2025年 9月16日公開

有識者に聞く 今日から始める経営改革

改めて見直すべき、シニア人材との向き合い方(後編)

企画・編集:JBpress

シニア人材活躍の可能性を理解し、まずは意識改革を

少子高齢化の進行により労働人口が減少する中、シニア人材の活用が注目されている。これまで若手や中堅社員が中心となってきた業務現場において、シニア社員がいきいきと、そして高いモチベーションを保ちながら働き続けるためには、企業としてどのような環境づくりや制度設計が求められるのか。シニア人材の活用やキャリア再構築に詳しい玉川大学経営学部国際経営学科の大木栄一教授に話を聞いた。

この記事は全2回シリーズの後編です。前編は下記よりご覧ください。

シニア社員のモチベーションアップに効く、風通しの良い職場環境

――前半で伺ったお話を踏まえると、社員自身もシニアになる時を見据えて意識を変え、能力・スキル開発をしていく必要がありそうですね。

大木 意識の部分では、年齢や立場にとらわれず、変化に対応していく姿勢が重要です。例えば、IT関連のスキルは時代とともに機能や操作方法が進化していきます。以前できていたことも、いつの間にかやり方が変わっていたりするものです。

そうした変化に直面した際には、自ら学ぼうとする意識が重要ですし、時にはITに詳しい若手社員に頭を下げて教えてもらう必要もあるかもしれません。私の表現で言うと、鍵となるのは「かわいげのあるシニア」。そういう柔軟さ、素直さを持てるかどうかが、シニアになっても活躍できるかどうかを左右すると思います。

能力やスキル開発の部分では、会社側が社員に対して求めるスキルが明確で、かつそのスキルが不足している社員がいる場合には、教育や研修のような会社によるサポートも必要でしょう。

データは66歳以降のものだが、職業能力の向上を希望する高齢社員は2割弱と少ないのが実態。
出典:独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構「高齢社員の人事管理と就業意欲、66歳以降の就業希望―60~65歳の長期雇用者を対象とした質問紙調査の結果概要―(2023年)」を基にJapan Innovation Review編集部で作成

――シニア世代の意識改革のために、会社側ができる効果的な支援はあるのでしょうか。

大木 まずは職場環境を改めて見直す必要があります。特に重要なのが、社内における「風通しの良さ」です。これはモチベーションの維持に直結する要素であり、年齢に関係なくお互いを尊重し合える関係づくりが求められます。