2018年 8月

専門家がアドバイス なるほど!経理・給与

「配当を出すとき&受けるときの手続き」の巻

テキスト/梅原光彦 イラスト/今井ヨージ

所有株式によって受け取る配当金は会計上、もしくは税務上、どのように処理すればよいのでしょうか。今回は配当を行うとき、そして配当を受けるときの手続きなど配当金にまつわる基本的な知識を解説します。

配当の基礎知識

営業外収益として計上される受取配当金には、株式会社などから利益分配として受け取る配当金と、中小企業協同組合などの剰余金の分配として受け取る配当金などがあります。ここでは配当金の中でも一般的な前者の場合について説明します。

配当金とは

株式会社が獲得した利益を株主に還元する行為を配当といいます。そして株主に配当される利益(お金)が配当金です。

配当ができる法人とは

債務超過会社や欠損会社(注1)は配当するための原資(資金)がないため、そもそも配当ができません。原則、これまで積み立ててきた内部留保に剰余金がある法人だけが配当をすることができます。

  • (注1)会社の純資産額(資本総額-負債総額)が、資本金と準備金との合計額を下回っている状態の会社

配当できる額は

会社が配当できる額については会社法で具体的に定められています。配当するということは会社の純資産の現預金が減るということなので、事業への影響も考えなくてはなりません。公認会計士や税理士と相談して、配当可能限度額を計算したうえで、限度額の範囲で適正な配当をしていくことになります。

一般的な配当可能限度額は下記の計算式となります。

「その他資本剰余金」の額+「その他利益剰余金」の額

「その他資本剰余金」とは資本剰余金のうち「資本準備金」以外の部分、「その他利益剰余金」とは全ての利益剰余金の中から会社法によって積み立てを義務付けられている「利益準備金」を除いた部分をいいます。

資本剰余金:株主からの出資などの資本取引から得た剰余金+資本準備金
資本準備金:株主からの出資のうち、資本金に組み入れなかった部分

配当しないケースも

非上場の株式会社の場合、株主に配当をしないケースが多いといえます。非上場会社では、経営者と株主がイコールの場合が多く、そうしたオーナー株主にとっては税法上のメリットが少ないため、結果として配当をしないで資金を内部留保するケースが多いということになります。

目次へ戻る

配当を行う、その手続き

ここでは中堅・中小企業に多い非上場会社が配当をする場合の手続きについて説明します。

配当の意思決定プロセス

非上場会社が配当をする場合には、定款の規定に基づき株主総会・取締役会等の決議を得て、配当額を決定します。

源泉税の徴収

配当金は所得税の対象となるので、会社は配当額から一律20.42%の源泉徴収税額(所得税+復興特別所得税)を徴収しなければなりません。そのうえで残りの額を株主に支払うと共に、配当金支払明細書・支払調書を発行(郵送)します。これによって株主は源泉徴収額が把握でき、自身の申告に利用できます。

源泉徴収税額の納付

会社は20.42%の源泉徴収税額を、配当金を支払った、もしくは送金した月の翌月10日までに、最寄りの金融機関または所轄税務署に納税しなければなりません。また、配当金が未払いの場合は、支払いが確定した日から1年を経過した日の属する月の翌月10日までに納税する決まりとなっています。

領収済通知書

支払調書合計表と支払調書の作成

配当金についての支払調書合計表を税務署提出用と会社控用に、支払調書(注2)を税務署提出用と支払いを受ける者用に、それぞれ作成します。

  • (注2)正式には「配当、剰余金の分配、金銭の分配及び基金利息の支払調書合計表(同支払調書)」

支払調書合計表

支払調書

支払調書合計表と支払調書の提出

原則、支払調書合計表と支払調書を、支払確定日または支払った日から1カ月以内に所轄税務署に提出しなければいけません。税務署はその情報に基づき、配当金の受取人を把握し、課税漏れを防止します。

目次へ戻る

配当を受ける、その手続き

配当金の処理

会社が株主として他の会社から配当を受ける場合、もしくは親会社として非上場の子会社から配当を受ける場合、会計上は営業外収益として収入計上しますが、税務上は別表調整(注3)をすることで、全部または一部が益金不算入(非課税)となります。以下、国内配当金と国外配当金に分けて説明します。

  • (注3)「別表」と呼ばれる課税所得を導く過程を記載する書類上で、加算や減算の調整を行うこと

A. 国内配当金の取り扱い

区分持株比率株式保有要件益金不算入(非課税)
完全子法人株式等株式等保有割合が100%の場合配当の計算期間における全期間を通じて保有していること受取配当等の全額
関連法人株式等株式等保有割合が33.3%超100%未満の場合配当の基準日以前6カ月以上保有していること受取配当等の額-負債利子控除
その他株式等株式等保有割合が5%超33.3%以下の場合配当の基準日時点に保有していること受取配当等の額×50%
非支配目的株式等株式等保有割合が5%以下の場合配当の基準日時点に保有していること受取配当等の額×20%

会計上の処理

例えば配当金が10,000円の場合、源泉徴収税額を差し引かれた額で振り込まれます。

借方貸方
現預金7,958円受取配当金10,000円
仮払税金(または法人税等)2,042円

税務上の処理

配当金については、上記の区分により益金不算入(非課税)の額が決まってきます。例えば継続保有している完全子法人株式等に係る配当金を受け取る親会社は、別表調整をすることで配当部分に法人税等の税金が生じることはありません。また源泉徴収税額については、その親会社が法人税等の税金が生じる会社であれば、その法人税等に充当され、税金が生じない法人であれば税務署に申告することで還付されます。

B. 国外配当金の取り扱い

会計上の処理

例えば配当金が100ドル(1ドル=100円)であった場合には、外国税額を差し引かれた額(注4)で振り込まれます。

  • (注4) 国により外国税額が差し引かれない場合があります。

ここでは仮に外国税額は20%としておきます。

借方貸方
現預金6,500円受取配当金10,000円
租税公課(または法人税等)2,000円
被仕向送金手数料(注5)1,500円
  • (注5) 被仕向送金手数料は日本の銀行で生じる手数料。

税務上の処理

国外配当金の税法上の処理については、外国税額控除制度と外国子会社配当益金不算入制度の二つの制度があります。選択制なのでどちらか有利な方法を選択しましょう。ただし、例外規定が多い制度なので、公認会計士や税理士に相談されることをお勧めします。

外国税額控除制度とは

日本国と租税条約を締結している国から支払いを受けた配当金にかかる外国税額を日本の税金から控除できる制度です。

外国子会社配当益金不算入制度とは

日本の親会社が発行済株式等の25%以上の株式等を保有し、かつ、その保有期間が配当の支払い義務が確定する日以前6カ月以上継続されている場合には、その配当金の95%が益金不算入(非課税)となる制度です。ただ、オーストラリア等の一部の国の配当金については対象外となるケースもあります。

目次へ戻る