人の深い理解を目指したUNI-ONEの開発思想
20世紀最後の年となった2000年、本田技研工業(ホンダ)は、二足歩行可能な人型(ヒューマノイド)ロボット「ASIMO(アシモ)」を発表した。それまでアニメやSF映画の中だけで見られたロボットが現実世界で歩く姿を目の当たりにして、人がロボットと共に生きる21世紀が到来することを多くの人が実感した。
「ホンダの人型ロボット開発には明確な方針がありました。人が使い、人が接して、心地良く便利に感じるモビリティを作り出すため、人について突き詰めて知ることです。長年蓄積してきた機械と制御の技術を生かして人と共存するロボット開発を進める過程で、人の体の構造とその動き、さらには行動やモノと接する中での心の在りようなどを深く理解できるのではと考えたのです」と当時、研究者の1人としてASIMOの開発に携わっていた小橋氏は言う。

本田技術研究所 先進技術研究所 フロンティアロボティクス領域 チーフエンジニア 小橋 慎一郎氏
いまでこそ、工場の生産ラインなど様々な場所で、人が行っていた作業を自動化する機械として多様な産業ロボットが使われている。だがホンダが、人の姿と動きを模したASIMOの開発で目指したのは、そうした無人環境で作業を自動化するロボットではなく、人に寄り添い人を支援するロボットである。こうした人の在り方と、人との関わりを重視したASIMOの開発思想は、人同士の結びつきを強くするための支援を目的とするUNI-ONEにも色濃く受け継がれている。
体の重心移動だけで自在な移動が可能に
ホンダが開発するUNI-ONEは、座って重心を移動させるだけで、歩いているかのように全方位移動が可能な、新たなカテゴリーのモビリティである。見た目は“動く椅子”といった趣きである。UNI-ONEを見た人の中には、「要するに、新型の電動車椅子のことか」と感じる人がいるかもしれない。

ホンダが開発を進めるハンズフリーパーソナルモビリティ「UNI-ONE(ユニワン)」