2021年 8月10日公開

【連載終了】専門家がアドバイス なるほど!経理・給与

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「同一労働同一賃金の中小企業適用が始まった!」の巻

テキスト/梅原光彦 イラスト/今井ヨージ

  • 経理

2021年4月から中小企業にも「同一労働同一賃金」の適用が開始されました。正社員とパート・アルバイトとの不合理な待遇差は中小企業でも許されません。今回は特に中小企業が守るべきガイドラインや留意すべきポイントを解説します。

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「同一労働同一賃金」チェックリスト

対象は短時間労働者と有期雇用労働者

大企業への適用から1年間の猶予期間を経て、2021年4月から中小企業にも「同一労働同一賃金」が適用されています。働き方改革関連法の一つとして、パートタイム・有期雇用労働法が改正されたことで、正社員と非正規労働者との間の「不合理な待遇差」が禁止されるようになったのです。

ここでいう「正社員」は無期雇用のフルタイム社員のこと。一方、「非正規労働者」は契約期間の定めのある有期雇用労働者(契約社員、嘱託社員など)と、正社員より短い時間で働いている短時間労働者(パート・アルバイトなど)のことです。派遣社員に対しては既に2020年4月から適用済みで、2021年4月からは中小企業における短時間労働者(注1)・有期雇用労働者(注2)が対象となりました。

  • (注1)短時間労働者:通常の労働者より1週間の所定労働時間が短い労働者
  • (注2)有期雇用労働者:期間の定めのある労働契約を締結している労働者

まずは待遇差チェック

自社の正社員と非正規労働者との間に「不合理な待遇差」がないか、以下のチェックリストで現状を確認してみましょう。

上のチェックリストに一つでも「いいえ」があったら制度の見直しが必要となります。

では次から厚生労働省から公表されている「同一労働同一賃金ガイドライン」の内容を中心にポイントを一つずつ見ていきましょう。

なお、「同一労働同一賃金」の概要についてはバックナンバーを参照ください。

「同一労働同一賃金について」の巻

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守るべきポイント「事前に明示する」

非正規労働者を採用する際には労働条件を明確に伝えていますか? 口約束のみでも「労働契約」は成立しますが、労働条件があいまいなままではトラブルの原因となることもあります。

ポイント1 労働条件の提示

パートやアルバイトにも労働条件通知書や雇用契約書を渡す

パート・アルバイトにも契約期間や職務内容など労働条件をはっきりと提示することが大切です。口頭説明のみだとトラブルを招く恐れがあるので、労働条件通知書や雇用契約書を渡しているかどうかがポイントとなります。

以下の項目については、書面の交付(労働者が希望した場合は電子メールや FAXでも可)などにより明示することが義務付けられています。
「契約期間」
「有期労働契約を更新する場合の基準」
「仕事をする場所と仕事の内容」
「始業・終業の時刻や所定時間外労働の有無、休憩・休日・休暇」
「賃金」
「退職に関する事項」

注意!

パートタイム労働者を雇い入れたときは「昇給の有無」「退職手当の有無」「賞与の有無」「パートタイム労働者の雇用管理の改善等に関する事項に係る相談窓口」も文書の交付等により明示しなければなりません。違反の場合は10万円以下の過料が科されます。

ポイント2 配置転換のルール

配置転換の対象者やルールをきちんと定め、全ての対象者に明示する

職務内容の変更、配置の変更について、また、どの労働者が配置転換の対象になるのか、あらかじめ就業規則等に記載しておきましょう。中小企業では、非正規労働者を対象とする就業規則や給与規定が整っていないケースも見受けられます。パート・アルバイトを含む全ての労働者に周知しておくことが大切です。

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守るべきポイント「不合理な待遇差をなくす」

正社員の待遇を書き出してみて、それを短時間・有期雇用労働者に対しても同じ水準で適用しているか確認しましょう。違いがある場合には、その差が不合理ではない根拠を明確に説明しなければなりません。説明は「文書を提示しながら口頭で説明」することが望ましいとされています。

同一労働同一賃金において、「不合理な待遇差」が生じているかどうかは、主に「給与・各種手当」「休暇」「福利厚生」「教育訓練」の4点で確認します。

ポイント3 正社員と同様の手当

短時間・有期雇用労働者にも、正社員と同様の手当を支給している

賃金・手当等についての基本的な考え方は以下のとおりです。

基本給・昇給・賞与

基本給については、短時間・有期雇用労働者への支給内容が、同様の仕事をしている正社員等と比べて、不合理に低くなっていないか確認する必要があります。昇給・賞与についても、正社員と非正規労働者を比較して同一であれば同一の支給を行い、一定の違いがある場合には、その違いに応じた処遇をしなければなりません。

役職手当

正社員と同一の役職に就く非正規労働者には同一の支給をしなければなりません。また、役職の内容に一定の違いがある場合には、その相違に応じた支給をしなければなりません。

時間外手当等の割増手当

正社員と同一の時間外、休日、深夜労働を行った非正規労働者には、同一の割増率等で支給をしなければなりません。

通勤手当および出張手当

通勤手当および出張手当については、雇用形態にかかわらず同様に費用はかかるので、もしも差があるなら「不合理な待遇差」といえます。非正規労働者に対しても正社員と同一の支給をしなければなりません。

なお、厚生労働省のガイドライン(注3)には、待遇差が「問題となる例」「問題とならない例」が例示されています。

  • (注3)

厚生労働省「短時間・有期雇用労働者及び派遣労働者に対する不合理な待遇の禁止等に関する指針」全文ガイドライン(厚生労働省のサイトが開きます)

ポイント4 慶弔休暇・病気休職等の補償

短時間・有期雇用労働者にも、正社員と同様の特別休暇を付与する

非正規労働者にも、正社員と同一の慶弔休暇の付与ならびに健康診断に伴う勤務免除および給与の補償を行わなければなりません。

ポイント5 福利厚生施設の利用

更衣室や休憩所、食堂は、雇用区分に関係なく全ての労働者が利用できる

更衣室・休憩室・給食施設などの「福利厚生施設」については、正社員と同じように非正規労働者も利用できるようにしなければなりません。

ポイント6 教育訓練

短時間・有期雇用労働者にも、正社員と同様の教育訓練を実施する

正社員と同一の職務内容である場合は、職務遂行に必要な知識や技能を得てもらうため、非正規労働者にも同一に教育訓練を実施しなければなりません。

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まとめ

パート社員をもっと頼もしい「戦力」に

厚生労働省の調査によると、企業がパート社員を雇用する理由は「1日の忙しい時間帯に対処するため」(41.6% ) が最も高くなっているものの、次いで「人件費が割安なため(労務コストの効率化) 」(41.3%)となっています。この点から分かるとおり、これまでは安い労働力として「短時間・有期雇用労働者」を利用してきたのが事業者の実態です。

しかし、中小企業へも「同一労働同一賃金」の適用が開始された今、パート社員は正当な対価を払って活用すべき人材として考えなければなりません。事業者はそのことを「新たな負担」と捉えるのではなく、「パート社員の戦力化」と考えてみてはいかがでしょうか。パート社員にも、勤続年数や能力に応じて昇給する給与制度を導入したらモチベーションが高まったという例もあります。

出典:厚生労働省「平成 28 年パートタイム労働者総合実態調査の概況」(厚生労働省のサイトが開きます)

長く、気持ちよく働いてもらうために

コロナ禍において、不安定な立場である「短時間・有期雇用労働者」の中には、雇止めや休業手当の未払いなど大変な思いをした方も多いはずです。こうした人々を再び雇用し、活躍してもらうため、そして優秀な非正規社員に長く、気持ちよく働いてもらうためにも、処遇の改善――「安定的な地位と働きに見合った賃金」を前提に、制度の見直しを考えていきましょう。

なお、同一労働同一賃金のルールに違反した場合、現行では法的な罰則はありませんが、事業主に対して勧告や指導が行われる可能性があります。また、その後も改善が見られない場合は、企業名公表の対象となります。

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