AIと人間が共存する近未来を展望する
2024年2月中旬に行われた「大塚商会 実践ソリューションフェア2024」では、「AIで進化するロボット/アバター」をテーマとしたパネルセッションが開催された。パネリストは、大阪大学大学院基礎工学研究科システム創成専攻栄誉教授の石黒 浩 氏、Bocek代表取締役CEOの沖村 昂志氏、大塚商会トータルソリューショングループ執行役員新規事業推進担当の渡邊 賢司氏。研究者兼社長、学生起業家、ビジネスマンそれぞれの立場から、AIで進化するロボットとアバター、そしてロボットやアバターと人間が共存する近未来を展望した。
今回のパネルセッションでは、まずそれぞれがロボットやアバターに関する取り組みを報告した。石黒氏は2000年ころから本格化したというロボットの研究開発や、自身が代表を務めるアバターの社会実装を目的とした新会社AVITAを紹介。生成AIを活用することによって、石黒氏の外見の人間型ロボットが多言語を操ってしゃべることができることを紹介。一部では既に人間の能力を超えていると解説した。
生成AIについては「ロボットやアバター開発における大きな問題は、人と話をするという機能だった。それが(生成AIのベースとなる)大規模言語モデル(LLM)が登場し、人間らしくしゃべるようになった。これからは我々が本当にやりたかった、もっと深い、人間にとってもっと大事な研究課題に向き合えるようになった」と語り、ロボット/アバターの開発者からみても生成AIのインパクトが非常に大きいと語った。
沖村氏が創業し代表を務めるBocekは生成AIに関するコンサルティングや実装支援を行っている。生成AIの専門家という立場から、国内外のITベンダーが開発に取り組み始めたことや、ユーザー企業による導入が肌感覚でかなり進んできたことを紹介した。いくつかの活用事例を紹介しながら、生成AI自体が進化したのではなく、応用範囲が広がっているのだと解説した。
沖村氏は、ロボットが生成AIを取り組むようになると「ロボットが自律的にタスクを行い、エージェント機能を持つようになる」という。具体的には、ロボットに普通に話しかけるとその意図をくみ取って即座にプログラムを作成、それに応じてロボットが動くことができるようになるというのだ。沖村氏は生成AI機能と連動したドローンに話しかけて操縦するというビデオを投影し、こうしたエージェント機能が実装段階にあることを紹介した。
続いて渡邊氏は、大塚商会として多くの社会課題の解決に取り組むなかで、課題の1つとして人手不足に注目、その解決策としてロボットやアバター、生成AIといった技術に注目しているとした。特に2024年は一部の業種で時間外労働の制約が大きくなる「2024年問題」に注目が集まっており、限られた時間の中で作業を進めるうえで潜在的な労働力を掘り起こす必要があり、その潜在的な労働力の1つとしてロボットやアバターを位置付け、人との役割分担を考えているとした。同社が支援する病院などでの導入実績などを紹介、今後は災害現場などほかの用途でも利用が広がりそうだと述べた。