2018年 5月

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「要点解説“減価償却”が分かる!」の巻

テキスト/梅原光彦 イラスト/今井ヨージ

減価償却の知識は会計処理をするうえで欠かせません。けれども実際の処理方法や耐用年数は細かく規定され、資産ごとに耐用年数が異なり、中古品の場合も注意が必要……。ということで、今回は減価償却の基本から具体的な計算方法まで、その要点を解説します。

減価償却の基本

減価償却とは

自動車や機械、建物など長期間にわたって使用する固定資産に対する支出を、決められた期間にわたって経費として処理することをいいます。会社の会計は1年ごとで考えますが、高額かつ複数年で使用する資産を1年で経費に計上してしまうと、会社の経営実態が会計上で見えづらくなってしまいます。そこで一時的な支出を、耐用年数(使える年数)に応じて少しずつ分割して経費として処理していくというのが減価償却の考え方です。

例えば営業車を100万円で購入した場合、購入した月において経費として計上することは基本的にできません(注1)。自動車は数年から数十年単位で使用できることを前提として設計され販売されています。自動車に限らず使用期間が長期にわたる耐久財については会計上および法人税法上、一定の減価償却方法を用いて耐用年数の期間に経費処理をしていくよう定められているのです。

  • (注1)例外として、使用可能期間が1年未満のもの、特例の税制により即時償却ができるものなどがあります。

減価償却の対象

自動車や機械など形のある「有形固定資産」だけでなく、ソフトウェアや特許権、商標権といった「無形固定資産」も減価償却の対象になります。土地や美術品のように時間の経過や使用によって価値が減少するわけではないものは、減価償却資産には含まれません。

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減価償却の方法

減価償却には、主に次のような方法があります。

  1. 定額法
  2. 定率法
  3. 級数法
  4. 生産高比例法
  5. 取替法

ただし、実務上は、ほとんどの会社が定額法と定率法しか採用していないので、ここではその二つを中心に説明します。

定額法

固定資産の減価償却総額を耐用年数で割るというもの
償却費の額が耐用年数期間は毎年同額(均等償却)となる方法

→定額法のメリット
計算が簡単で、減価償却費が毎期一定額になるので損益計算が安定すること

定率法

固定資産の未償却残高に毎期一定の率をかけて減価償却額を計算するもの
償却費の額を、当初は多く、年と共に減少して計上する方法

→定率法のメリット
早期に固定資産への投下資金を費用計上できること

会計上、どちらの償却法を選ぶかは会社の判断で決めることができるので、実務においては、資産の種類・性質に応じて、定額法と定率法を使い分けるのが一般的です。全ての減価償却資産を定率法で処理することも可能ですが、例外もあります。無形固定資産は定額法でのみ償却可能となります。

注意!

定率法は当初に償却額が多く計上されるため、過度な節税に使われてきた経緯があります。このため税制が改正され、2016年4月以降に取得した建物・建物附属設備・構築物については法人税を計算するうえでは定額法のみで計上することとなりました。仮に会計上、定率法で計上したとしても法人税については定額法で計算し直し、税額を算出することになります。

資産の区分選定をすることができる償却の方法
建物、建物附属設備、構築物定額法
機械および装置、船舶、航空機、車両および運搬具、工具ならびに器具および備品定額法または定率法
無形固定資産および生物定額法
リース資産リース期間定額法
  • * 鉱業用減価償却資産等について資産区分から除外しました。

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定額法と定率法の違い

代表的な減価償却の計算方法である定額法と定率法の大まかな違いは、計算の簡単さと、費用として計上できる早さにあるといえるでしょう。ここでは営業車を例にとって、定額法と定率法、それぞれの特徴をさらに詳しく見ていきましょう。

前提条件は次の2点です。

  1. (100万円の)新車の普通乗用車として耐用年数を6年と設定する
  2. 期首に購入し、購入と同時に事業に使用する
償却方法定額法定率法定額法と定率法の差
耐用年数6年6年-
償却率0.1670.333-
1年目償却額167,000333,000166,000
2年目償却額167,000222,11155,111
3年目償却額167,000148,148-18,852
4年目償却額167,00099,111-67,889
5年目償却額167,00099,111-67,889
6年目償却額164,99998,518-66,481
累計償却額999,999999,9990
  • * 定率法の4年目以降は償却保証額を基礎として計算しています。

1年目と2年目については、定率法の方が多く償却していますが、3年目以降は定額法が多く償却処理されます。ただし、耐用年数期間のトータルでの累計償却額は同額となります。また1年目から5年目の定額法の累計償却額は835,000円となり、同期間の定率法の累計償却額は901,481円です。つまり早めに償却したいのであれば定率法が有利だということは、この表からも分かります。

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耐用年数(新品の場合)

固定資産に対する支出を、耐用年数に応じて少しずつ分割して経費として処理していくというのが減価償却の基本です。減価償却を行う上で重要な指標となる耐用年数について具体的に解説します。

耐用年数とは

耐用年数とは固定資産の使用可能年数のこと。耐用年数は、減価償却資産が利用されると仮定された年数を見積もったうえで決定します。耐用年数を見積もるためには、企業の経済環境、固定資産の利用方法、稼働の見込み状況を把握しなければなりません。中堅・中小企業の場合、その見積りが困難なため、実務では、資産ごとの耐用年数を詳細に定めた財務省の「減価償却資産の耐用年数等に関する省令」に従っています。国税庁の「耐用年数表」では資産の種類に応じて、次のように耐用年数、すなわち償却期間が定められています。

ここでは自動車(車両および運搬具)の法定耐用年数を紹介しましょう。

自動車(二輪または三輪自動車を除く)耐用年数
小型車(総排気量が0.66リットル以下のもの)4
貨物自動車のうちダンプ式のもの4
貨物自動車のうちダンプ式以外のもの5
報道通信用のもの5
その他のもの6

「耐用年数表」の一例

  • 建物  10~50年程度
  • 車両  5年前後
  • 工具  2~8年程度
  • 机   8~15年程度
  • 椅子  5年程度
  • 看板  3年程度
  • 機械  3~15年程度

営業車の場合、「その他のもの」という区分となり、耐用年数は6年とするのが一般的です。

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耐用年数(中古品の場合)

中古品(中古車)の場合は?

前項の表は新車を前提としています。中古車の場合、使用できる期間は当然新車より短くなります。このため中古車のような中古資産を取得して事業に使用する場合、その耐用年数は、「法定耐用年数」ではなく、その事業に使用してから後の「使用可能期間」として見積もった年数とすることもできます。

ただし、使用可能期間の見積りが難しいときは、次の簡便法で算定した年数を耐用年数とすることができます。なお、年数に1年未満の端数があるときは、その端数を切り捨て、その年数が2年に満たない場合には2年とします。

法定耐用年数の全部を経過した資産

その法定耐用年数の20%に相当する年数

法定耐用年数の一部を経過した資産

その法定耐用年数から経過した年数を差し引いた年数に経過年数の20%に相当する年数を加えた年数

中古で購入した営業車の耐用年数は、経過期間(1~6年の場合)に応じて次のような計算式で求められます。

1年の場合(6年-1年)+1年×20%=5.2年→5年
2年の場合(6年-2年)+2年×20%=4.4年→4年
3年の場合(6年-3年)+3年×20%=3.6年→3年
4年の場合(6年-4年)+4年×20%=2.8年→2年
5年の場合(6年-5年)+5年×20%=2年
6年の場合6年×20%=1.2年→2年

では、以下の条件で、定額法と定率法の差がどうなるのか、具体例で見ていきましょう。

  1. 経過期間が4年(耐用年数2年)の普通乗用車(購入価格は50万円)とする
  2. 期首に購入し、購入と同時に事業に使用する
償却方法定額法定率法定額法と定率法の差
中古資産の耐用年数2年2年-
償却率0.51.00-
1年目償却額500,000999,999499,999
2年目償却額499,9990-499,999
累計償却額999,999999,9990

中古資産の耐用年数が短いため定率法については1年目で償却済みとなってしまいます。定額法については、予定どおり2年目で全て償却完了となります。

以上、定額法と定率法の違いも含めて減価償却を理解しておくと、経営にプラスとなる会計処理につながります。資産の購入にあたっては会社の状況や見通しに合わせた減価償却の方法をあわせて考えるとよいでしょう。ここでは車両の減価償却を中心に解説しましたが、建物や設備などさまざまな固定資産に耐用年数が定められています。計算方法に注意して、税法に即した適正な処理を心掛けてください。

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