2026年 3月24日公開

社会保険労務士コラム

全企業実施義務化に向けた「ストレスチェック制度」に関する基礎知識

著者:有馬 美帆(ありま みほ)

「ストレスチェック制度」の概要と、企業の対応について、職場のメンタルヘルス対策の基礎的な知識を踏まえて説明します。さらに、法改正により全企業でストレスチェックの実施が義務化されることについても解説します。

「ストレスチェック制度」とは

「ストレスチェック」とは、労働安全衛生法(以下「安衛法」)に基づく「心理的な負担の程度を把握するための検査」のことをいいます(安衛法第66条の10第1項)。そして、「ストレスチェック制度」とは、ストレスチェックおよびその結果に基づく面接指導の実施を内容とした制度等のことをいいます(安衛法第66条の10)。

安衛法にいう「心理的な負担」とは、いわゆる「ストレス」のことです。ストレスチェック制度は、メンタルヘルス(心の健康)確保のための制度です。労働者のストレスの程度を把握し、労働者自身のストレスへの気付きを促すとともに、職場改善につなげ、働きやすい職場づくりを進めることによって、労働者がメンタルヘルス不調となることを未然に防止すること(メンタルヘルス対策)を主な目的としています。

厚生労働省はこのストレスチェックについて、「心理的な負担の程度を把握するための検査及び面接指導の実施方法等を定める指針」(以下「指針」)を定めています。ストレスチェック制度の具体的な実施方法や運営についての詳細なガイドラインです。その中に、「メンタルヘルス不調」の定義があります。長い定義ですが、職場のメンタルヘルス対策の出発点として非常に重要ですので、紹介します。

メンタルヘルス不調精神および行動の障害に分類される精神障害および自殺のみならず、ストレス、強い悩みおよび不安等、労働者の心身の健康、社会生活および生活の質に影響を与える可能性のある精神的および行動上の問題を幅広く含むものをいう。

定義に「幅広く」とあるとおり、とても広範な問題を対象としています。この定義からも、職場のメンタルヘルス対策は、非常に重要でありつつも、同時に困難な問題であることがわかります。それでも、企業には安全配慮義務(労働契約法第5条)があります。労働契約法第5条は同時に健康配慮義務の根拠条文でもあります。加えて安衛法は労働者の安全と健康の確保を求めています(安衛法第3条第1項)ので、こちらも安全配慮義務、健康配慮義務の根拠条文となります。メンタルヘルス不調対策は企業が労働者の安全と健康を確保するために必要な配慮として欠かせないものであり、その中でも重要な役割を担うのがストレスチェック制度なのです。

メンタルヘルス対策の全体像

職場におけるメンタルヘルス対策は、「目的」と「実施主体」の二つの観点から分類することができます。目的によるメンタルヘルス対策は、一次予防(未然防止)、二次予防(早期発見と適切な対応)、三次予防(職場復帰支援)の三本の柱から構成されます。今回のテーマのストレスチェック制度は、前述のようにメンタルヘルス不調の未然防止を目的としていますので、一次予防の役割を担うことになります。

目的によるメンタルヘルス対策の分類
一次予防メンタルヘルス不調の未然防止
二次予防メンタルヘルス不調の早期発見と適切な対応
三次予防職場復帰支援

実施主体によるメンタルヘルス対策は、セルフケア、ラインによるケア、事業場内産業保健スタッフ等によるケア、事業場外資源によるケアの四つに分類されます。

実施主体によるメンタルヘルス対策の分類(四つのケア)
セルフケア労働者自身
ラインによるケア管理監督者
事業場内産業保健スタッフ等によるケア産業医、衛生管理者、保健師等
事業場外資源によるケア事業場外の機関・専門家による取り組み

ストレスチェック制度は、この「四つのケア」全てに関わるものです。メンタルヘルス対策の領域では、この四つのケアには直接登場しませんが「人事労務スタッフ」の存在も重要です。企業の人事労務担当者が、産業保健スタッフと連携を取って、セルフケアやラインによるケアをスムーズに進めることが重要です。

ストレスチェックの歴史と法改正

厚生労働省は労働者のメンタルヘルス不調対策のために、2006年(平成18年)に「労働者の心の健康の保持増進のための指針」(以下「メンタルヘルス指針」)を公表しました。しかし、その後も仕事による強いストレスが原因で精神障害を発病し、労災認定を受ける労働者が増加傾向にありました。そのため、2014年(平成26年)にメンタルヘルス不調の未然防止を目的として、ストレスチェック制度が創設されたのです。