2023年10月10日公開

一歩先への道しるべ ビズボヤージュ

IT駆使して「森林の経営計画」を策定

執筆:長坂 邦宏(フリーランス) 企画・編集・文責 日経BP総合研究所

次に目指す「カーボンクレジット」推進

背中に担いだレーザー計測装置が森林内の全立木情報を丸裸にする――。林業従事者が減少し、伐採時期を迎えるも放置されたままの日本の森林を、ITを駆使して甦らす。様々なシステムを開発・活用することでスマート林業の実現を進めてきたwoodinfo(ウッドインフォ、東京・杉並)は、創業から10年を経て、新たなステージに立った。これまで開発した技術を利用し、森林の二酸化炭素(CO2)吸収量を正確に算出。信頼性の高いカーボンクレジットを通じて地域振興を目指そうとしている。

ウッドインフォ

* 本記事は「一歩先への道しるべ(https://project.nikkeibp.co.jp/onestep/)」の記事を再掲載しています。所属と肩書は取材当時のものであり、現在とは異なる場合がございます。

建築現場のサプライチェーンの効率化を研究

急な傾斜地もあれば凸凹の土地もあり、そこに樹木が生い茂る。そんな森林の中を、重さ3.2kgのレーザー計測装置「3DWalker」を背負い、ゆっくりと歩く。10~20分も歩けば、1haほどの面積にある全立木の計測データが得られる。

「3DWalker」(斜めに突き出た黒い部分)を背負い森林内をレーザー計測する常務の飯田富和子氏(出所:ウッドインフォ)

このデータを森林3D(3次元)地図作成ソフト「Digital Forest」で処理すると、立木の位置、胸高直径、樹高、材積(体積)、曲りなどが一覧表と位置図に表示され、しかもすべての立木が3D表示できる。

森林3D地図作成ソフト「Digital Forest」では、全立木の情報、単木の3D表示、配置図が得られる(出所:ウッドインフォ)

3DWalkerを背負子(しょいこ)に載せた“バックパックスタイル”で、女性でも森林内部の計測ができるのが特徴だ。しかも速く、正確に計測データが得られる。この3DWalkerとDigital Forestがウッドインフォの事業の核となっている。

代表取締役の中村裕幸氏はこう話す。

「これまでもレーザースキャナーによる森林の3Dデータを取得する方法はある。しかし、歩きながらバックパックスタイルで3D計測できるのが当社の売り。ポイントはデータを取得するためのレーザースキャナーではなく、大規模な点群データを分析するソフトウエアにある」

ウッドインフォ代表取締役の中村裕幸氏
清水建設技術研究所の出身。「研究とかプロジェクトマネジャーをやりたかったのに役職に就けられて面白くなかった」ため、会社を辞めて起業した(撮影、長坂邦宏)

ソフトウエアは自社開発だ。2011年設立のウッドインフォには中村氏のほかに、役員が2人いる。専務の石井彰氏がシステム開発を担当し、常務の飯田富和子氏が森林計測や森林解析を担当する。

中村氏はもともと清水建設の技術研究所で高層ビルの防災や耐火設計の研究をしていた。執筆した論文が1983年、保険会社の世界的な組織であるジュネーブ協会の火災賞を受賞し、それが縁で85年から2年間、英国環境省建設研究機構火災研究所に留学する。

清水建設に復帰してからしばらく後に、新しいテーマを求めて、技術研究所で建設現場のサプライチェーンについて研究を始めた。当時、建築現場にはサプライチェーンを効率化するという考え方はまだなく、案件が小規模になっても利潤を確実に上げるためのサプライチェーンを効率化する生産体制を研究した。

2003年、技術研究所の統括部長に就いたものの、「論文を読んではハンコを押して1日の大半が終わってしまう。これでは面白くない」と思い、会社を辞める。

そして11年7月に設立したのがウッドインフォだ。最初に掲げた目標は「森林経営の要素(森林調査および流通活性化)システムの開発だった。具体的には、「森林の情報をレーザー計測してデータ化(見える化)するシステム」、「森林資源の伐採から消費までのトレーサビリティを確立するシステム」、そして「オンラインで木材を売買できるシステム」を作り上げることにあった。

「ITを活用して資源量を把握し、それに基づいて持続可能な森林の経営計画を策定する。木材流通の無駄も省いていけば、収益性を上げることができる」と中村氏は考えた。

林業をスマート化するため、システムを相次いで開発

日本国土の7割は森林で、森林所有者が全国で324万人いる。しかし、林業従事者は約4万5000人(2015年)まで減少し、人工林の年間成長量の約4割しか切り出されていない。