2024年 6月25日公開

社会保険労務士コラム

勤務間インターバル制度とは? 導入の方法と効果を解説!

著者:有馬 美帆(ありま みほ)

勤務間インターバル制度を理解して、自社の「働き方」と「休み方」を見直してみましょう

勤務間インターバル制度の導入が努力義務化されています。本格的な普及はこれからの制度ですが、制度の概要を理解しておくことは自社の「働き方」と「休み方」を見つめ直すきっかけとなるでしょう。今回は制度の概要や規定例、導入の効果などについてお伝えします。

勤務間インターバル制度とは?

厚生労働省は「勤務間インターバル制度」について、1日の勤務終了後、翌日の出社までの間に、一定時間以上の休息時間(インターバル)を設けることで、働く方の生活時間や睡眠時間を確保する制度と定義づけています。

世界的には勤務間インターバル制度の歴史は古く、ドイツでは1938年に「連続した11時間の休息時間」を取ることが法律で義務づけられています。1993年にはEU(欧州連合)が「労働時間指令」で勤務間インターバルについて定め、現在では24時間につき最低11時間の休息時間を付与することを義務づけています。

勤務間インターバル導入の必要性は、一定の休息時間(以下主に「インターバル」とします)を確保することで、労働者が十分な生活時間や睡眠時間を確保でき、ワークライフバランスと心身の健康を保つことができる点にあります。また、過労死防止のための切り札的存在としても捉えられています。

勤務間インターバル制度導入の努力義務化

日本でも2018年に「働き方改革関連法」によって、労働時間等の設定の改善に関する特別措置法(労働時間設定改善法)が改正され、2019年から勤務間インターバル制度の導入が努力義務化されました(労働時間設定改善法第2条第1項)。努力義務のため、制度を導入しなくても罰則が適用されることはありません。ですが、2021年に政府は「過労死等の防止のための対策に関する大綱」を閣議決定し、2025年までに勤務間インターバル制度を導入している企業の割合を15%以上にするという数値目標を定めて普及に努めています。

このように、政府の関心が高い施策ですので、今後さまざまな形で導入促進策が講じられると思われます。そのため、今すぐ導入とまではいかなくても、制度の概要を知っておくことや、自社への導入可能性をシミュレーションしてみることなどは、人事・労務・総務部門の方々にとって、非常に有益なことと考えます。

勤務間インターバル制度の導入例

勤務間インターバル制度を導入する場合、最低限二つのことを考える必要があります。一つは「インターバルを何時間に設定するか」という問題です。もう一つは、「インターバル後の始業時刻の扱いをどうするか」という問題です。

前者の問題は、各社それぞれの事情を踏まえて決定せざるを得ませんが、厚生労働省ではおおむね9時間から11時間程度のインターバルを推奨しています。ここではEUの基準である11時間をインターバルの例として、後者の始業時刻の扱いの問題について説明を進めて行きます。

休息時間を就業規則に定める場合は、「従業員に対し、1日の勤務終了後、次の勤務開始までに、少なくとも11時間の連続したインターバル(休息時間)を与えるものとする」といような規定の仕方になります。

1. 始業時刻を後ろ倒しにする勤務間インターバル制度

勤務間インターバル制度(始業時刻を繰り下げる場合)