2025年 5月 8日公開

一歩先への道しるべ ビズボヤージュ

あなたの知らない大塚商会・第1回

企画・編集・文責:日経BP総合研究所

「一歩先」を読むための研究開発
インドの最難関大学からも人材獲得

今回から連載企画「あなたの知らない大塚商会」を始める。この連載は、協業メディア「一歩先への道しるべ」を一緒に運営する大塚商会の知られざる実像に迫るもの。最初の話題は「研究開発体制」。その代表的な存在として、インドから技術者を採用するなどして先端AIの調査・研究開発を担当する「マルチAI研究センター」を取材した。AIに注力する背景や海外の優秀な人材がもたらした影響について、マルチAI研究センター長の地主隆宏氏に話を聞く。(聞き手は、菊池 隆裕=「一歩先への道しるべ」編集長)

――大塚商会がAIに力を入れる背景を教えてください。

地主隆宏氏(以下、地主) 現在、大塚商会の基本戦略である「大戦略II」の柱の1つとして、AI活用を積極的に推進していく方針を定めています。そこで我々マルチAI研究センターのメンバーは経営陣に対してAIの次の流れを整理して伝え、当社が採用していく技術の選別、あるいはどのような方向でAI戦略を進めるかなどの判断材料として役立てています。

上席執行役員の地主 隆宏氏。先端AIの調査・研究開発を担当するマルチAI研究センターのセンター長を務める
(撮影:加藤 康)

判断材料がない中で最新技術だけをインプットしても上手くは進みません。自然言語で文章をまとめてくれたり、AIが業務をサポートしてくれたりすることは表面の世界に過ぎず、技術的な動向の「根っこの部分」まで把握しておかないと振り回されてしまうだけです。

――「根っこの部分」とは、具体的にはどのようなものでしょうか。

地主 例えば2017年、当時Googleに在籍していた8人の社員が公開した「Attention Is All You Need」というAIの有名な論文があります。その翌年には「Improving Language Understanding by Generative Pre-Training」という論文が公開され、この2つが現在の生成AIの源泉となりました。その一方、今後は生成AIの「スケール則(大規模言語モデル=LLMを支える経験則)」が限界を迎え、順序立てて思考する「リーズニング(Reasoning)」へ移行すると見られています。