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2016年 8月 1日公開
【連載終了】専門家がアドバイス なるほど!経理・給与
【アーカイブ記事】以下の内容は公開日時点のものです。最新の情報とは異なる可能性がありますのでご注意ください。
テキスト: 梅原光彦 イラスト: 今井ヨージ
企業がさまざまな取引を行ううえで契約書は欠かせない存在です。けれども、一般には契約書というと「堅苦しい」と感じて、口約束や受発注書のみで取引を進めるケースも見受けられます。今回は契約書の意義をあらためて考え、そのうえで契約書の書き方、読み方などについての基礎知識を解説します。
目次
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信頼できる相手だから契約書は要らないと考える人も多いようですが、これは誤りです。そもそも契約するのは相手を信頼しているからこそ、なのです。今は信頼している相手でも将来は何が起きるか分かりません。もしも口約束だけだと、担当者が変われば「前任者とどんな口約束をしていたかは知らない」などと言われかねません。そんなときに契約書の存在が重要になってきます。契約書があれば、言った言わないでもめて信頼関係を損なってしまうような事態も回避できるのです。
契約書の効用は次のように攻めと守りの両方あることを知っておきましょう。
相手が契約どおりに動いてくれない場合、契約書があれば、裁判所を通じて強制しやすくなります。
裁判沙汰に巻き込まれれば多額のコストがかかります。契約書を見て勝敗がある程度読めれば、相手も無駄に訴訟を起こすことはありません。契約書には将来の紛争を未然に抑止する効果があるのです。
注意! 契約書・覚書・念書・合意書……法的効力は契約書と同じ
書類のタイトルが「覚書」「念書」「合意書」などであっても法的効力は「契約書」と変わりはありません。取引相手から書類に押印を求められた場合はタイトルに関係なく、慎重に検討する必要があります。
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契約書の基本的な構成は下の図のようになっています。
標題自体には特別の法的効力はありません。
契約当事者、契約の趣旨・目的、契約当事者の名称に甲・乙などの符号を用いることを明らかにします。ただし、前文がなくても契約書の効力は変わりません。
契約書の中心となる部分。できるだけ明確に書く必要があります。
契約書の作成部数・所持者等を記載する部分。契約書の偽造等の防止が期待できます。
契約書作成日と契約成立日・効力発生日が異なる場合には別途明記しておくこと。
契約書上の当事者の表示には、署名(当事者自らによる手書きのサイン)、または記名捺印(他者の手書きやゴム印など+当事者名の捺印)が必要です(注)。
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収入印紙の貼付(ちょうふ)や消印がない場合でも契約書としては有効です。収入印紙を貼らなければならない文書は不動産売買契約書、土地賃貸借契約書、金銭借用証書、請負に関する契約書、領収書など。
参照:国税庁サイト:「印紙税額一覧表(平成27年4月現在)」
契約書を作成するに当たって最も大切なことは、契約内容が明確に記載されているかどうかということです。新聞記事などと同様に契約書でも「5W1H」に気を付け、あいまいさがないようにチェックします。
内容が明確であるというのは、取引の実態を知らない第三者が見ても内容が分かるという意味です。契約書を「守りの武器」として考えるなら、裁判になった場合の証拠となることも念頭において、こちらに不利となる誤読を招かないよう注意しなければなりません。
以下、一般的な売買契約書をチェックするための基本的な項目を紹介します。
どういう状況になると(要件)、誰にどのような権利義務が生じるのか(効果)という二段構造で記述することで内容は明確になります。契約書を読む際も、自分にはどのような権利や義務(効果)があり、それはどのような状況になれば発生するのか(要件)という視点から読むことが大事です。要件をはっきり決めなかったがために、後に要件を満たしたかどうかで意見が対立するケースもよく見掛けます。
車の売買契約を例に挙げると、
売り主は車を納品すれば(要件)、車の代金を払ってもらえる権利を得られる(効果)
買い主は車の納品を受ければ(要件)、車の代金を払う義務を負う(効果)
といった具合です。
中堅・中小企業が大手企業と取引する場合のように、パワーバランスが大きく異なる相手だと、つい腰が引けるものです。相手方に都合の良い条項ばかりが並んでいる契約書であっても、内容についてとやかく言うと、取引してもらえないのではないかと考えて調印してしまう経営者も珍しくありません。
問題となる条項を修正してもらうのが最良ですが、それが難しい場合であっても、契約書をしっかり読んで理解しておきましょう。そうすることでリスクが予想でき、知らずに契約違反を起こす失敗も避けられます。契約書を読んで理解しておくことは自分を守ることなのです。
ウェブ上には多くのサイトで契約書ひな形がアップされています。しかし、契約書は、そもそも個々の取引実情に応じて作成すべきものです。ひな形をそのまま流用すると、重要部分が抜けていたり、思わぬところで相手に有利になっていたりするので注意が必要です。
ビジネス上の契約では、一般的に数十(20~50条程度)の条項が必要となります。ところが、ひな形には数個ほどしか含まれていないものもあります。当然ながら、その数では重要な条項が抜けてしまっていると考えざるを得ません。「契約書を書く・読む」で紹介した内容を参考に、本来検討すべき契約条項がしっかり入っているか確認しましょう。
参考にしたひな形が自分たちの取引実態にかなっているかどうかをチェックしましょう。例えば支払条件について、企業間の商品仕入契約のひな形では「代金後払」とされていることも多いようです。しかし、信用面で若干不安のある買い手企業と取引をする際には、例えば、「全額前払」や「半額前払」に変更するとよいでしょう。
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