2025年10月28日公開

社会保険労務士コラム

iDeCo(個人型確定拠出年金)の現在と未来

著者:有馬 美帆(ありま みほ)

公的年金に上乗せして老後資金を準備するための私的年金「iDeCo(個人型確定拠出年金)」に対する注目度が上昇しています。iDeCoについて、その基本的な仕組みと税制優遇などのメリットについて解説するとともに、今後の法改正の方向性についてもお伝えします。

老後資金確保の有力な手段としてのiDeCo

いわゆる「老後2,000万円問題」で、老後資金への不安が高まったのは記憶に新しいところですが、そのような流れを受けて老後資金の確保手段についての関心も高まっています。今回は老後資金確保の有力な手段の一つである「iDeCo(イデコ)」について解説します。

iDeCoは2001年(平成13年)に確定拠出年金法が成立したことによって誕生した年金制度です。少子高齢化の進展や高齢期の生活様式の多様化などを背景に、事業主または個人が拠出した資金を、加入者本人が自己の責任において運用の指図を行った上で、老後に運用の結果に基づいた給付をできる制度が創設されました。2001年創設ですので、すでに四半世紀近くの歴史を有する制度なのですが、「老後2,000万円問題」に加えて「貯蓄から投資へ」という変化を受けて、近時は注目度が増しています。iDeCoの加入者は2025年(令和7年)6月時点で、約368万8,000人となっており、加入者数が順調に増え続けています。

iDeCoとは

iDeCoとは「個人型確定拠出年金」の略称(愛称)です。「年金」とあるとおり、大きなカテゴリーとしては年金制度に属します。

年金制度公的年金国が運営する年金制度国民年金・厚生年金保険
私的年金公的年金の上乗せ給付確定給付企業年金制度(DB)・確定拠出年金制度(DC)・厚生年金基金制度・国民年金基金制度

年金制度には大きく分けると公的年金と私的年金があります。公的年金は国が運営する年金制度で、国民年金と厚生年金保険があります。私的年金は公的年金の上乗せ給付を保障する制度で、大別すると確定給付型と確定拠出型に分かれます。確定給付型は加入した期間であらかじめ給付額(受け取れる額)が定められているものです。それに対して確定拠出型は拠出した掛金とその運用収益の合計額が給付額となるもので、制度の加入者が自ら掛金を運用します。

確定拠出型の年金(確定拠出年金)は、英語ではDefined Contribution Planといいますので、「DC」と略されることもあります。確定拠出年金には、さらに企業型と個人型の2種類が存在します。

確定拠出年金制度(DC)企業型確定拠出年金掛金を企業が拠出(マッチング拠出も可能)
個人型確定拠出年金(iDeCo)掛金を加入者個人が拠出

企業型と個人型の違いは、掛金を誰が拠出するかにあります。企業型は文字通り企業が掛金を拠出するのが基本ですが、マッチング拠出(企業が拠出する掛金を超えない範囲で加入者個人が掛金を拠出すること)も認められています。ただし、マッチング拠出をしている場合は、次に説明する個人型(iDeCo)を併用できないことにお気を付けください。