この記事は全2回シリーズの前編です。後編は下記よりご覧ください。
- ※ 5月26日公開予定:「深化」と「探索」は連続体?「両利きの経営」の今(後編)
不確実性の時代に求められる両利きの経営とは何か
――不確実性が高い時代の経営手法として、両利きの経営が注目されています。どのような考え方なのでしょうか。
塩谷 企業が長期的に成長し続けるためには、事業を着実に伸ばし、売り上げや利益を積み上げていくことが欠かせません。しかし近年は、社会や技術の変化が加速し、既存事業の延長線上だけでは将来を描きにくくなっています。
こうした状況を踏まえた経営手法が、両利きの経営です。先の読めない不確実性の高い時代にビジネスを拡大していくためには、既存事業を深掘りして磨き上げる「深化」と、新たな事業領域を切り開く「探索」を、バランスよく進める必要があるという考え方です。
具体的には、深化は収益性や効率性を高めるために既存事業を深掘りしていく取り組みです。例えば、自社製品の改良や品質向上、既存顧客との関係性強化、コスト削減などがこれに当たります。
一方の探索は、新事業の創出や戦略の刷新を通じて、自社の事業領域を拡大・多様化していく活動です。新規事業の立ち上げやそれに伴う新規顧客の開拓などが代表例といえるでしょう。
――これからの時代は既存事業を深化させるだけではなく、探索に取り組まなければ企業としての成長は難しくなるということでしょうか。
塩谷 探索にすぐ取り組む必要があるかどうかは、企業が置かれている産業構造や競争環境によって異なります。例えば、少数企業が市場シェアの多くを占める寡占市場で、当面は業界構造に大きな変化が起こりそうにない場合、探索の必要性は必ずしも高くないかもしれません。
一方で近年は、バイオテクノロジーやAI、ロボティクスといった新たな技術分野が次々と登場し、従来型のビジネスモデルが新しいモデルに置き換わるケースも増えています。加えて、スタートアップと呼ばれる新興企業も増え、競争環境は確実に変化しつつあります。
その結果、現在は好調であっても、いつ競合が現れ、自社の事業がいつ陳腐化するのかを見通しにくい時代になりました。こうした危機感の高まりが、両利きの経営が注目される背景にあります。
深化と探索は必ずしも対立しない──「スペクトラムで捉える」という考え方
――企業が両利きの経営に取り組む際、深化と探索のバランスや、探索の方向性については、どのように考えればよいのでしょうか。