルや知識を得ておく必要があります。また、紙で保存する文化からは緩やかに距離を置き、データ上で保存・管理する文化を社内に浸透させて、社内全体の業務効率を上げることも大切です。
ダイバーシティやウェルビーイングなどの価値観
近年は、従業員それぞれの多様性を認める「ダイバーシティ」や、従業員の幸福や健康などを意味する「ウェルビーイング」の価値観を踏まえた施策を講じる企業が増加しています。業務で多くの従業員と関わる総務担当者こそ、こうした新たな価値観を研修によって学ぶことが重要です。その知見をもとに社内で施策を進めたら、従業員の間でも好循環が生み出されるかもしれません。
ファシリティマネジメントのノウハウ
近年の社会変化により、働き方やオフィスの在り方が見直されるようになりました。その際に役立つのが、オフィスやその内部環境を企画・管理・活用する「ファシリティマネジメント」の知識です。働き方や働く場所に関する変革を任される部門は会社によってさまざまですが、総務部門が担うケースも少なくありません。総務担当者がファシリティマネジメントの知識を得ることで、社内改革を主導しやすくなる可能性も高まります。
コミュニケーションスキルやヒューマンスキルのレベルアップ
社内外のさまざまな人と関わる総務担当者。他社との良好な関係を築くコミュニケーションスキルやヒューマンスキルを習得・向上すると、業務レベルの底上げにつながります。自分と関わった人との関係性を良好にするだけでなく、フラットで風通しのよい雰囲気を作り出す起点になれるでしょう。
リスキリングに利用できるサービス
総務担当者は人事部門と連携して、社内全体のリスキリング施策に関わる機会が多いかもしれません。そこで、リスキリングに利用できる制度やサービスを紹介します。社内全体に展開する前に総務部門だけで試験導入し、その結果を踏まえて本格的な実施を検討するのも手段のひとつです。