2018年 3月

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「決算前に行う消費税課税チェック」の巻

テキスト/梅原光彦 イラスト/ 今井ヨージ

そろそろ決算本番、3月決算を迎える会社も多いことでしょう。メインの法人税などの計算もありますが、同時に消費税申告もしなくてはいけません。中堅・中小企業の場合、法人税などの税金よりも消費税の納付額が多いことが珍しくありません。もちろん消費税は決算が赤字でも納める義務があります。納税に備えて、できるだけ正確な消費税額を把握していきましょう。

課税方法の選択

決算前に確認しておきたいのが「課税方法の選択」と「課税区分」です。まずは消費税の課税方法から説明しましょう。

消費税課税方法の選択

消費税の課税方法には原則課税方式と簡易課税方式の2種類があります。納税義務者は決算前に次期以降の課税方法をどちらにするか検討しておく必要があります。

原則課税方式

一般的には顧客先から預かった消費税等(注1)から仕入先や外注先等に対して支払った消費税等の差額を納税または還付する方法です。計算式は次のようになります。

  • (注1)一般に消費税といいますが、正式名称は「消費税及び地方消費税」となっています。

「課税売上等に係る消費税額」(仮受消費税等)-「課税仕入等に係る消費税額」(仮払消費税等)=「納付税額」

簡易課税方式

前々事業年度の課税売上高が5,000万円以下で、かつ「消費税簡易課税制度選択届出書」を事前に所轄税務署に対して提出している場合には、課税売上高から仕入控除税額の計算を行うことができる簡易課税制度が適用されます。これは仕入控除税額を課税売上高に対する税額の一定割合とするというもの。この一定割合を「みなし仕入率」といいます。

みなし仕入率は、卸売業、小売業、製造業等、サービス業等、不動産業、その他の事業の六つに区分ごとに定められています。

区分業種みなし仕入率
第一種事業卸売業90%
第二種事業小売業80%
第三種事業製造業等70%
第四種事業その他の事業60%
第五種事業サービス業等50%
第六種事業不動産業40%

簡易課税方式が有利となる会社の代表例は下記となります。

  • 外注に出さないで自社の社員を雇い製造している会社
  • 著しく利益率が高い会社
  • 派遣事業など人件費が原価である会社

判定が難しい場合は、専門家や税務署に相談して課税方式をどちらにするか決めましょう。

届出書の提出

どちらの課税方式が有利になるかは、実際に税額が幾らになるかシミュレーションして判断します。簡易課税方式が有利であれば、適用事業年度の前までに「消費税簡易課税選択届出書」を提出する必要があります。逆に今まで簡易課税方式を適用していて原則課税方式に戻したいのであれば、適用事業年度の前までに「消費税簡易課税制度選択不適用届出書」を提出する必要があります。

平成30年3月決算であれば、事業年度(平成29年4月1日から平成30年3月31日)の最終日までに所轄税務署に届出書を提出すれば、次期(平成30年4月1日から平成31年3月31日)から新方式で消費税を計算することができます。

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課税区分の確認

課税区分とは

消費税申告書を作成するためには、一つ一つの取引における消費税の扱いをしっかり区分して帳簿づけしておく必要があります。
課税区分の代表例は「課税売上」「課税仕入」「非課税取引」「対象外取引」です。それらは、会計ソフトの勘定科目に基本設定されていて、仕訳をすると自動的にその課税区分が振り分けられます。決算時にはその振り分けられた課税区分表に基づき消費税申告書が作成されます。

課税区分の確認

ただし、会計ソフトを使っていても課税区分を間違えるケースがよく見られます。会計ソフトの初期設定時に「通信費」や「旅費交通費」がデフォルトで「課税仕入」として認識されているため、取引時に課税区分を変更しないでそのまま「課税仕入」として処理してしまっている例がほとんどです。

特に間違えやすい取引を下記の表にまとめました。忘れずにチェックしましょう。

借方勘定科目

商品仕入高海外からの輸入代金を課税仕入としていないか?
外注費海外での作業に対する支払いについて課税仕入としていないか?
人材費派遣会社に支払った人材派遣費を対象外取引としていないか?
福利厚生費香典・祝金を課税仕入としていないか?
荷造運賃国外運送費を課税仕入としていないか?
広告宣伝費国外展示会、Googleのアドワーズ広告等を課税仕入としていないか?
交際費香典・祝金、国外接待交際費を課税仕入としていないか?
旅費交通費国際航空券、国外旅費交通費を課税仕入としていないか?
通信費国際電話、国際郵便を課税仕入としていないか?
諸会費商工会の通常会費を課税仕入としていないか? またクレジットカード年会費を対象外取引としていないか?
支払手数料国際送金手数料等を課税仕入としていないか?
地代家賃駐車場を除く地代、社宅家賃を課税仕入としていないか?
リース料消費税率が5%時代に契約した取引を消費税率8%で処理していないか?

貸方勘定科目

売上高輸出売上を課税売上にしていないか?
雑収入還付加算金、損害賠償金等を課税売上にしていないか?

特に間違えやすい項目、内容の解説をします。

通信費(国際電話・EMS等の国際郵便)
旅費交通費(国際航空券、国外旅費交通費)

国際電話・EMS(国際スピード郵便)等については、日本と外国の双方で生じたサービスのため、各国の税法上の通例で「双方において消費税を課税しないこと」としています。
また外国で利用した経費については、国外の消費税が課税されていることが多いので、これらの国外消費税については日本では対象外取引となります。

商工会等の団体の会費、クレジットカード等の年会費

商工会等の団体の通常会費で、団体の業務運営に必要な経費に充当されるものについては一般的には対価関係がないので消費税の対象外取引となります。ただし、クレジットカード等の年会費やゴルフ場の年会費等は、役務の提供などとの間に明らかな対価関係があるので課税仕入になります。

社宅

一般的な社宅については、居住用不動産の賃貸のため非課税取引となります。ただ、地方や都内に長期出張する場合、ホテルや旅館を利用しないでウイークリーマンション等の短期賃貸住宅を会社が提供する場合がよくあります。これらの短期住宅(契約期間が1カ月未満等)については、社宅であったとしても消費税法上の非課税取引に該当せず、課税仕入となる場合があります。賃貸契約書等や請求書を見直して消費税が課税されるかどうか確認する必要があります。

補助金、助成金

国や地方公共団体からの補助金や助成金には消費税は課税されません。従って課税売上にも非課税売上にもならない対象外取引として処理されます。国や地方公共団体から収受した金銭だから消費税が課税されないのではなく、対価性がないからです。逆に、名目が補助金、助成金であったとしても、何らかの物品を引き渡したり、サービスを提供した場合には消費税が課税される可能性があります。

損害賠償金

心身または資産に対して加えられた損害の発生に伴って受ける損害賠償金には、消費税は課税されません。ただし、補助金、助成金と同様に名目で判断するのではなく、実体の取引で判断する必要があります。

下記のような事例の場合、消費税が課税される取引となります。

  1. 損害を受けた棚卸資産である製品が加害者に対して引き渡される場合において、その資産がそのまま、または軽微な修理を加えることによって使用することができるときにその資産の所有者が受け取る損害賠償金
    →宅配業者が配達すべき商品を破損した場合に荷主に損害賠償金を支払い、その商品を引き取ったケースなどがこれにあたります。
  2. 特許権や商標権などの無体財産権の侵害を受けた場合に権利者が受け取る損害賠償金
    →損害賠償金を支払ったということは、その特許権等を使用していたと認めたため、ということで、その権利使用料相当額については権利の貸し付けとされます。
  3. 事務所等の明け渡しが遅れた場合に賃貸人が受け取る損害賠償金
    →その事務所等を明け渡していないということはその間、その事務所等を使用していたということで、その家賃相当額については事務所等の貸し付けとされます。

保険金

損害を受けて保険会社に請求した金銭であり、物の引き渡しやサービス提供がないことが明らかなため消費税は課税されません。

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納税資金の確保

消費税は、納税義務者に利益が生じているかどうかに関係なく納税義務が発生します(注2)。従って納税に備えて資金を準備しておかなくてはいけません。いくら納税資金を用意しておくべきかは、月次試算表上で簡単に把握できます。まずは下記の計算式で大まかな消費税の税額を計算しておくとよいでしょう。

  • (注2)例えば売上先が海外である法人であれば逆に還付される場合もあります。

「仮受消費税等」-「仮払消費税等」-「中間納税消費税等」=「納付すべき消費税額」

注意!

  • 「納付すべき消費税額」がマイナスとなった場合には還付となります。
  • 中間納税消費税等が、仮受消費税・仮払消費税の勘定科目に算入されていないことを前提としています。
  • 簡易課税制度を利用している法人は除きます。
  • 課税区分が正しく処理されていることを前提としています。

計算してみて想定以上に納付すべき消費税が発生してしまった場合には、早めに銀行等に相談し納税資金を確保しましょう。また資金がないということは、クライアントに請求して預かった消費税も営業資金また投資資金として流用している可能性があります。毎月、想定される預り金相当額を定期積立等の別口座に預けるなどして、資金繰りをコントロールしましょう。

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