2017年 1月 1日公開

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「インターネット上の誹謗中傷は削除できる?」の巻

テキスト/梅原光彦 イラスト/今井ヨージ

インターネットの「口コミ」を参考に、お店や商品などを選ぶ人が増えています。インターネットは有効なPR手段ともなりますが、うその口コミを書かれ、風評被害を受けるという例もあります。こうしたインターネット上のトラブルには、どのように対処すればよいのでしょうか。

「インターネット上の誹謗中傷は削除できる?」の巻

インターネット投稿のトラブル対処法

インターネット上で個人情報をさらされたり、うその書き込みをされたりするといった、投稿によるトラブルが起きた場合、まず考えられる解決法はサイト運営会社や検索エンジンに削除を求めることです。

日本では、インターネットでプライバシーや著作権の侵害があったときに、プロバイダなど(インターネット接続会社、サイト運営会社など)が負う損害賠償責任の範囲や、情報発信者の情報の開示を請求する権利を定めた「プロバイダ責任制限法」(注)が2001年に制定されています。

この法律に基づいて「プロバイダ責任制限法名誉棄損・プライバシー関係ガイドライン」が制定され、投稿の削除を求められたときのプロバイダ側の行動基準が定められています(以下は行動基準の一部です)。

  1. 権利侵害情報(名誉棄損(きそん)、プライバシー侵害等に該当する情報)が掲載されていて、被害者側から情報の発信者が分からない場合、プロバイダ等に削除依頼をすることができる
  2. 削除依頼を受けたプロバイダ等は情報発信者に照会し、7日間経過しても発信者から同意が得られなかった場合は、該当する情報の公開を止める、削除するなどの措置を取ることができる

このように権利を侵害する情報がインターネットにアップされたとき、被害者がプロバイダ等に対してその情報の削除を求める手続きが用意されています。

(注)正式名称は「特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律」。

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サイト運営会社に削除を求める

インターネット社会で、情報は常に拡散される可能性があります。自分の権利を侵害する投稿があれば、それを放置しておくことはできません。本来は投稿者自身に削除を求めるべきなのですが、投稿者の特定には時間がかかります。そこでサイト運営会社に削除を依頼することになります。

削除依頼の方法は次のとおりです。

a. サイトに依頼用フォームがある場合

サイト運営会社には削除依頼のためのフォームを用意しているケースが増えています。HPにある「サポート」や「よくある質問(FAQ)」などの中に設けられた「投稿記事の削除依頼、発信者情報開示について」といった項目です。具体的な名称、タイトルはサイトによって異なります。

b. サイトに依頼用フォームがない場合

「プロバイダ責任制限法ガイドライン等検討協議会」(注)のWebサイトに掲載されている以下の手順、専用書式を利用します。

プロバイダ責任制限法 関連情報Webサイト

プロバイダ責任制限法 関連情報Webサイト:名誉毀損・プライバシー関係書式(PDF)

(注)電気通信事業者等が、特定電気通信の情報流通による権利侵害に適切・迅速に対処できるよう、ガイドラインの検討などを行うために2002年2月に設立された協議会。

削除を依頼する際、特に重要なことは次の二つです。

  1. 削除したい投稿が掲載されているページのURLをしっかり特定すること
  2. 投稿によりどのような権利が侵害されたのかを具体的に説明すること

権利とは、名誉権、プライバシー権、肖像権、著作権などです。その投稿によりどういう権利侵害(被害)を受けたかを具体的に説明する必要があります。単にその投稿が「虚偽だ」と訴えるだけでは足りないのです。

例えば、虚偽の情報を書かれたことにより、会社の社会的信用(権利)が侵害され、「良い人材が集まらなくなる」「取引先に取引を打ち切られる」などの損害が生じたというような説明になります(実際には損害の内容をもっと具体的に特定しなければならないこともあります)。

ただ、削除に応じないケースも多くあるので、その場合には弁護士に相談して、削除を求める裁判(仮処分)を起こすなどの法的措置を採ることを検討することになるでしょう。

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検索サイトへの削除請求

削除要求できるのはサイト運営会社だけではありません。グーグルやヤフーなどの検索サービス運営会社も対象となり得ます。

例えば、自分の名前を検索して、表示されたページタイトルやスニペット(ページタイトル下の3行程度のサイト内容説明部分)に身に覚えのない前科などのネガティブな情報が表示されたとします。

この場合、その情報元であるサイトの運営会社に削除依頼するのはもちろんですが、検索サイトに対しても、検索結果画面にそのページタイトルやスニペット部分が表示されないよう裁判で求めることが可能です。

検索サイトを相手取っての削除請求は、以前はなかなか認められませんでした。しかし、近年の裁判では、検索結果の削除を命じる仮処分決定が下されるケースが徐々に出てきています。

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請求手続きについての注意点

削除代行業者などには注意を!

インターネットに不慣れな人にとっては削除請求の手続きは難しく、このため削除を請け負う業者も増えています。中には依頼金を受け取っているにもかかわらず何も手を打たない悪徳削除代行業者の存在も知られています。現実には、弁護士以外の者が顧客の代理で「削除依頼」を行うことは違法(弁護士法違反)です。代理と言わず「代行」とうたう業者もいますが、有償で代理交渉を行うこと自体が違法であることに変わりはありません。

専門家に相談しよう!

弁護士以外の業者に依頼した場合などに、状況を悪化させてしまうこともあります。また、削除請求とは別に発信者(投稿者)を突きとめたい場合もあるかと思います。しかし、発信者情報を突きとめるための手続きは複雑であり、タイムリミットもあるなど、さまざまな注意点がありますので、悪質な投稿・書き込みに気づいたら、早期に専門的知識を有する弁護士に相談することが重要です。

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