2026年 8月18日公開

有識者に聞く 今日から始める経営改革

成功法則をまねするより現実的な「失敗学」(後編)

企画・編集:JBpress

まずは「失敗の棚卸し」から。「失敗を資産に変える」組織づくりを

中小企業が失敗から学び、ビジネスを成長させるためにはどのような組織づくりが必要なのか。後編では、過去の失敗を振り返る「失敗の棚卸し」を起点に、あるべき企業文化や人事制度のポイントについてひもといていく。早稲田大学ビジネススクール教授の菅野寛氏に、失敗の構造や経営層が持つべき視点について聞いた。

この記事は全2回シリーズの後編です。前編は下記よりご覧ください。

失敗から学ぶためのスタート地点は「失敗の棚卸し」

――失敗学を経営に取り入れるには、中小企業はどこから始めるのが現実的でしょうか。

菅野 まず取り組むべきは、自社の「失敗の棚卸し」をすることです。過去にどのような失敗があったのか、なぜうまくいかなかったのかを丁寧に掘り起こし、構造的に整理していく。これが出発点になります。

このときに大切なのは、失敗の定義をあいまいにしないことです。「売り上げが落ちた」「赤字になった」といった分かりやすい結果だけが失敗ではありません。例えば、計画では売り上げ20%増を見込んでいたのに、実績は10%増にとどまったケースも、見方によっては失敗です。

さらに、自社の売り上げが2割伸びていても、市場全体が4割伸びていたのであれば、相対的には取りこぼしている可能性があります。つまり、失敗は自社の数字だけで判断するのではなく、市場全体や競合他社との比較の中で捉える必要があります。

失敗を見つけるうえでは、顧客の声に耳を傾けることも欠かせません。仮に売り上げに変化がなくても、顧客が不満を抱えているなら、それは既に失敗の兆候と考えられます。今のところ代替する商品やサービスがないなどの理由で、しかたなく買い続けてくれているだけかもしれないからです。

同じように、社内の声も重要です。社員が不満やストレスを抱えたまま働いている組織は、本来の力を発揮できません。経営の失敗は、業績だけでなく顧客や社員の状態にも表れます。

こうして複数の失敗を丁寧に振り返っていくと、自社特有の傾向が見えてきます。「いつもこの段階で判断を誤る」「このタイプの投資でつまずきやすい」といった、いわば失敗の癖です。その癖が分かれば、次から同じ落とし穴を避けやすくなります。

――失敗から学ぶ組織をつくるための人材教育や意識改革のポイントはありますか。

菅野 まずは「挑戦した人を褒める」「挑戦して失敗した人を責めない」という姿勢を組織として徹底することでしょう。