2026年 2月 3日公開

有識者に聞く 今日から始める経営改革

コミュニケーション不全を解決する「哲学対話」(前編)

企画・編集:JBpress

組織を変える「哲学対話」。課題を根本から見直す「共通言語化」のすすめ

「何度説明しても伝わらない」「会社の理念が浸透しない」――。こうした悩みを持つ経営者やリーダーは少なくない。その理由を「共通言語」の不在にあるとし、その対応策として「哲学対話」を推奨しているのが、東京大学共生のための国際哲学研究センター上廣共生哲学講座特任研究員の堀越耀介氏だ。共通言語の不在がなぜ、組織のコミュニケーション不全を引き起こすのか。なぜ、哲学対話がこの問題を解決するのか。「哲学」と「対話」によって組織力の最大化を支援するコンサルティングも手掛ける堀越氏に話を聞いた。

この記事は全2回シリーズの前編です。後編は下記よりご覧ください。

  • ※ 2月17日公開予定:コミュニケーション不全を解決する「哲学対話」(後編)

コミュニケーション不全を生む「共通言語の欠如」とは

――組織の中では、一見、簡単なコミュニケーションと思われるやりとりでさえ、うまくかみ合わない場合があります。なぜこのようなことが起こるのでしょうか。

堀越 その理由の一つとして、「共通言語が失われていること」が挙げられます。

かつては、多くの人が同じテレビ番組を見て、同じ新聞を読み、地域のコミュニティの中で似た価値観や感覚を共有できているというようなこともあったかもしれません。共有する情報や感覚が多いと、言葉の意味やイメージが自然とそろい、誤解が生じにくいというわけです。

ところが今は、世代や立場、個々の関心事によって接している情報源や世界観が全く違います。見ている世界が違うため、同じ言葉を使っていても、その言葉に込める意味が人によって異なるケースが増えているのです。

例えば、「仕事」という言葉一つとっても、猛烈に働くのが当たり前だった世代と、Z世代とでは受け止め方が大きく異なります。前者にとっての仕事は「人生の中心」かもしれませんが、後者にとっては「自分らしさを生かす手段」であったりします。同じ言葉を使っていても、その背景にある価値観や人生観が違えば、当然ながらコミュニケーションのズレが生じます。

同じ日本語を話しているからこそ、意味の違いに気付きにくい、なんとなく伝わっていると思い込んでしまうという実態があると言ってもいいでしょう。だからこそ組織の中で、自分の言葉が相手にどう伝わっているかを意識的に確かめ合う「共通言語化」が、今の時代のコミュニケーションに欠かせないものとなっているのです。

共通言語化が進んでいる組織では、言葉の意味とイメージが共有されています。ここでいう意味とは、辞書に載っている定義ではありません。その言葉が使われる文脈や場面、つまり肌感覚を含めたものです。言葉の感触や使われ方が一致していなければ、本当の意味での共通言語とは言えません。

――先生は、共通言語化を進めるには「哲学対話」が有効だと言われています。それはなぜでしょうか。

堀越 通常のコミュニケーションでは考え方に違いがあった時に、「人それぞれだから」と双方が妥協するほかない場合も少なくありません。対して、哲学対話は、諦めずに共通の前提を見いだそうとする試みです。

人が集まり、組織を形成して成果を上げるには、「人それぞれ」では済ませられない部分があります。どこまでが違っていてよくて、どこから同じ思いを共有すべきなのかを考え続ける必要があるはずです。

――具体的には、どう対話を進めるのでしょうか。